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EUの富裕層へ向けた日本製品進出可能性調査レポート(イタリア編④-アレッサンドロ・アンフォッソ氏-)

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 みなさんは「富裕層」と聞いて、どのような方が思い浮かぶでしょうか。近年、「当社の製品を海外の富裕層に売りたい!」という中小企業の方々からのご相談が増えてきています。このレポートでは、中小企業の方々が富裕層に向けた海外展開を計画するうえで、そのターゲット像の具体化に資するべく、富裕層と呼ばれる方々のお気に入りのものやライフスタイル、お勧めのショップなどをインタビュー調査し、まとめたものです。みなさんの商品開発やマーケティングのお役に立てれば幸いです。
 なお、このレポートは2018年に執筆されたものであり、現在の状況と異なる可能性があることをご了承ください。

アレッサンドロ・アンフォッソ氏(Ms. Alessandro Anfosso)

プロフィール

氏名:アレッサンドロ・アンフォッソ(Alessandro Anfosso)
年齢:50歳代 男性
職業:オリオ・アンフォッソ社(OLIO ANFOSSO S.A.S) 社長
家族構成:既婚。子供一人(長男)
自宅エリア:リグーリア州インペリア県キウザヴェッキア
職場エリア:リグーリア州インペリア県キウザヴェッキア
住居の間取り:会社の敷地内、テラス部分に建設した470㎡の平屋建て
車所有台数:1台(BMW)
使用する言語:イタリア語

オリーブ栽培2000年の歴史を誇るゾーン育つ、小さな宝物のような希少品種、タッジャスカ。

 イタリアの最西端、フランスとの国境リグーリア州の、リヴィエラ海岸は、温暖な気候を生かして約2000年前からギリシャから伝えられたオリーブの栽培とオイルの生産が盛んでした。その後、西暦600年ごろに、この地方に多く住んでいたベネディクト会の修道士たちが、自生するオリーブの木に品種改良を重ね、造り上げたのがリヴィエラ特産のクルディヴァル(品種)である、世界で最も実の小さなオリーブ、タッジャスカ品種です。
 海沿いの切り立った崖や少し内陸に入った山間部の急斜面といった厳しい環境で暮らしていた修道士たちが工夫をしてしつらえた、石垣仕立ての棚田が延々と連なる海岸線と山肌はこのゾーンの景観の特徴にもなっていますが、中世から全く変わらない、急勾配の斜面での石垣の手入れ、樹の管理から収穫まで一貫して手作業で行わざるを得ない当地のオリーブ産業は、大きな手間と苦労を伴う厳しいものです。
 そのうえ、この極小粒の実からオイルを絞るのは決して効率が良くはないのですが、タッジャスカのオリーブオイルは、世界で最も軽やかな質感を持つオイルともいわれ、黄金の輝くような色合い、夏草やアーティチョーク、生アーモンドを思わせるグリーンで高貴な香りと、薄絹のようなデリケートな食感は他に類を見ないもので、独特の地形や気候、そして先人の英知の賜物といえる、この素晴らしいオイルをかけがえのない財産と考え、私たち生産者は時に相互協力を惜しまずに保持と発展、次世代へのバトンタッチのため努力を続けているのです。

オリーブ畑と搾油所のなかで過ごした幼少時代。17歳で父の会社に入社て営業手腕を発揮

 私の家も、曽祖父の時代から、ここタッジャスカ栽培の懐であるキウザヴェッキアに畑を持ち栽培を行っており、私の父が1945年に自身の搾油所を開設して、アンフォッソ社となりました。オリーブの実を挽く水車の音を子守唄に育った私の幼少、青春の記憶はすべてオリーブ畑と搾油機の間にあったようなもので、父の手伝いをすることは好きでしたし、実は勉強が大嫌いだったこともあり(笑)17歳で高校を中退して父の会社に入社しました。
 人とのコミュニケーションが好きで、周りの大人たちに可愛がられてたので販売を手掛け、父の作る大きなバルクや、ボトルに入ったオイルを軽トラックに積んで近隣のレストランやホテルのキッチン、食料品店に売って歩いたのが始まりです。その後時代の変遷とともに、レストランのテーブルや、ショップなどで使ってもらえるような、洒落たパッケージの卓上瓶を作ることが必須と感じるようになって父に提案し実現、それがジェノバや少し離れたミラノ、トリノといった都市で爆発的に売れたことをきっかけに、1988年栽培と精油を営む会社とは別の販売会社を開きました。

家族の協力と、堅実な設備投資で世界に進出するメーカーへ成長

 96年には普通の乗用車に乗って営業に回り、あとで配達をするシステムを確立し、従業員も入れ少しずつ会社を大きくして行きました。別の職業についていた兄のアルフレードも家に戻って生産の責任者となってくれたこともあり、酸素に触れないコールドプレスが可能な最新式の連続式搾油機を導入したり、料理の得意な母のレシピを参考にした、ジェノバDOPのバジリコを使ったバジルペーストなど、上質な自家製オイルとオリーブの実や地元の野菜を原料にした、加工食品の開発販売などに設備投資したことで、さらに会社の成長に弾みがつきました。今では従業員18名、世界40カ国に輸出ができるほどになっています。

