本シリーズは全8回の構成になっています。 前回では、出展目的に則した出展品の選定や効果的な展示の仕方について紹介しました。今回は、展示会場への来場者の誘致、展示会向けに会社案内や商品パンフレット等の準備の仕方、さらに実際の出展品の輸送や通関業務の基礎知識と輸送業者の選定方法について紹介します。

来場者誘致の方法(広報活動)

(1)開催までの事前告知

展示会主催者は、会場までの来場者誘致の広報宣伝は行いますが、あくまで展示内容にあったターゲットとなる地域や出展品に関連する業社や個人・消費者を対象にします。来場者をいかに自社の展示ブースに誘導するかは、出展者の広報・誘致活動次第です。出展者は、顧客や取引先への来訪案内はもちろんのこと、独自にターゲットとする業界や企業、個人に出展者や展示物を印象付ける広報活動を行い、来場した際に自社の展示ブースに立ち寄ってもらえるようにします。
来場者誘致のための広報活動には、顧客や企業担当者に直接、案内する直接広報と、プレスリリースによるマスメディア・マスコミを活用する間接広報があります。

直接広報では、ダイレクトメール(DM)や招待状の送付、FAXや電子メールによる案内、テレマーケティングによる周知・案内などがあります。誘致対象者リストは、現地の信用調査会社等から購入することも可能です。
間接広報としては、一般紙や専門紙等のマスメディア・マスコミの有料広告・パブリシティ(プレスリリースによる記事紹介)があります。また、関連団体・機関等の機関紙も出展品やターゲット市場によっては有効な媒体です。そのほかインターネットを活用したバナー広告やメルマガ、検索連動型広告などがあります。DMや広告などはそれなりに費用がかかりますが、新製品や新技術などパブリシティ要素があれば、工夫次第で報道関係を活用することも可能です。

(2)開催期間中の来場者の誘致

現地のいろいろな機会をとらえて積極的に出展活動を行うことがさまざまなチャンスにつながります。 展示会期間中の会場内の広告スペースの活用 主催者による有料の広告スペースとして、会場入り口や通路等にバナーやアドバルーンなどが用意されることがあります。掲示場所や掲示方法は多様ですが、展示会の内容や出展商品に合わせて検討します。 主催者による出展者のためのサービスプログラムの活用 プレゼンテーションや表彰コンペティション、商談相手のマッチング支援などが用意されている場合があります。

出展品の輸送計画の作成

出展においては、指定された期日までに出展品を展示ブースに搬入し、展示会終了後は速やかに搬出することが求められ、そのためにはスケジュールに余裕を持たせた出展品の輸送計画を策定しておくことが必要です。
出展品の輸送にあたっては、日本における輸出通関・輸送業務、現地国における輸入通関業務とともに、梱包業務、付保(輸出保険)業務、出展品貨物輸送業務などさまざまな業務・手続きが必要となり、通常は専門業者に委託します。トラブル回避のために会場への搬入・搬出スケジュールなど事前に詳細な打合せをしておくことが重要です。

輸送業者への依頼

輸送業者の依頼にあたっては、展示会主催者による指定(通常は複数)の有無を確認し、指定のある場合は、その輸送業者の日本法人や代理店を候補先として選定します。
指定のない場合は、複数の候補企業を選定します。 業者の選定にあたっては、これまでの展示会出展業務での実績、保税扱いでの輸送、輸送方法とスケジュール、現地でのスタッフ体制、費用見積等から選定します。
また、開催国での輸入通関業務で留意すべき点としては、保税輸送の扱いです。展示会場が「保税展示場」ないし「保税地域」にある場合には、日本国内に輸出時の形状のまま日本に戻すことを条件に、相手国に輸入税を払わない(「保税」扱いにする)制度が利用できます。多くの展示場は、「保税展示場」になっていますが、保税展示場になっていない場合には、「関税を支払う」、「ATAカルネでの一時免税扱い(保税扱い)」、「担保を支払い、一時輸入扱い」などの制度があり、開催国の事情に詳しい通関・輸送業者に依頼することが望ましいといえます。この点についても、出展説明会で確認しておいて下さい。
そのほか、出展に伴うリスク対策の各種保険も付保しておくことをお勧めします。出展者が用意しておくべき保険としては、「貨物海上保険」(出展品の貨物輸送に関する保険)、「輸送業者貨物賠償責任保険」(日本国内と展示国内における運送保険)、「普通傷害保険」(展示中の事故等の第三者保険)、「PL保険」(試飲・試食品、試供品などから派生する事故の補償)などがあります。こららは、いずれも国内外の損保会社が取り扱っています。

「第7回 展示会活用のための実務知識(その5)─商談の方法、展示会終了後の業務─」へ続く

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