昨今の外部環境の変化により、従来の「国境を越えた付加価値への追求」に重きを置いた「効率最優先型」から、突発的な事態にも柔軟に対応できる「臨機応変型」への戦略転換が求められています。

ここでは、企業としてサプライチェーンをどのように再構築していくべきか、その方法を説明します。

グローバル化により、諸外国との経済的結びつきは飛躍的に深まっています。2001年、中国がWTO(世界貿易機関)に加盟して以降、「第3国から輸入した原材料を中国で加工し、他国に輸出する」という形態が1つのトレンドとなりました。

一般社団法人・日本自動車部品工業会の統計によると、2018年の日本の自動車部品輸入額2兆5600億円のうち、中国からの輸入は30.1%と突出しています。

また、下記の図からも分かる通り、輸送機械と情報通信機械の2業種を筆頭に、海外生産における中国の割合は高くなっています。

しかし、昨今の外部環境の変化により、従来の「国境を越えた付加価値への追求」に重きを置いた「効率最優先型」から、突発的な事態にも柔軟に対応できる「臨機応変型」への戦略転換が求められています。

2020年10月、菅義偉首相はベトナムにおける演説で「日本企業のサプライチェーンを各国に分散させる」旨の発言をしました。この方針は、「臨機応変型」への転換をより一層加速させると思われます。

では、企業としてサプライチェーンをどのように再構築していくべきか、説明していきます。

供給候補国における、原材料の輸入依存度(FVA)を知る

供給候補国(中国など)が、企業の購入対象となる(半)完成品用の原材料を第3国からの輸入に大きく頼っている場合、当然ながら調達リスクは大きくなります。

この「原材料の輸入依存度」は「FVA」(Foreign Value Added:国外付加価値) という数値で示されます。この数値が38%以上であれば「高リスク」、30~38%で「中リスク」、30%未満は「低リスク」と考えるのが一般的です。

供給候補国として望ましいのは、FVAで示される「原材料の輸入依存度」が低い国といえます。

(1) FVA 38%以上:「高リスク」
(2) FVA 30~38%:「中リスク」
(3) FVA 30%未満:「低リスク」

供給候補国の輸入先の集中度(HHI)を知る

供給候補国(中国など)において、関連する原材料の輸入国(第3国)が偏っている場合も、調達リスクは大きくなります。

この「原材料の輸入国の集中度」は、「HHI」(Herfindahl-Hirschman Index:寡占度指数)で示すことができます。HHIは、輸入に占める各相手国のシェアの2乗を合計した値で算出します。

HHI数値が2,500以上であれば「高リスク」、1,500~2,500で「中リスク」、1,500未満は「低リスク」と考えるのが一般的です。供給候補国として望ましいのは、HHIの値が小さい国ということになります。

(1) HHI 2,500以上:「高リスク」
(2) HHI 1,500-2,500:「中リスク」
(3) HHI 1,500未満:「低リスク」

なお、供給候補国を選定する際、その国と購入国(日本など)が、政治的・経済的に友好関係であることが前提条件となります。

その他の押さえるべきポイント

ここまで、サプライチェーンを再構築するために重要な要素を説明しました。ほかに、あると望ましいのが以下の4点です。 

  (1)最終市場に近い地域での在庫保有
  (2)新たな調達先の探索
  (3)複数の輸送手段の確保
  (4)モノと情報の見える化および一元管理

現状の激しい環境変化をチャンスと捉え、ぜひとも「臨機応変型のサプライチェーン」へ方向転換してみてください。

おわりに

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中小機構近畿本部 国際化支援アドバイザー 小峰 潤

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