ハリマ産業株式会社(以下、同社)は襖や障子などの製造から取付工事まで一気通貫で行う、関東以北で最大の建具製造業者である。 住宅の洋風化で国内市場の縮小が進む中、新たな活路を見出すべく中小機構の海外展開ハンズオン支援を利用し、フランス市場の販路開拓に取り組むこととなった。
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消えゆく和室、伝統継承の活路を海外へ
かつて日本家屋には欠かせない存在であった襖や障子を使った和室。しかし、近年ではその需要は減少し、洋室に取って代わられつつある現実に直面している。リーマンショック以降は新築着工件数も激減し関東に13社あった量産襖メーカーが今では3社となった。このような状況の中、大久保社長は伝統産業の存続とそれを次世代に受け継ぐ使命感を胸に、長年の夢であった海外展開を目指したいと考え始めた。 とはいえ創業50年以上の歴史がある同社も海外は未知の市場。そこで商工組合中央金庫より中小機構の海外展開ハンズオン支援事業の紹介を受け、海外への販路開拓に取り組むこととなった。
What is FUSUMA?な世界へどうアプローチするか
襖や障子は日本国外ではまだほとんど知られておらず、中長期的な視野で認知度向上・需要の創出を図る必要がある。同社では襖や障子そのものだけにこだわらず、襖紙を使ったアートパネルなどの加工品も輸出候補に加え、幅広い視点で海外展開の可能性を探っていくこととなった。
海外事業のチームは社長がリーダーとなり、商品開発/販路開拓実務担当者2名の総勢3名。
面談を重ねる中で、海外事業計画の策定、襖・障子及び加工品の市場性と商流の調査、そして販路開拓を支援の軸に据えることとした。また、各国に点在するニーズを拾い上げる手段として、初期段階から海外向けWebサイトを活用した販路開拓にも注力していたことから、同社のWebサイトを運用している国内外部事業者もプロジェクトに加わり、本格的な海外展開プロジェクトがスタートした。
最初の大きな課題は、「どの国をターゲットにするか?」であった。
まずは日本文化に対する関心が高いとされるヨーロッパやアメリカに着目し、現地在住のアドバイザーの協力も得ながら情報収集を行った。結果、日本文化、そしてものづくりへの興味や造詣の深いフランスを最初の対象市場に絞りこんだ。
綿密に立てた事業計画と仮説。フランスでの反応は・・・?
海外事業計画の策定段階では、フランス市場分析・自社分析・ビジネスモデルの構築を特に入念に行った。
フランス市場分析では、障子や畳、組子細工、和紙などの輸出状況やニーズを調査した。自社分析については、何を活かして何を新たに身につける必要があるかを整理した。そして、「何を誰にどうやって売るか。」というビジネスモデルを検討することに最も労力を費やした。現状では障子の輸出事例も少なく、襖に至っては認知すらほとんどされていない。襖や障子そのものから襖紙のアートパネルといった加工品など対象商品を広げた上で複数の仮説を立て、用意したサンプルや試作品は100点を超えた。
現地渡航の結果、仮説の多くは外れた。気軽に手に取りやすいミニチュア版や洋風の住居に取り入れやすいキャビネットの扉等の加工品にもニーズがあると考えたが、反応は芳しくなかった。しかし収穫は大きく、今後の方向性についてもすぐに決まった。襖紙アートパネルなどの加工品ではなく、やはり襖と障子で勝負する。フランスには本物以外に興味が無く、日本人に負けないくらい厳しい目を持っている人がたくさんいることがわかったからだ。
「現地の反応を素直に受け止めることができたのは、事前準備をしっかり行ったから。」 大久保社長はきっぱりと言い切る。迷いはなかった。
フランス現地事業者とのパートナーシップを確立!
渡航前にアプローチ先として抽出していたパリのインテリア事業者が、同社の襖や障子に興味を持った。彼らは障子に似せたパーテーションを製造・販売していたが、日本の本物の和室建具は扱ったことが無かった。そこで同社は現物に触れて本物を確かめてもらいたく、実物と同じ製法で製作したミニチュア版のサンプルを持っていった。本物の襖や障子を目にし、文化やライフスタイルは違ってもものづくりに携わるもの同士、議論は白熱。2024年2月、彼らのショールームでの設置が実現し、そこから1か月と経たないうちに2件の受注獲得にこぎつけた。
最初の渡航から半年で受注に至ったのは、フランス現地アドバイザーの力も大きい。渡航前から毎月オンライン面談に参加し、フランスの商習慣やプレゼンテーション資料に関するアドバイス、訪問先へのアポイントメント取得、商談同行支援など様々な側面での支援が同社の初めての海外展開にとって大きな後押しとなった。
Webサイト経由で世界からの引き合いも徐々に増えている。 様々な国からの要望に対応するだけでまだ精一杯であるが、経験値を積み重ね成約率向上を目指している。特定の地域を面にした展開とWebサイト経由での点在ニーズの発掘の両輪で、今後も海外展開を推し進めていく。
企業の声
この度は、弊社のフランス市場進出に際し、多大なるご支援を賜り、誠にありがとうございました。皆様のご尽力により、パリのインテリア事業者との協業が実現し、襖や障子の魅力をフランスの皆様にお届けすることができました。
特に、現地アドバイザーの皆様、中小機構のアドバイザー、職員方のご協力には心より感謝申し上げます。おかげさまで、初回の渡航から半年以内に受注を獲得することができ、大きな成果を上げることができました。襖にとっても、弊社にとっても大きな一歩です。
今後も、皆様のご期待に応えるべく、さらなる努力を重ねてまいります。引き続きご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。
企業プロフィール
ハリマ産業株式会社 | |
URL: | https://www.harima-sangyou.co.jp/ |
代表者: | 代表取締役社長 大久保 謙一 |
所在地 | 千葉県 松戸市 |
資本金 | 1,000万円 |
従業員数 | 26人 |
業種 | 製造業 |
事業内容: | 木製建具製造業,ふすま製造業,工事 |
商品内容: | 襖・障子 |
担当アドバイザー:小野 章子 中小機構 中小企業アドバイザー(国際化・販路開拓)
中小機構について
独立行政法人中小企業基盤整備機構(略称:中小機構)は経済産業省が所管している中小企業政策の中核的な実施機関です。起業・創業期から成長期、成熟期に至るまで、企業の各成長ステージで生じる様々な経営課題に対応した支援メニューを提供しています。
「海外展開ハンズオン支援」では、国内外あわせて300名以上のアドバイザー体制で、海外ビジネスに関するご相談を受け付けております。ご相談内容に応じて、海外現地在住のアドバイザーからの最新の情報提供やアドバイスも行っております。どうぞお気軽にお申し込みください。
「海外展開ハンズオン支援」
※ご利用は中小企業・小規模事業者に限らせていただきます。
公開日:2024年 12月 24日
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