出展申し込み後、展示会を最大限に活用するための準備を紹介します。出展成果は準備段階でおよそ決まりますので、このフェイズが「勝負どころ」です。

展示会の主催者は、出展者が装飾等の準備をはじめる時期にあわせて出展者マニュアルを発行します。公式WEBサイトの出展者用ページなどで公開されるので、事前に確認をしておきましょう。マニュアルがまだ公開されていない場合は、前回のものを入手して参考にします。回ごとに指定業者などの入れ替えがあるので、最新のマニュアルが発行されたら必ず確認してください。
マニュアルには、展示のルールや会期中のスケジュールのほか、社名板やバイヤーズ・カタログなどのPR情報の登録手続き、オプション備品の申込方法などが掲載されています。
ジェトロのJapan Pavilionに出展する場合は、ジェトロが出品予定者を事前に集め、登録事項や出品物の輸送方法などについて説明会を行うこともあります。

出展者マニュアルに記載されている主な項目


・展示会の概要、会場説明、会期スケジュール
・ブース施工(build-up)、展示品搬入(move-in)、通電(power supply)の時間帯
・展示品搬出(move-out)、ブース解体撤去(dismantling)の時間帯
・標準小間(shell booth, standard booth, pre-equipped stand)の仕様
・スペース小間(raw space, bare stand, special design booth)の仕様
・出展規則(rules & regulations)
・車両入構や施工業者(independent contractor)の手続き
・指定搬入業者(official freight forwarder)、主催者施工業者(official stand contractor)等のリスト
・入館証(出展者バッジ(exhibitor badge)、施工者バッジ(contractor badge))の入手方法
・バイヤーズ・カタログ(buyer’s catalog, buyer’s guidebook, show guide)の入稿関係
・オプション備品(furniture & equipment)、追加照明、電源等の申込書と期限
・WiFi(注:会場の無料のものは不通のことが多い)

展示会によって記載されている場合のあるもの


・併催イベントやビジネスマッチングの案内
・会場広告の申込書
・展示会場のシャトルバス等の交通案内
・展示会場の耐荷重量(装置系展示会)
・水道設備、冷蔵庫・冷凍庫、ブース内追加清掃の申込書(食品系展示会)

標準小間の標準的装備


・社名板(fascia, signboard, banner)
・展示台、イス、照明(最低限)
・カーペット、電源、ゴミ箱
※出展者マニュアル関連の事項について、会期中の対応は会場内に設置される出展者向けのサービスカウンター(technical service counter)で行われることが多い。
※来場者バッジの種類(プレス、小売、VIP など)は会期中に主催者スタッフに聞くと教えてもらえる。

目標は、目的にあわせて具体的に

出展の目的にあわせ、「ディストリビューターの候補を3社確保する」「新規顧客の候補を20社確保する」「現地市場に詳しいパートナー候補を2名以上見つける」など、目標を立ててから準備に臨みましょう。目標を達成するためには、出展者マニュアルに沿って準備を進めるだけでは不十分です。出展をより効果的なものにするために、積極的な準備を検討してください。

展示会でアピールするための準備

効果的な出展のために、以下のような準備をしておきます。

展示会での商談を増やし、出展効果を上げるための方法は、ブースでのアピールだけではありません。ターゲットとなるバイヤーが誰かわかっている場合は、ブースに来てもらえるよう、前もってアポイントメントをとります。そのために、ターゲットとなるバイヤーを事前に調査して洗い出します。
とくに医療機器や工作機械など、バイヤー側の興味が細分化されている場合には、バイヤーが会期前に訪問ブースを決めていることが多く、事前のアポイントメントをとる段階で勝敗が決まります。現地以外の海外バイヤーや異業界とのコラボレーションなど「見えない」相手との出会いを期待する場合は、ブースのデザインを工夫したり、バイヤーズ・カタログでの広告宣伝、SNSでの発信など、展示会場内での集客に力を入れます。

