日本国内の商売と海外ビジネスではルールや商習慣が違うことが多いため、注意が必要です。

ここでは、よく見られる勘違いを紹介いたします。

これから海外ビジネスに取り組もうという中小企業さんから、「輸出相手先への見積りには日本の消費税を含めるのですね?」という相談を受けることがあります。

「いいえ、輸出では消費税は免除されます」というのが答えです(仕入れ品に消費税が課税されていますが、必要書類を揃えたうえで確定申告の際に仕入れ税額の控除をすることができます)。

輸出時の請求書(Invoice:インボイス)に日本の消費税を上乗せする必要はありません。輸出時は消費税が免除されます。仕入れ消費税の還付方法については国税庁のサイトをご参照ください。

国税庁HPより『 No.6551 輸出取引の免税

月末締め翌月末(翌々月末)という決済条件

日本の商習慣では月末締め・翌月末払いという決済条件が多くみられます。しかし貿易を含む海外との取引で、月末締め翌月末払いという決済条件に出会うことはまずありません。この決済条件は最短で30日、最長で60日の支払い猶予期間が与えられますが、海外の決済ではNET30(請求書日付から30日以内)やNET60(同60日)と明確に記載した請求書(Invoice)を支払い元に送ります。

貿易(輸出入)では請求書(Invoice)の日付から起算するのが基本です。最近は使われることが少なくなってきた信用状(Letter of Credit:L/Cと略)付き一覧払手形決済(L/C at sight)は、銀行で必要書類を呈示した時に支払われるので、月末締めは関係ありません。電信送金決済においても請求書ごと(日付ごと)に処理します。

ただし、回収リスクの低いグループ企業内決済の場合は金融機関手数料を最小化するため相殺という手続きを行うことがあります。この場合は月単位で一括処理するのが原則です。同一企業グループ内決済という特殊環境下での処理と言えます。

甲乙誠意をもって協議し解決

日本の契約書に当たり前のように登場する誠実協議条項は、海外との取引では何の解決手段にもなりません。紛争解決は、調停・仲裁・裁判のいずれかとするのが国際取引の基本中の基本です。

海外ビジネスナビのコラムでは、「国際ビジネス紛争と仲裁・訴訟・調停」について6回に渡り詳しく説明しています。ぜひご一読下さい。

第1回 シリーズ「国際ビジネス紛争と仲裁・訴訟・調停

約束手形

代金決済の一手段として日本ではよく見られる約束手形は、海外で出会うことはほとんどありません。貿易では為替手形(Draft, Bill of exchange)での決済方法もありますが、外国内での商取引で期日指定の為替を決済手段として利用することはほぼありません。

期日指定の決済方法としては、「月末締め翌月末(翌々月末)という決済条件」の項目で説明したように請求書(Invoice)日付から30日以内に支払うNET30などの電信送金(銀行振込)が主流です。

なお、米国では小切手(Check)による決済もしばしば見られます。

上代(じょうだい)、下代(げだい)

アパレル業界などの流通業ではよく使われる用語です。上代は小売価格(Retail price)、下代は卸業者が小売業者に販売する価格(Wholesale price, Dealer price)、のことです。

日本を含む多くの国では、独占禁止法によりメーカーが再販価格を決定することを禁じています。したがい、上代や定価という表現ではなく希望小売価格(Suggested retail price、Manufacturer’s suggested retail price)という表現を使います。日本で定価制度が残っている業界は、書籍や音楽など著作権が存在する分野及びたばこ、に限定されます。海外では定価という考え方がほぼ皆無、と思って活動して下さい。

おわりに

日本の商取引と海外ビジネスの違いを全て挙げることはできませんが、海外ビジネスにこれから挑もうとする中小企業のみなさまにお役に立つ情報やアドバイスを提供します。お気軽にご利用下さい。

中小機構近畿本部 国際化支援アドバイザー 芳賀淳

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