いよいよ出展です。出展が「ゴール」ではなく、「スタート」になるよう現地で行うべきことを紹介します。

展示会がはじまる前(会期前日の搬入日や会期初日の開場前)に、他の出展者のブースを見ておきます。開場後はなかなか時間が確保できません。
近隣のブースでは、どんな人が何を販売しているのかを確認し、練習がてら、自分たちの商品やサービスについても簡単に説明します。
近くに味方にできそうな出展者がいれば、トイレに行く間の店番など、お互いに助けあえるかもしれません。

すべてを通訳まかせにしない

商談の際、商品やサービスについてのひと通りの説明は通訳に任せ、突っ込んだ質問をされた場合にのみ、自分たちの回答を通訳してもらう方法が一般的です。
通訳とは会期がはじまる前によく打ち合わせを行い、商品の特長、ターゲットとしているバイヤー、出展の目的、通訳に期待する役割、商談記録シートの書き方などを事前に説明し、理解してもらっておきましょう。
一方で、バイヤーの反応を詳しく把握したいときは、通訳まかせにせず、直接バイヤーに相対したほうがダイレクトに情報を得ることができます。
そのため、ひと通りの説明(10行程度)と、よくある質問の想定問答を英訳しておき、それを丸暗記して臨むことをおすすめします。

声をかけやすく、商品を見やすく

会期がはじまったら、バイヤーが声をかけやすく、商品を見やすいブースにすることを心がけます。
接客や商品の展示については、賑わっているブースを参考にするほか、小売店の販売員の接客方法や商品陳列方法(VMD)に関する本が出ているので、参考にするとよいでしょう。

ブースには交渉の権限を持つ者を

商談では、自社にとって理想的な取引条件は持ちつつも、譲れるところは譲る、代わりに相手の譲歩も引き出すなど、柔軟な交渉ができるよう、その権限を持つ社長か責任者が対応します。
想定していなかったよい話が出たのに、担当者が判断できず流れてしまったり、簡単な条件変更に即答できなくて破談したり、という残念なことが日本企業ブースでは多いといわれます。
ブースでの商談は、バイヤーごとに記録していきます(ACT 28参照)。基本的な情報に加え、「どんな商品やサービスを探しているのか」「小売店か、ディストリビューターか、代理店か」「どのくらいのネットワークがあるのか」「購買に関するスケジュール感(販売シーズン)」なども聞きます。ここで聞きづらいことは、帰国後のメールではさらに聞きづらくなります。遠慮せずに、必要なことははっきりと尋ねましょう。
商談記録シートには、直接的な商談内容だけでなく、相手の印象なども記録しておきます。通訳にも、商談に立ち会った際に得た情報や感じたことなどを記入してもらいます。

記念撮影をしておく

有望な商談先とは、できれば記念撮影をします。
展示会終了後はメールのやりとりになるので、お互いに顔を覚えているとコミュニケーションが取りやすくなるためです。自社の商品を持って写れば、よいフォローアップツールになります。相手にも企業のロゴ入りパンフや商品カタログを持って写ってもらうとベターです。

有望な先には、会期中から対応する

毎夕、通訳を交えてブース来場者を振り返るとともに、対応を分類します。
対応の分類は、商談記録シートにメモしたランク分けを参考にしながら、たとえば「有望な先」「長い目で関係をつくりたい先」「自社にとって重要ではない先」など優先順位をつけて分けておくと、のちに誰が見てもわかりやすく、その後のアプローチがスムーズです。
商談先の現地国内での知名度や、名刺にある所在地がどういう地域なのかなど、通訳が知っていることを情報収集して追記しておきます。

訪問したい企業には、商談中にアポイントメントをとる

できれば、帰国前に現地で有望な商談先を調査する時間を設けておきましょう。商談中に訪問のアポイントメントをとっておき、展示会終了後に相手企業を訪問したり、店舗をリサーチすることで、より相手を知ることができ、適切な提案ができるようになります。
現地の知り合いやジェトロ事務所などから評判を聞くこともできます。また、次回同じ展示会に出展するならば、展示会の会期中に主催者と交渉しましょう。帰国後に交渉するよりも、有利な位置のブースを獲得できる可能性が高くなります。