本シリーズは全8回の構成になっています。今回は、海外展示会に参加するにあたり、どのような効果が期待され、メリットはどこにあるのかについて、ご紹介します。

海外展示会出展のメリット

新しい製品(商品)や技術・サービスを開発した際に、消費者やバイヤーの反応を確認する手法として、国内展示会に出展し、会場で直接確認することがあります。 自社製品等を海外に販路開拓する場合でも基本は同じで、自社の製品(商品)の特徴などを積極的にPRして今後の商談につなげるために、海外展示会に参加することも有効な手段です。 中小機構は、独立行政法人日本貿易振興機構(以下、JETRO:ジェトロ)や香港貿易発展局などと連携し海外展示会を支援しています。具体的には、中小機構では海外販路開拓に精通した専門家が、製品のブラッシュアップに関するアドバイスや海外展示会出展にあたっての留意点(事前・現地・事後になすべき事項)のアドバイスを行っています。 また、一部ですが出展時に必要なパンフレット・製品カタログなど現地プレゼンテーション資料の翻訳支援(有料)も行っています。出展費用補助にとどまらず中小企業の海外ビジネス展開を一貫して支援しているのが特徴です。

メリットの内容

海外展示会に出展することにより、次のようなメリットを享受できます。

現地バイヤーや消費者との対話を通じたテストマーケティング

海外展示会では、インターネットではできない現地バイヤー・消費者の具体的な反応や意見を訊くことができます。ここでの体験が、現地向けの製品(商品)の改良や販売活動の重要な情報になります。ただし、訴求するポイントを事前に整理しておくことが望まれます。

目利き海外バイヤーによる製品(商品)

発掘のチャンスが得られます 展示会には、新しい製品(商品)を発掘したい目利きバイヤーが現地だけでなく世界各地から集まります。その際、事前に整理した製品(商品)の訴求ポイントや販売価格をしっかり説明することが大事です。

競合する製品(商品)やマーケットの動向把握

展示会に参加すれば、現地や世界の市場動向をまとめて把握できます。出展各社が精力的に展示した製品(商品)や展示手法は、最先端の市場動向そのものです。展示会を視察するだけでも重要な情報が得られます。 海外展示会への出展は、販路や取引先開拓のために進出する国で時間と費用をかけて動きまわるより、費用対効果が望める場合があります。短期間で製品(商品)のPRや商談、消費者の反応を見たりコメントをもらうことができるからです。相対的に労力や資金面の負担が小さく、中小企業が行う海外展開の最初のステップに適していると言えます。 なお、海外取り引きには、①契約上のリスク、②為替リスク、③与信上のリスク、④輸送・保管上のリスク、⑤取引規制のリスクなどの不確実性があります。これらのリスクが海外展示会出展を迷われる理由のひとつのようです。しかし、これらのリスクは貿易実務上の知識あるいはルールで管理できます。必要な貿易実務の知識あるいはルールを身につけて、リスクを管理するためにも、まずは中小機構等が関わる展示会などを活用しましょう。

出展メリットを引き出すポイント

せっかく貴重な費用も時間もかけて海外展示会に出展する以上、出展のメリットを最大限に引き出せるよう、事前の検討や準備を十分に行いましょう。

出展目的を明確にして、出展のメリットを最大限に引き出す

出展する製品(商品)が事業ステージのどの段階にあるかを見極め、その製品(商品)のステージに合わせて、①「市場調査・情報収集」、②「製品(商品)のテストマーケティング」、③「バイヤー・新規取引先の開拓」など、出展目的を明確にすることが重要です。 なお、代理店の開拓も大きな目的ですが、代理店には2種類の機能がありますのでご留意ください。 ※代理店について(一般的には「販売店」と言われる代理店もあります。) (1)Distributor(販売店):企業から販売店へ製品の売却をもって、所有権は販売店に移転します。販売にかかるコストや在庫リスクは、販売店が負担します。 (2)Agent(代理店):代理店を通じて、製品を顧客に販売する場合、製品の売買は企業と顧客との間で成立します。代理店には企業より手数料を払います。販売コストや在庫コストは企業側で負担します。

出展目的に則して、開催場所の選定や展示内容などの検討を行い、事前の準備を万全に

上記の目的を達成できるように、開催場所、予想来場者数や開催時期、出展コストと公的機関からの支援制度の有無、現地の商習慣などを十分に検討し、出展する展示会を選定します。そのうえで、社内プロジェクトチーム(「出展事務局」)の立ち上げや出展計画の作成と出展製品(商品)の準備や展示方法、現地の顧客等へのPR・広報など事前の準備を万全に行うことが望まれます。
出展に向けた事前の準備や出展計画の策定については、この後の第3回で説明します。

継続して出展することで、現地での信頼を得ること

海外展示会への出展で成果をあげるには、粘り強く現地での活動を継続することが重要です。徐々に現地で企業名や製品が知られ、現地での信頼が向上します。1回の出展で結果を出そうとは思わず、計画的に出展することが望まれます。なお、①事前に来場いただけるお客様があれば、展示会前に現地で面談する、②会期中で感触を得たお客様があれば、会期後も1週間程度現地にとどまって面談することも現地での信頼を得るポイントです。

「第2回 海外展示会への出展検討の進め方」へ続く

各コンテンツの内容につきましては、すべて掲載時点のものです。各種規制の変更等により、数値や内容が現在のものと相違する場合がございますのでご注意ください。