みなさんは「富裕層」と聞いて、どのような方が思い浮かぶでしょうか。近年、「当社の製品を海外の富裕層に売りたい!」という中小企業の方々からのご相談が増えてきています。このレポートでは、中小企業の方々が富裕層に向けた海外展開を計画するうえで、そのターゲット像の具体化に資するべく、富裕層と呼ばれる方々のお気に入りのものやライフスタイル、お勧めのショップなどをインタビュー調査し、まとめたものです。みなさんの商品開発やマーケティングのお役に立てれば幸いです。
なお、このレポートは2018年に執筆されたものであり、現在の状況と異なる可能性があることをご了承ください。

氏名:ジョルダーノ・エモ・カポディリスタ(Giordano Emo Capodilista)
年齢:50歳代 男性
職業:ワイナリー ラ・モンテッキア社(La Montecchia s.r.l.)社長、ゴルフ場 モンテッキア・ゴルフ 経営、第22代エモ・カポディリスタ伯爵
家族構成:既婚。奥様はプーリアのアンナ・グアリーニ侯爵夫人。子供二人長男、長女)
自宅エリア:パドヴァ県、エウガーネイ丘陵セルヴァッツァーノ・デントロ
職場エリア:パドヴァ県、エウガーネイ丘陵セルヴァッツァーノ・デントロ
住居の間取り:住まいは1200年建立のモットロ城。櫓の部分を合わせると四階だが、居住部分は二階。一階はサロン、書斎、居間、ゲストルーム、ダイニングルーム、キッチン。二階は寝室4つとサロン。
同じ敷地内にはワイナリー及び、27ホールのゴルフコース及び三ツ星シェフマッシミリアーノ・アライモ経営のレストランの入ったゴルフクラブ、約400mの距離に、1570年建立の重要文化財指定建造物、ヴィラ・エモ・カポディリスタを所有。
車所有台数:1台(Range Rover)
使用する言語:イタリア語、英語、フランス語

ヴェネツィア共和国を築いた貴族の末裔に生まれて

エモ家はヴェネツィア貴族、一方カポディリスタ家はパドヴァの貴族です。 ヴェネツィア共和国時代の最後エモ家の当主がカポディリスタの息女と結婚しました。そのカポディリスタ家がこの農園を所有していて当時、ヴェネツィア貴族と内陸の貴族の女性との結婚の先駆けでもありました。
イタリア最大の貴族の一つとなった当家が1200年代に所有していた土地は約20,000ヘクタール、その中では代々ぶどうが栽培されており、1570年に建てられたヴィラの一室、“ぶどうの木の間”の壁画には当時のぶどうづくりの様子が克明にデザインされていてとても興味深いです。

1200年から続くワイン造りに注ぐ情熱

初代のエモ・カポディリスタ伯もヴェネツィア共和国の海軍を率いる軍人でしたし、祖父は有名な帆船アメリゴ・ヴェスプッチの船長を務める元帥、私自身も海軍アカデミー出身と、当家の男子は代々軍務についてきたのですが、それと並行して、このエウガーネイ丘陵という火山土壌の素晴らしい特性を利用し、長年にわたってワイン造りが続けられてきました。もちろん時代と共に栽培法、醸造法共に改良がほどこされ、今私が作っているワインは幸い、イタリアでも最高のワインに与えられるガンベロロッソのトレビキエーリ賞を毎年受けるなど、国際的にも高く評価を受けています。赤ワインに関しては、驚かれるかもしれませんが、イタリアらしい品種ではなく、カベルネやメルロを使ったいわゆるボルドータイプのブレンドは主体で、私は親愛の情を込めて“ヴェネト・ボルドーワイン”と呼んでいますが(笑)、すでに1800年代の終わりには栽培、醸造法が確立しており、ぶどうの品種もフランス由来のものでありながら今では、私たちの伝統的なぶどうと化しています。幼いころから、この辺りでは習慣的にカベルネやメルロを飲んでいたことを憶えています。
私たちにとって、カベルネやメルロといったワインは日常に密着した食生活そのものの一部だったのです。 実はヴェネト州いうのは世界でフランスのメドック地方に続くメルロとカベルネの大生産地なのです。そのため、非常に興味深い歴史を持つわけですね。
その後、日常の食生活の一部であったワインは現在のように上質なものを少量味わうという飲み物と化したわけですが、これらのぶどうは間違いなく、われわれの文化とヴェネトの人々の伝統であり続けています。私は常にこのクリュと我が家のぶどう園の歴史を重んじ当家の先人の知恵を忠実に引き継いできたわけですが、それは流行よりも遥かに価値があるものだからです!

