
これから海外展開や越境ECに挑戦したい中小企業の経営者・担当者必見!失敗しないための秘訣をアドバイザーが伝授します。今回は、消費者向けの越境ECだけにとらわれない、BtoBの越境ECについて詳しくご紹介します。
はじめに
国内市場の縮小が進む中、多くの企業が越境ECに関心を寄せています。「低コストでスタートできる」「英語が苦手でも大丈夫」といった理由から、「越境ECなら簡単に海外展開できるのでは」と考える企業が増えている状況です。
たしかに、越境ECは海外展開における有力な選択肢のひとつです。しかし一般的に、越境ECというと “消費者向け直販型(BtoC)”がイメージされやすく、「越境EC=消費者への直販」と思い込むことで、自社にとって実は難易度の高い手法を選んでしまうケースも少なくありません。
たとえば、国内でECを運用しており、社内にEC担当者がいる企業であれば、海外ECも比較的スムーズに展開することができます。
一方、国内でBtoB事業を中心に展開してきたメーカーなどの場合、消費者向け直販型の越境ECは、これまでの事業ノウハウと大きく異なります。ECで成果を上げるためには、日々のSNS発信、広告を含むマーケティング施策、データ分析といった地道で継続的な取り組みが不可欠です。しかしBtoB企業が得意としてきたのは、対面営業での関係構築や大量ロットでの取引、独自の技術対応などです。この事業特性の違いが、「越境ECを始めたものの社内運用が進まない」「思った以上に手間がかかりわりに合わない」といった挫折の原因になりやすいのです。
重要なのは、“自社の強みがどこにあるのか”を冷静に見極めることです。オンラインを活用した海外販路は、BtoCの越境ECだけではありません。BtoB企業にとって、より相性の良い選択肢はいくつも存在します。自社の強みを活かせる、より適した手法を選んでいただきたいと思います。
オンライン環境での海外BtoB販路開拓モデル
BtoB企業が越境ECを行う際には、次の3つのオンライン販路開拓モデルがあります。

① オンラインのBtoBホールセールサイトに出店する
ホールセール(卸売)サイトとは、一般消費者ではなく、法人や小売店などの事業者を対象に商品をまとめて販売するオンラインサイトのことです。国内では、事業者向け卸・仕入れサイト「スーパーデリバリー」がよく知られています。
ホールセールサイトは消費者向け越境ECのように商品ページを細かくつくり込む必要がなく、日々のSNS運用も必須ではありません。BtoB企業が得意とする卸の商流をそのまま海外へ拡張できるため、とても馴染みやすい方法です。すでに欧米の小売店が日常的に利用しているため、狙いたい国や商材に合わせた海外ホールセールサイトを選ぶことで、現地小売店への販路開拓がスムーズに行えます。
海外ホールセールサイトの代表例
- Faire(フェア/米国/欧米+オセアニア向け インテリア・雑貨)
- Ankorstore(アンカーストア/フランス/欧州向け雑貨・食品)
- Rangeme(レンジミー/米国/小売バイヤー向け食品・雑貨のマッチングサイト)
- Alibaba(アリババ/中国/世界最大級のBtoBマッチングサイト)
中小機構が運営する「J-GoodTech(ジェグテック)」も海外企業とのマッチングサイトです。まずはここから海外展開をスタートする方法もあります。
② 現地ディストリビューター(卸)のオンラインストアで販売する
オンライン販売を行なっている現地ディストリビューターに、メールやSNS経由でアプローチする方法です。リアルの卸売と同様に、販売主体は現地ディストリビューターとなります。
現地へ行かなくてもメールやZoomだけで商談を完結でき、支払いもデジタル決済が主流です。とくに小ロットの小口輸出に適しており、欧米では「まずは5万円分だけ買ってみます」といった取引が日常的に行われています。まずは小規模に海外の卸売開拓を始めたい企業におすすめです。
③ 自社のホールセールサイトを構築する
自社で卸専用のサイトを立ち上げる方法です。難易度が高く感じるかもしれませんが、実際には、自社サイトに英語版の卸カタログ(PDF)を掲載し、海外バイヤーに閲覧してもらうといった簡易な形式でも十分に効果の出る商材群も多々あります。品番で注文してもらい、メールで受発注を行います。
これは“紙カタログのオンライン化”に近く、多くの日本企業にとって取り組みやすいモデルです。近年はAIの活用により翻訳やサイト制作が容易になり、初期コストを抑えてスタートできるようになりました。英語人材の確保も必ずしも必要ではありません。
とくにOEMやカスタム受注との相性がよく、SKU*が多い企業は海外オンラインモールに商品を一つずつ登録するよりも効率的です。ただし、集客を自社で行う必要があるため、海外でもある程度は認知度のある商材のほうが適しています。インバウンドに人気の商材も有利です。
*SKU:「Stock Keeping Unit(ストック・キーピング・ユニット)」。在庫管理を行う上での最小の管理単位のこと。
まとめ
消費者向けの越境ECは、オンラインによる販路開拓手法の一つにすぎません。大切なのは、自社の強みを最大限に活かせる手法を選ぶことです。
国内ECの経験がなく、SNS運用を担う人材がいない企業にとって、消費者向け直販型(BtoC)の越境ECはハードルが高い面があります。それでも、中長期で投資する経営判断があれば挑戦できます。その際には、認知獲得、効果的なSNS運用、商品レビューの強化など、海外で販売するための土台づくりを地道に整えていく必要があります。
中小機構では、EC、SNS、貿易実務など多様な専門性をもつアドバイザーが、各企業とって最も適切で成果につながりやすい海外販路開拓の方法を一緒に考えています。方向性に迷いやお悩みがあれば、ぜひご活用ください。
筆者紹介

米国系ネット通販企業にて、新規事業の立ち上げやバイヤー業務、事業管理を経験しました。独立後に経営革新等認定支援機関の認定を受け、事業計画策定から、ECやWebなどのオンライン、そして展示会出展などのリアルの場での販路開拓まで、輸出実務支援に幅広く従事しています。
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