父の巌のような情熱に支えられて

 私の父は93歳になりましたが、いまだに、当社の15ヘクタールに及ぶ農園責任者をつとめ、朝は誰よりも早く起きて急勾配の畑を見て回り石垣や樹の状態をチェックしたり、真冬の収穫の時期は、斜面に網を広げて気の棒でオリーブの枝をたたき実を落とし集めるという昔ながらのブルカータ(収穫)を12名ほどの農夫たちを率先して行っていますよ!上質なオイルを採るには、収穫後7-8時間のうちに搾油しなければならないので、まさに時間との勝負。まるで若者のような情熱で、最高のオリーブを育て、オイルに加工する努力を続ける父には本当に頭が下がります。幸い私たちのオリーブオイルの品質も年々高い評価をいただき、イタリアや海外のガイドブックや品評会で常に最高の賞をいただけるようになりましたが、父にとってはそういうのはどうでもよいのでしょうね!ここのところの気候変動による異常な豪雨や猛暑、雹などから、600年以上の樹齢の古木が立ち並ぶ歴史あるオリーブ園をいかにして護りぬくか、というのが彼の毎日の新しい挑戦、課題なんだと思います。

生活スタイル

自宅では家族との時間優先

 まだまだ、海外市場の開拓が大きな課題なので、出張の数はかなり多いです。年間80フライトほど。だから家にいるときは妻と13歳になる息子のダビデとの時間を、なるべく大切にしています。睡眠時間は6時間くらいで、会社には9時に出勤します。夕方は終業の17時をすぎても遅くまで会社にいる時もありますが、できるだけ息子をサッカーの練習に迎えに行けるように心がけています。

健康管理にオリーブオイルを

 日常の中でジムに居たりスポーツをしたりという時間はなかなか取れないですが、社屋が6000㎡とすごく広いので、事務所と生産施設を何回も往復するだけでかなりのウォーキングにはなっていると思います!スキーは大好きなので、冬の週末に時間が取れるとピエモンテやロンバルディアに滑りに行きます。サプリや薬はまず、使うことがないですね。オリーブオイルは万能薬と聞かされて育ってきて、確かに肌だのお腹だの、ちょっとした問題ならオリーブオイルで何でもよくなりますしね。実は若いころに女の子とデートするのに、自分はすごく髪の毛が多くて恥ずかしいので、ジェルを親にねだったら見事に断られ、仕方がないのでオリーブオイルで整髪してました(笑)それが結構よくてずっと使ってたので、今この歳になってもこれだけふさふさなのかもしれません!

自宅での食事が好きだからこそ、意味のある外食を心がけて

 食生活は、妻も仕事をしているのでランチは営業をかねて外に行って食べることが多いです。夜は妻の料理の腕が素晴らしいので出来るだけ家で食べるようにしています。週末は家族で、お客さんのレストランを訪れることが多いです。日頃のお礼とご挨拶を兼ねた、一種のコミュニケーションですね。大切なことだと思います。あと日本食に目がなくて、日本に行くとまず築地に駆けつけて寿司屋に駆け込んでいたくらいなので、結構頻繁にモンテカルロの和食レストランに行ってます。
 家が広く共働きなので、週に2回、掃除とアイロンがけの家政婦さんをお願いしています。

バカンスは、行先探しから家族で楽しむ

 休暇は8月に10日ほどと、クリスマス、新年に10日ほどです。夏の行先は、家族で話し合って決めます。このソファーで三人で一緒にいろんな場所の写真を検索して盛り上がるのもバカンス並みに楽しいですよね!今年の夏はモーリシャスに行きました。
 家にいる夜はテレビも3人でよく見ます。サッカーの試合とかNetflixの連続ドラマとかも。