偉大な父の轍を踏む。地元の歴史とワイン文化を継承する努力

私の父も、ワイン造りに深い情熱を注いでいました。非常に現代的なビジョンの持ち主でヨーロッパとワインのために戦い続けた人でもありました。このエウガーネイ丘陵の最初のDOCワインを公式に認定させたのも私の父でこの土地の魅力を知らしめるために尽力してきたのです。エウガーネイ丘陵は、偶然通りかかるという場所ではないのでおそらくあまり知られていないのですが、探究心をもって訪れていただくことで中部ヴェネトの素晴らしい情景を発見できます。数々の修道院をはじめとする歴史的建造物や文化に満ちた土地でもあり、詩人ウーゴ・フォスコロはこの近くに居を構えていましたし文豪ヤコポ・オルティスの最後の作品の数々はエウガーネイ丘陵が舞台となっています。常に過去の偉大な旅人、文豪たちに広く知られ、愛されてきた場所だったのですね。
もう一つはモスカート・ジャッロ種を使ったスプマンテで、世界的にも知られたこのゾーン特産の爽やかな甘口ワインですが、私の会社は生産数、品質共にエウガーネイ丘陵最大のブランドです。モスカート・ジャッロはこの火山土壌での栽培に非常に適した独特なキャラクターを持つ品種で、土中のミネラルの影響でまさにオレンジの花を思わせるすばらしい香りを備え持つのです。そのために、このゾーンのモスカートはフィオール・ディ・アランチョ(オレンジの花)と呼ばれ現在ではDOCG(保証付き原産地呼称)にも格付けされ、アスティなど他ゾーンとは一線を画す個性が尊重されています。私も、父の情熱を受け継ぎ、このゾーンやワイン文化の素晴らしさを知らしめ、保護するために現在はイタリア全国の農業協同組合の総代表、およびヴェネト州の文化財保護協会の会長に就任しており、頻繁にローマに通い農務省など政府の各機関との交渉、調整などを行っています。

ゴルフ場と、重要文化財、ヴィラ・エモ・カポディリスタの経営

隣接するゴルフ場は昔、当家の所有するたばこ工場と森林だった部分で、いまでは27ホールのコースと、三ツ星シェフ、マッシミリアーノ・アライモが経営するレストラン、ゴルフクラブがあり、全国、世界から観光をかねてゲストがやってきます。
また、この城の正面に見える大きなヴィラは1570年に建立の宮殿で内部は緻密なフレスコ画で装飾されており、重要文化財に指定されています。この邸宅の建築様式は、非常に特殊です。ギリシャ十字型の階段が配されているほか様々な象徴、シンボルに満ちています。さきほど申し上げたぶどうの樹の間 – ヴェネツィア画家ヴェロネーゼ派のスタイルを強く感じますが収穫する人々、オウム、猿…非常に陽気なモチーフですこれらのフレスコ画を見ても、すでに1500年代にこのエウガーネイ丘陵で盛んにぶどう栽培が行われていた歴史がうかがいしれます。 設計、壁画はダリオ・ヴァロターリによるもので絵画に関してはラリエンセの愛称で知られその後ヴェネツィアで活躍したアントニオ・ヴァッシラッキが手伝っています。
大評議会の間のすべての絵画、大判の絵画のほとんどは彼の手によるもので、一方グロテスク装飾はエリオドーロ・フォルビチーニが受け持ちました。ここではアル・パチーノが主演した映画「ベニスの商人」のロケも行われましたし、私自身映画がとても好きなので、ヴェネツィア映画祭の際にゲストをこのヴィラに招待したり、若い監督のためのちょっとした映画コンペのようなことも行っています。
また、今ではこのヴィラの一部や、ワイナリーの敷地内に建てたコテージを外部の人にも使っていただける宿泊施設としています。重要文化財を保持管理する、というのは非常にお金のかかることでして…ワインづくりと並んで、先祖から受け継がれたあらゆるものを、大切に保ちながらも上手に使ってビジネスに結び付けてゆく、というのがいまどきの貴族の末裔に課せられた使命ではないでしょうか…。