展示会期間中、ブースには社長か責任者が待機する

すでに海外展開が軌道に乗っている場合を除き、展示会期間中、ブースには社長本人か、交渉権限を持つ責任者が入り感触を直に得る必要があります。
海外のバイヤーは、価格や取引などの条件で交渉してくることが多く、その場で回答を求められます。バイヤーだけでなく、パートナーを探している場合は、さらに高いレベルの判断が必要になるため、社長本人あるいは権限を持つ責任者の対応が求められます。各種の手配や事務作業の担当者は別にいた方がよいでしょう。海外への支払いや旅行手配など、直前時期に多くの業務が集中します。海外ビジネスを新規に構築する場合であれば、熱意と前向きな性格が不可欠です。

現地スタッフの手配は早めに

通訳など現地スタッフの手配も早めに進めましょう。
日本企業が多く出展する展示会では、優秀な通訳者から予約が入っていきます。通訳に何を期待するかにもよりますが、語学が堪能かどうかよりも、現地の同業界での小売・流通の経験があるなど、ビジネスに通じていることを重視して選定した方が商談はうまくいきます。
通訳や現地スタッフに初日から活躍してもらうため、会期の2週間から1週間前には情報(商品の特徴や出展目的、FAQ、用語、ブースでの役割など)を伝えておきます。

出展予算を確認する

出展の予算として大きいものは、展示品自体を除くと出展料、ブースの設計・施工費、資料作成・印刷費、輸送費、旅費です。予算が十分にない場合は、ブースの設計や資料の作成において工夫が必要になります。展示会終了後に現地にとどまって、会期中に感触のよかったバイヤーと再面談することができると効果的です。旅費にはその予算も含めておきます。

出展予算管理シート例

バイヤーが偶然、自社ブースに目を留める確率は低い

会期中賑わっているブースでは、事前の集客をしていることが多いようです。会いたいと狙っているバイヤーが、たまたま自社のブースの前を通りがかって足を止める可能性はかぎりなく低いと考えてください。取引をしたいバイヤーがいる場合は、段階式に招待メールを送り、ブースに来てもらうようにしましょう。

出展時はバイヤーにアポイントメントをとるチャンス

バイヤーは、業界の主要な展示会に足を運ぶ可能性が非常に高いので、アポイントメント取得のハードルは、普段よりも格段に低くなっています。相手企業を訪問するよりも、気軽に立ち寄れる展示会のほうがアポイントメントがとりやすいといえます。
確実に来てもらい商談ができるよう、できるだけ時間指定のアポイントメントにしておきます。WEBを活用すれば、ディストリビューターや代理店、有力な小売業者などはある程度、調べることができます。会いたいバイヤーをあらかじめ調べて声をかけておくことで、後手に回ることを防げます。

招待メールは段階的に何度も出す

1回目:出展の案内、商品紹介
2回目:出展ブースナンバー、入場方法
3回目:来場の返信があったバイヤーへのお礼
招待メールは簡潔かつ淡々と事実を伝えるビジネス文章とすることが基本です。

展示会出展案内メール(参考例)

SNSでの発信

とくに消費財の分野では、SNS で情報を集めるバイヤーが増えています。
SNSでの発信も早めにしておきましょう。
Facebook、Instagram、YouTube、Pinterest、Polyvore、reddit、Vimeo などで会期中も写真や状況をアップし続けて、訪問ブースの候補となるチャンスを増やします。
発信する情報には以下のようにハッシュタグ(#)をつけておきます。
#展示会名 #Japan  #展示会名 #商品名 #商品カテゴリ名  #展示会名 #会社名
バイヤーズ・カタログや広告に掲載する文章も、ハッシュタグでタグ付けできるような単語を意識して入れてください。