住居の印象

才女のセンスが光る、スタイリッシュで美意識に満ちた空間

 アンフォッソ社の周辺は、見渡す限り、青緑色の油絵具で点描したようにオリーブの樹が密生した山の斜面に囲まれている。
 その景観に溶け込むように、キウザヴェッキアの山で切り出され、古くから畑の石垣に使われてきた、コロンビーナと呼ばれる美しい茶色のグラデーションの縞模様が特徴の花崗岩を壁材に使って作られた、全長200m、総面積6000㎡のまるで山の断面そのもののような社屋である。その、テラス部分に同様のコンセプトで天然石で平屋構造で作られた横長のペントハウスがアレッサンドロ社長の自宅である。中に入ると、外のナチュラルな環境とは対照的にまるでそのままAD(Architecture Direct)のような建築雑誌の表紙を飾りそうなハイセンスなリビングが広がっている。カッシーナ、フィリップ・スタルクコレクションのソファー、B&Bのテーブルセット、ル・コルビュジェのシェーズロングといった伝説的な家具の数々から、奥様がデザイン、特注したというスタイリッシュな照明システムなどが、足を踏み入れるのを思わず躊躇してしまうほどの、インテリアが調和と秩序の元に配置されている。キッチンはステンレスと大理石の大きな作業台、シャワーシンク、プロ仕様スチームオーブンや大型冷蔵庫、壁面収納など、確かにシェフ並みの名料理人という奥様が腕を振るうにふさわしい設備だが、調味料の瓶ひとつ、ダスターや洗ったお皿の一つも表に出ていないのが、不思議になってしまう。
 寝室、子供部屋も然り。円形ジャグジーが室内しつらえられたベッドルームや、ファベルジェのアンティーク卵型陶器が芸術的に配された箪笥、純白のウォーキングクローゼット、レトロな色家具を上手に配して楽しさと使いやすさを演出したお勉強スペース…。一見、全く生活臭のしない空間のように見えてしまうのだが、奥様のデボラ曰く「本当に良いものに囲まれて生活するのは、心地よく快適。高い美意識をもって生活すれば、決して秩序は乱れないわ。」とのこと。
 実は、このお宅、設計から内装の全てのプロジェクトを彼女が行ったのだそう。まぎれもない才女である。アレッサンドロ曰く、彼女は「強い意志と愛情を持った僕の人生の演出家。結局僕は、この田舎でオリーブの樹だけを相手に育ってきたようなものだからね。特に海外に出るようになったり、あるレベル以上のお客様を相手にするようになってから、彼女から得る知識や情報、そしてある意味で彼女が作ってくれる自分自身のイメージがいかに貴重なものであるか、身に沁みて感じることが多いよ。彼女のような女性と巡り合えて結婚できたのは本当に幸運だったと思うよ!」 デボラは最近、子供も手がかからなくなってきたということで、“面白そう”なワインの契約販売を始めて素晴らしい販売成績を上げ、瞬く間にキラ星のような有名ワイナリーから次々契約オファーを受ける人気エージェントになってしまったが、家族のために費やす時間を削らなくてはならないような仕事は決して引き受けないのだという。
 自らの美しさや能力をきちんと把握していて、決して出過ぎず、自分の選んだ人生のなかで最大限に生かして愛する人を支え、共に引き立てながら、周りを幸せにする自分色の花を咲かせる術を知っている、本当に賢い女性なのだと実感する。

持ち物を拝見

買い物は本当に納得いくものを数少なく

 あまり家の中に物が出ているのは好きではないので、インテリア小物とかは本当に納得するものしか買いません。日本のもので愛用しているのはYAMAHAのオーディオシステムと、東京でもらった下駄、息子はアベイジングエイプのTシャツがお気に入りです。

買い物について

スタイリングは奥様任せ

 洋服はすべて妻任せです。ミラノ行きつけのセレクトショップがあるので、そこで妻に選んでもらうことが多いです。今までに買った一番高いものは、家、車、旅行、妻に送ったジュエリーでしょうか。

ギフトは家族に

 ギフトを家族以外にすることは、ほとんどないです。海外に行ったときは家族には必ずお土産を買いますが。

情報集め

情報の速発信にSNSを活用

 雑誌も新聞にほとんど読まないです。主な情報源はネットニュース、テレビのニュースでしょうか。SNSはFacebook、インスタグラム、Linkedinを割にまめに使っています。海外でのイベントとか、新店舗導入とか、現地からリアルタイムで情報を発信できるの便利ですよね。

日本文化に対して

これから注目されるのは、食。海外生産者とのコラボも面白そう。

 日本人は優しく、礼儀正しいと同時にとても優れたオーガナイズ能力と、新しいものや、異文化ものものに対する柔軟な好奇心が素晴らしいと思います。これからヨーロッパに進出するとしたらやはり食がキーワードではないでしょうか?日本食を食べる習慣は既にこちらでも定着してきたので、これからはクオリティーです。
 日本で本物を味わった人が増えているので、ビールやお酒にもこだわる層が増えています。日本企業とのコラボですか?そうですね、定番のバジリコやペペロンチーノ、トリュフなどを使ったフレーバーオイルに、日本産の美味しいショウガとかを漬け込んた和風シリーズを加えて、イタリアで販売してみるのも面白いかもしれませんね!

成功者と富裕層の定義

人生における本当の成功、富は家族。

 成功者とは、不変のものを掴んでいる人だと思います。私にとっての宝物は家族。家族がいなければ自分は完全ではないし、家族にはそれぞれ役割があるので、皆がそれぞれ責任を果たして一つになることで、より大きな何かが完成する…。私は決して豊かな家の生まれではないですし、富裕層でもありません。ただ、この家族さえいれば、なんでもできるという気持ちになれる自分は、本当に恵まれた、豊かな人間なのだと思っています。

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