生活スタイル

ワイン造りは自然との対峙。日常も休暇も畑次第、大切なのはそばに居ること

ワインづくりというのはやはり自然が相手なので、完全に自分を仕事から切り離すことは難しいです。妻のアンナ(グアリーニ侯爵夫人)もプーリアでワイナリーを営みながら、パリの大手化粧品メーカーのパッケージデザインの仕事もこなしているので、お互いゆっくりと会う時間を見つけ出すことも難しいのです!よって、普段は私の食事と日常の管理はすべて、長年住み込みで仕事をしてくれているイタリア人のマンマのような料理人とバトラーであるインド人青年にゆだねています。
仕事柄あまり簡単ではありませんが、なるべく家で食事をするようにしています。心がけていることは極力油分と肉をとらず、野菜と果物中心の食生活にすることですが、サプリメントなどは使ったことがありません。
畑を見回っているだけでかなりの距離を歩くので、ジムなどにも通ったことはないです。唯一スポーツといえば、マリンスポーツ、特にヨットとルアーフィッシングが好きで、加入しているクラブの仲間と会うためにも、何とか年に一回は必ず行くようにしています。
睡眠は7-8時間で朝は7時ごろ起床、8時から仕事をしていますが終了時間はまちまちですね。ワイン造りで大事なことは同じ敷地に住んでできるだけ畑に目を配ること。なので休暇はほとんどとれませんが、ぶどうの芽が出る直前の2月と、受粉が終わって実りを待つ7月は異常気象がない限り、比較的時間をとりやすいので、休暇をとるようにしています。休暇は妻の実家のプーリアに行くことが多いですが、まあ、妻のところもワイナリーなのでそちらでも結局、私が仕事をすることになってしまいますがね!
冬は、コルティナダンペッツォにある友人のホテルに数日滞在し、スキーをします。

住居の印象

ヴィラ・エモ・カポディリスタおよび、モンテッキアゴルフは、イタリアでもほかに類を見ない、美しい文化財建造物と自然環境、最高の自家製ワインに三ツ星シェフのレストランという超リッチなコンテンツつきの広大なゴルフコースとしてイタリア中、そして世界からのゲスト、観光客を迎える人気スポットである。22代目のエモ・カポディリスタ家当主であるジョルダーノ伯爵の住まいは、1200年に建てられたモットロ城。こぢんまりしているがしっかりと城壁や櫓や鉄格子の窓などを備えた、まさにファンタジー映画に出てくるような中世のお城そのものである。
お城に実際に住む、という感覚は計り知れないが、内部は石の壁、天井、階段などは木造で、サロン、巨大な暖炉を備えたダイニング、書斎などいずれも天井が高く、重厚なインテリアで装飾されている。ご先祖が実際に使っていた甲冑や、壁に並ぶ代々の当主の肖像画などに当家の長い歴史を感じるが、ほぼいつも一人で暮らしている伯爵ご自身の非常にシンプルな暮らしぶりも伺える。鉄格子のはまった窓からは冬の柔らかく足の長い夕日が差し込んでいるが、印象としてはとても光が少なく、暗い。そもそもお城というのは外敵の侵入から城主の生命を守る最後の砦でもあったので、開放的な窓や簡単に開く扉などがあっては困るのだろうが、どっしりとした閉塞感は現代の家屋からは想像できない感覚である。実際にここで生まれ育った彼にとっては落ち着く環境なのだろうが、暖房の施設は完備されているとはいえ、冬の寒さは厳しいものだという。伯爵は未だに城主として、ここで守り続けている。ぶどうや、宮殿や、自分が次世代に間違いなく引き継がなくてなならないものを。
次第に仄暗くなるサロンで、畑から帰ったばかりで髪も梳かしてなくて…と少し疲れた表情を気にしながらも丁寧に、時にユーモアを交えつつ、自分のワインや伯爵としての暮らしぶりを熱心に語ってくれたインタビューは、称号や歴史的財産を持って生まれる運命とは、勿論幸運であると同時に、ゆるぎない責任感と強い愛情をもって初めて全うできる大変な人生でもあるのだと、思わず考えさせられるひと時でもあった。