ターゲットに訴求することを考える

数百と並ぶ展示会場のブースの中から、ターゲットとなる潜在顧客に自社ブースを見つけてもらうためには、訴求力の高いブースにする必要があります。とはいえ、ターゲット以外の来場者ばかりに商品の説明をしても意味がないので、ただ目立てばよいというものでもありません。ターゲットに訴求できるような工夫をする必要があります。
たとえば、パッと見てすぐに、扱っている商品やその特長がわかるようにしたり、ターゲット顧客の「困りごと」をキーワードで掲示したりするとよいでしょう。展示会で販売パートナーを探しているならば「Distributor / Agent Wanted」などのプレートをつくって目立つところに掲げておくのもおすすめです。

複数の小間を買えば目立つ

展示会では、コの字型をした前面開放スペースに展示台、イス、社名板などを装備したブースを標準小間(shell booth やstandard booth、スタンドとも)として提供していることが多いですが、複数の小間を買ってつなげることで、比較的簡単に来場者の目に触れる可能性を上げることができます。
大手企業は複数の小間を購入して、目立つようデザインしたブースによって存在感を出します。展示会の期間中だけであれば、中小企業も大手企業と同等の存在感を出して張り合うことができます。

目を引くための展示装飾を工夫する

実際には、予算の都合で、1つの標準小間に装飾をして出展することが多くなるかもしれません。不利な条件であることを意識し、工夫を凝らしましょう。ディスプレイについては、消費財の分野では小売店の「棚」をイメージさせる手法が王道です。これはVMD(ビジュアル・マーチャンダイジング)として研究されています。
生産財の分野では、機能や導入効果を強調し、とくに生産現場での課題解決を訴求するとよいでしょう。人間の目に対する見やすさ・わかりやすさのためには、消費財と同様にVMD の考え方が応用できます。
バイヤーは、事前に調べてきたブース以外は、ざっとナナメに見て歩くだけです。「おや?」と思わせるための勝負は一瞬しかないことを意識して展示装飾を考えてください。

設計は、海外の展示会に慣れた業者に依頼する

ブースのデザインは、主催者の選定した施工業者に依頼せざるを得ない場合もありますが、たいていは自分で選んだ業者に依頼することができます。
海外の展示会に慣れた国内の設計業者に設計・施工管理を依頼し、現地の提携先に施工してもらうことになります。
出展者マニュアルには、施工業者を入れる場合の手続きなどについて記載があるので確認しておきましょう。ジェトロのJapan Pavilion に出展する場合は、多くの場合、統一デザインのブースとなっているので、その中の展示装飾の方法のみ検討します。

写真提供:SUPER PENGUIN株式会社

展示会の収穫ともいえる商談記録シート

商談記録シートは、展示会出展の収穫ともいえる重要なものです。事前に様式を検討し、十分な枚数を用意しておきます。商談記録シートには「業界」「興味の対象」「顧客のコメント」など、接客をしながらメモを取り、名刺とセットで管理・保存しておきます。会期後の対応をスムーズにするために、誰が見てもわかるように今後の宿題や対応の優先度もきちんとメモをしておきましょう。

商談想定Q&A を準備し、練習しておく

商談に慣れていないメンバーがブースに立つ場合は、商談のQ&Aを作成し、練習しておきます。お礼メールは会期中に送ることになりますので、あらかじめ文案を用意しておきます。また、商談のフォローアップを管理する方法についてもあらかじめ検討し、関係者間で共有しておきます。

商談記録シートの参考例

たいていの会場では、付近にコンビニなどのお店はありません。
試食用のプラスチックカップなど、日本ではすぐに手に入るものでも、不慣れな土地で用意するのは思いの外たいへんです。さまざまな想定をして準備しておきましょう。
・商談記録シート用のステープラー
・クリップボード、ボールペン、綴じ具
・電気製品用変圧器や延長コード
・コード類・展示物の仮留め用養生テープ
・ポスター掲示用面ファスナー、両面テープ
・緊急掲示物用のコピー用紙/色紙
・油性ペン(撤収時の荷物整理、緊急掲示物用)
・名刺受(貴名受)
・クリアケース、封筒(資料用角2 サイズ)、クリアフォルダー
・カッター、はさみ
・紙袋、台ふきんまたはウエットティッシュ

公開日:2018年 3月 6日

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