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モノ作り大国ドイツ市場攻略の心構え 成功の為には何が必要か?

地域:ドイツ カテゴリ:海外進出ノウハウ
モノ作り大国ドイツ市場攻略の心構え 成功の為には何が必要か?

はじめに

ドイツ連邦共和国はどんな国かー人口約8500万人、国土面積はほぼ日本と同規模の35万7千k㎡、GDP世界第三位、ドイツ語を母語とするオーストリア人、スイス人を含めると1億人のドイツ語圏マーケットの中核です。2026年1月ユーロ通貨導入のブルガリアを含めると約4億5千万人のユーロ通貨マーケットに囲まれた貿易大国がドイツです。潜在市場はかなり大きいといえます。

工業分野でドイツは日本とライバル関係

舶来品が高級品の代名詞であるのと同じように、ドイツ車やリモワのスーツケースなどのドイツ製品は高品質製品と認識され、日本では確固たるステイタスを維持しています。
現在のドイツの前身であるドイツ帝国が成立したのが1871年、明治維新とほぼ同時期に近代国家としてスタートし、第二次大戦では共に三国同盟を結んで枢軸国として戦った歴史、その後の復興など、似通った歴史を持っています。資源に乏しく、原材料を輸入して工業製品を輸出する産業構造も共通です。しかし、自動車を始めとするあらゆる工業製品において、日独はライバル関係にあります。この点はドイツ進出を考えている方はくれぐれも念頭においてください。

日本でも人気のベンツ、ドイツではタクシーにも使われますが、
グレードによってはやはり高級車です。

ドイツでモノを売るために必要なことは何でしょうか?

自社製品販促、新製品紹介などの営業活動は企業活動の中心であることは万国共通の認識ですが、その具体的な行動規範は日本とドイツでは大きく違います。夜討ち、朝駆け、断られてからがホントの営業、アポなし飛び込み営業といった日本における営業のイロハ、常識は全く通用しません。相手の承諾のないDM・架電などのアプローチは商慣習としてNGであり、法的にも禁止されています。無視されることはむしろ相手の好意的対応です。場合によっては、業界団体や警察に通報される事態にもなりかねません。
ではドイツではどうやって新製品や新サービスを紹介したり、顧客を獲得したりしているのでしょうか?
その答えがメッセ(見本市・展示会)です。ドイツ市場における営業活動は、すべてメッセから始まると言っても過言ではありません。出展者から無料券が配布されるケースの多い日米のメッセに対して、多くのメッセ訪問者が自費で入場料を負担してメッセを訪問します。最新の業界動向、現行部品の不満解決の為の代替品探し、ライバル情報収集等、様々な目的達成が可能です。顧客が必要な製品サービスを求めてメッセを訪問する、それに供給側が対応する。メッセ訪問での一期一会がビジネスの始まりです。

メッセを見学してみよう、そして出展しよう

ドイツを始め、世界各国には実に多種多様なメッセが年間を通じて開催されています。まずはリサーチ開始です。JETROのサイトには世界中で開催されるメッセが大変判りやすく紹介されています。自社製品・技術に関連のありそうなメッセが見つかるはずです。業界や国内外のライバル企業をネット検索しても各会社が出展を予定しているメッセを見付けることができます。
その後、見学をしてみておおまかな様子が判ったら、次回開催のメッセへの出展を検討することになります。
ここで前段の、ドイツと日本があらゆる工業製品分野でライバル関係にあるとの話を今一度思い出してください。自社がドイツに売り込もうとしている製品はおそらくすでにドイツにも存在しているはずです。そのドイツ市場に日本から持ってきた製品で顧客を満足させられるのかを、様々な視点で見てみましょう。自社製品で得られる顧客のメリットは何か?ライバル製品とくらべてどうか?品質は?価格は?ドイツ市場に進出する前にこれらの根本の命題を経営陣から担当者まで深く掘り下げてみてください。後述のドイツ進出の例でも、成功までは10年かかるのが平均的です。。これが、私が経営陣も最初から一丸となって参加するべきと考える理由です。メッセにかかった経費をそのメッセの訪問者から発生したビジネス利益で回収することを教えるような指南書がありますが、間違いです。
2~3年目まではさほど変化なく、4~6年と続けていくうちに代理店や顧客が増えていく、そんなイメージです。メッセ出展は、長期的視野に基づく宣伝・広告費用とすべきです。