持ち物を拝見

居住空間にマッチした伝統と歴史を感じる小物たちにかこまれて。でも日本の家電やハイテク品も愛用

サロンや書斎に並んでるのは主に、先祖から受け継がれた陶器や置物、海外に行った際に購入した彫刻などですが、中には日本の取引先からいただいた久谷や伊万里の飾り皿、漆器の小箱などもあります。
日本の工芸品は繊細なのでとても好きです。日本には何度か行ったことがありますが、買ってくるのは小さな家電品、ハイテク製品、お箸、お茶碗、妻への真珠などです。ビッグカメラとか三越でのショッピング大好きですよ(笑) あと、日本で買い物をすると包装の丁寧さ、素晴らしさにはいつも驚かされますね!

買い物について

ライフスタイルにあわせた品質本位のショッピング

私は身長が194cmもあるもので、普通のブティックに売っている洋服ではサイズか会いません。ですので、パドヴァで大きめなサイズを扱っている行きつけのショップか、ロンドンに行ったときに体にぴったりなお気に入りブランドがあるので、そこでたくさん買ってきます。

お金は本当に大切なものに

友人へのプレゼントには自分のワインを選ぶことが多いですが、クリスマスやバースデープレゼントは、妻の方が断然趣味が良いので選んでもらうようにしています。子供たちはもう大きく好みもわからないので一番必要なお金になってしまいますね。
今まで購入した一番高いものは、なんといっても、ワイナリーです。ここのほかにエウガーネイ丘陵の南端、バオーネに購入したワイナリーは大変な投資でしたが、素晴らしいワインが出来ているので結果に満足しています。

情報集め

オンラインサービスを駆使して効率重視

私はかなりせっかちなので、イタリアと世界のニュースの最も重要なものが毎朝手軽に全て読めるように、リリースにして配信してくれるWEBサービスを契約しています。そのほか地方紙ガゼッティーノ、経済紙SOLE24には目を通します。雑誌に関しても、主要な国際誌の記事をリリースにして配信してくれるサービスを利用しています。SNSはFacebook、Linkedinは使ってはいますがプライベートの情報は一切書き込まないです。

日本文化に対して

パッケージ力、プレゼンテーション力を生かして人気の日本食材のグループ販売を

工芸、建築、料理、どれをとっても素晴らしいです。和食はイタリア、ヨーロッパでもすごく人気があって前途洋々なマーケットだと思います。品質のよい日本の食材、食品をバラバラではなく、統一したコンセプトで一か所にまとめてきちんとした解説をつけて販売できるような流通方式を見つけると、成功するのではないでしょうか?日本ならではのパッケージとプレゼンテーション力を生かした展開をされるのであれば、私も応援します!

成功者と富裕層の定義

成功とは目標の達成。世界と、ひいては内面の平和のためにお金を使えるのが真の富裕層

成功者とは満足をしている人、夢や目標を達成できている人だと思います。成功者が富裕層とは限りません。富裕層である、というだけでは何者でもないと思います。この時代、自分のためだけにお金を使っていても達成感にはつながらないですし。
やはり人生で一番尊いことは自分の内面と世界が平和であること。いろいろな意味で激動している世界を少しでも平和に導き、住みやすい場所にするためにお金を使うことができるのが本当の意味で豊かな、心が平和な人間だと思っています。