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信頼を得る土台づくりが成功のカギ!SNSを活用した越境EC戦略

信頼を得る土台づくりが成功のカギ!SNSを活用した越境EC戦略

これから海外展開や越境ECに挑戦したい中小企業の経営者・担当者必見!失敗しないための秘訣をアドバイザーが伝授します。今回は、越境ECで成果を上げるためのSNSマーケティングの基本と、失敗しないための始め方をご紹介します。

はじめに SNSが重要な理由

越境ECに取り組む企業にとって、SNSはもはや「やるか・やらないか」を検討する段階ではなく、それを「いかに効果的に活用するか」が問われる時代になりました。本稿では、越境EC におけるSNSの役割の大きさと、運用の前に整えておくべき“土台”についてお話しします。

SNSが重要な理由は、主に次の3つです。

① SNSは強力な“発見チャネル”である

かつては情報収集といえばマスメディアやホームページが中心でしたが、現在は多くの消費者がSNSから商品やブランドを知るようになりました。海外企業が仕入れ先を探す際にもSNSが活用されており、買い手との出会いの場として欠かせない存在になっています。

② SNSは“信用獲得の基盤”である

かつてはホームページの有無が「信用できる企業かどうか」の判断材料でしたが、今は「SNSがきちんと整っているか」も信用の基準になってきています。投稿が少ない、更新が止まっている、世界観が統一されていないアカウントは、それだけで「この企業から購入しても大丈夫だろうか…?」と不信感を抱かれやすくなっています。

③ SNSは単なる宣伝ツールではない

SNSでは自らの投稿だけでなく、口コミやインフルエンサーによる拡散、そしてフォロワー(消費者)とのやり取りを通じて徐々に信頼が形成されます。海外展開においては、SNSが海外顧客や現地代理店との最初の接点になるケースが増えており、販路開拓の入口として機能するようになっています。

SNSマーケティングの5つの手法

SNSを活用したマーケティング施策は、大きく5つに分類されます。

■自社アカウントの運用

ブランド構築・信頼形成の中心

■SNS広告

ターゲットを絞って拡散・販促する手法

■インフルエンサー/KOL*1活用

初期信頼をスピーディーに獲得する手法

■ライブコマース

とくにアジアで普及している、SNSとECを融合させた即時販売

■UGC*2の活用

口コミ・レビューなど、第三者の声で信頼を強化

越境ECで成果を上げるには、この5つを組み合わせながら海外市場で信頼を積み上げていくことが重要です。本来は国内と海外でアカウントを分けるほうが望ましいのですが、SNS運用は日々の更新が必須で負荷が大きいので、無理がある場合は1つのアカウントで日本語と英語を併記する形でも問題ありません。

*1 KOL:「Key Opinion Leader(キーオピニオンリーダー)」。特定の分野で高い専門性を持つインフルエンサーのこと。
*2 UGC:「User Generated Content(ユーザー生成コンテンツ)」。一般ユーザーが自発的に作成・投稿したコンテンツのこと。

SNS取り組みの順序

SNSマーケティングでは、「広告さえ出せば拡散する」「インフルエンサーを使えば売れる」といった営業トークを耳にすることがあります。しかし、アカウントの信用が形成されていない段階で広告を打っても成果にはつながりません。せっかく集客をしても、アカウントの内容に不安を抱かれてしまうと購買には至らないからです。そのため、まずは自社アカウントの土台を整え、信頼を獲得してから広告で拡張する流れが最もスムーズで効果的です。

SNS取り組みの順番
SNS取組みの順序
■ステップ1:自社アカウントの基礎づくり

ブランドの世界観やUSP*3 (独自価値)を明確化することが最初の一歩です。「企業として何を発信したいのか」「消費者がこのアカウントをフォローする意義はどこにあるのか」を明確にするためにも、自社の強みを棚卸したうえでSNSに取り組む必要があります。

そのうえで、まずプロフィールを最適化します。検索で上位に表示されるよう、プロフィール文にはSEO*4を意識したキーワードを盛り込みます。

次に、最初の10〜30投稿を用意しましょう。Instagramでは最低9投稿がないと投稿グリッドが埋まらず、初見で不信感を持たれやすくなります。多くのユーザーはフォロー前にスクロールして投稿を確認するため、最初の段階から10〜30投稿があると信頼を損ねません。

Instagramアカウント画面サンプル1
SNSアカウント画面イメージ
SEOを意識したキーワードをプロフィール文に記載している
Instagramアカウント画面サンプル2
SNSアカウント画面イメージ
スクロールすると投稿グリッドが埋まっている状態
■ステップ2:インフルエンサー/UGCで初期信頼を獲得

アカウントの土台を整えたら、口コミやタグ付け促進のキャンペーンなどを行い、フォロワーを増やしてブランドや商品の認知度を高めます。実際に商品を使ったユーザーのリアルな声が集まると、強い信頼に繋がります。

■ステップ3:SNS広告で拡張

アカウントが整ってから広告を出すことで効果は向上します。逆に土台が弱い状態で広告のみ出しても費用対効果は下がってしまいます。

*3 USP : 「Unique Selling Proposition(ユニーク・セリング・プロポジション)」。競合にはない「独自の強み」や「顧客にとっての独自の価値」を指す。
*4 SEO :「Search Engine Optimization(サーチ・エンジン・オプティマイゼーション)」。Googleなどの検索エンジンの検索結果で自社サイトを上位に表示させるための施策全般を指す。検索エンジン最適化。

よくある失敗例

「SNSを始めたけれど効果が出ない」という企業には、次のようなケースが見られます。

✕ 投稿が少ない状態で広告を出している

アカウントの信用が形成されていないため、集客しても購買につながりません。

✕ 商材に合わないSNSを選んでいる

工業機械の企業であれば、一般消費者向けのInstagramよりも、ビジネスに特化したLinkedInを活用するのが適切です。

国別のSNS特性を無視している

「中国ではInstagramは不可」「東南アジアの特定分野(アパレル、化粧品等)ではTikTokが強い」など、国や地域により有効なプラットフォームは異なります。どこへ売りたいのか、誰に届けたいのかを明確にし、適切なプラットフォームを選ぶことが大切です。

まとめ

SNSは無料で始められ、海外と直接つながる大きなチャンスがあります。しかし、成果を出すためには、継続的な投稿、世界観の構築、顧客視点での情報発信、長期的な運用といった地道な積み重ねが欠かせません。「手軽に始められる=簡単に成果が出る」わけではないことを理解しておく必要があります。 SNSに取り組む際には、自社の強みを言語化し、誰に何を届けるのかを明確にすることが重要です。中小機構のアドバイザーは、経営戦略の視点から強みの棚卸し、ターゲットの絞り込み、競合との差別化を踏まえたSNS運用をサポートしています。効果的な海外向けプラットフォームのアドバイスも可能です。すでにSNS運用に取り組んでいる事業者の方も、どうぞお気軽にご相談ください。

筆者紹介

吉川 有紀 中小機構 中小企業アドバイザー(新市場開拓)

化粧品会社、専門商社(雑貨、電気製品等)で勤務後、フランスで起業しました。現在は日本を拠点に国際的にビジネスを展開し、顧客はアジア、北米、ヨーロッパ、オセアニアなど多岐に渡ります。海外ビジネス年数は14年になります。専門商社勤務時には製品企画、代理店交渉・契約から実際の輸出入実務まで幅広く担当しました。企業経営経験と中小企業診断士としての知見を生かし各種事業者の支援もしています。


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