メッセ会場イメージ

ドイツでは見込みのある来場者にブースでしっかり立ち止まってもらい、次回以降のアポに繋げなくてはなりません。ブースを横切る来場者が、目を止めて製品に興味を示し、何か質問するか、立ち去ってしまうかを決めるのには、6秒かかるというルールがあります。この6秒の勝負にいかにして勝つか、出展を繰り返しながら来場者との兼ね合いを習得していきます。デモ機を作動させるのもこの6秒以内に起動させるのが理想的です。製品を紹介する展示物も、大きめの製品写真と「早い・安い・旨い」といったシンプルなキャッチで十分です。

また、私がよくサポートしている電機・電子部品、産業用機械、自動車関連といった分野での印象ですが、ドイツのメッセ訪問者は、概ねドイツ語圏の人が50%、他50%という割合です。
ドイツ人なら英語はできるだろう、というのが一般的な認識ですが、実際にはドイツ語で対応してほしい来場者も多く、上記で述べた6秒ルールとの関連でドイツ人訪問者が立ち去ってしまう可能性があります。ドイツのメッセにはドイツ語の販促物を用意できるとベストです。

ブース装飾例:
わかりやすく大きな宣材。製品は立ち止まって見やすいレイアウトに配置している。

ブースに展示する商品や備品の荷造りはコンパクトにして運びやすく。

事業展開、メッセ出展の実例

私がサポートしている企業様の活動例をご紹介します。

  1. 独自の技術で特殊なミキサーを製造・販売する株式会社シンキーは、大学・企業の研究開発部門やラボでの用途を中心に採用されており、10年以上にわたりドイツをはじめとする各国のメッセに継続して出展してきました。展示会を軸とした営業活動を通じて現地代理店との関係構築を進め事業基盤を築き、現在ではドイツに現地法人を設立し、事務所兼ショールームの開設を進めています。同社は、現地に根差した継続的な欧州展開を見据え、次のステージへと歩みを進めています。
  2. 人工壁の突起を上る競技、ボルダリングにおいて、日本製設備・用具の評価はとても高いそうです。2025年初めて日本からメッセに出展されたスポーツ用品を扱う企業は、持ち込んだサンプル製品すべてを完売する成功を納めました。
  3. イベントで販売されるロゴ入りTシャツの元になる無地のTシャツを販売するアパレル企業は、コロナ禍以降急速に進んだ円安の恩恵もあり強力な価格競争力を獲得、元から自信のある品質・短納期対応を武器に売り込みに成功されました。

さいごに

大抵の工業製品、産業機械、電子・電機部品はすでにドイツに存在し、新規参入のハードルが高いことを示唆しましたが、成功は不可能ではありません。自社の製品・サービスの強み、差別化点を研ぎ澄まし、長期的視点て取り組み、アイデアと工夫次第で十分に可能性があることをこれらの成功例は教えてくれます。

長期の進出挑戦になっても焦らず腰を据えることが、ドイツ市場攻略の鍵です。ドイツ市場に挑戦される際は、ぜひ中小機構へご相談ください。

海外展開アドバイス支援

筆者紹介

梅沢 雅康 中小機構 中小企業アドバイザー(新市場開拓)

40年に渡るドイツ生活とビジネス経験を生かし、顧客企業の欧州ビジネス展開に際して多肢に渡るサポートをしています。
ドイツではEddieのミドルネームを名乗っていますが、木枯紋次郎と寅さんを尊敬し、皆様から親近感を持ってもらえるよう、ハンドルネームは寅次郎としました。「姓は木枯、名は寅次郎、人呼んで(自称)フランクフルトの寅次郎ー「あっしには関わりがない」とは本物の紋次郎のキメ台詞ですが、みなさんと関わりたいのがフランクフルトの寅次郎、旅に出るのが本物の寅次郎ですが、旅に出たみなさんをお迎えするのがフランクフルトの寅次郎。
ビジネス以外で個人のお客様の要望にもお答えいたします。

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