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EUの富裕層へ向けた日本製品進出可能性調査レポート(イタリア編②-サンドロ・ボッテガ氏-)

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 みなさんは「富裕層」と聞いて、どのような方が思い浮かぶでしょうか。近年、「当社の製品を海外の富裕層に売りたい!」という中小企業の方々からのご相談が増えてきています。このレポートでは、中小企業の方々が富裕層に向けた海外展開を計画するうえで、そのターゲット像の具体化に資するべく、富裕層と呼ばれる方々のお気に入りのものやライフスタイル、お勧めのショップなどをインタビュー調査し、まとめたものです。みなさんの商品開発やマーケティングのお役に立てれば幸いです。
 なお、このレポートは2018年に執筆されたものであり、現在の状況と異なる可能性があることをご了承ください。

サンドロ・ボッテガ氏(Mr. Sandro Bottega)

プロフィール

氏名:サンドロ・ボッテガ(Sandro Bottega)
年齢:50歳代
性別:男性
職業:ボッテガ社(BOTTEGA S.p.A)CEO
家族構成:未婚。パートナーと同居
自宅エリア:トレヴィーゾ県、ゴデガ・ディ・サントゥルバーノ市
職場エリア:トレヴィーゾ県、ゴデガ・ディ・サントゥルバーノ市
住居の間取り:自宅は改装中。本人が一日のほとんどの時間を過ごす“自宅”と呼ぶ社屋は生産施設合わせて約12,000㎡の3階建て。
車所有台数:2台(マセラティ、ベンツ)
使用する言語:イタリア語、英語、フランス語、スペイン語

19歳で社長就任

 我が家は祖父の代からワインビジネスには関わっていましたが、父が現在のボッテガ社の前身となるグラッパ工場を1979年に創立して、その後1987年に父が亡くなったのを機に私が19歳でボッテガ社として経営を始めました。
 弟と妹もまだ小さかったし、急に一家を背負うという大きな役割に直面し途方に暮れることもありましたが、とにかく、それまで自分なりに温めてきた、新しい世代に受け入れられるグラッパという伝統酒のあり方を無我夢中で少しずつ形にし、地元のレストランの扉を一軒一軒たたいて説明して手渡しで1本ずつ、売って歩いたのが始まりです。

新しいコンセプトで世界に羽ばたく

 グラッパはここ、ヴェネト州が原産のワインを搾り取った後のぶどうの皮と種“ヴィナッチャ”を蒸留するお酒で、昔から農家が自家製にして冬の作業中に体を温めるお酒として使ったり、どちらかというと品質というよりは、低価格と手軽さで知られてきた土着性の高い飲み物だったのですが、私は、昔から父が飲んでいたような匂いもアルコールも強いグラッパが嫌いで…(笑)それでよく父とぶつかり合ったものですが、ぶどうの香り成分というのは実はほとんどすべて果皮の部分に含まれるので、作り方を改良し新しいコンセプトを与えることで、まさにイタリアらしい素晴らしいハードリカーになりうると確信していたのです。

グラッパをイタリアを代表する食後酒に

 新鮮なヴィナッチャをぶどうの品種別に数回にわたって蒸留し、くせのない、品種ごとの魅力ある香りを引き出し、アルコール度数をグラッパのスタンダード40-50度から38度まで抑え、美しく洗練されたパッケージを与える…といった工夫を凝らすことで、グラッパ自体のイメージを一新。グラッパというお酒に初めて触れる方や若い年齢層、女性にも幅広く受け入れられ、幸い私が最初に立ち上げたブランド、アレキサンダーのグラッパは瞬く間にイタリア全国、そして海外にも“イタリアを代表する食後酒”として市場を広げてきました。

イタリアならではのデザイン、アート、職人技を活かしたパッケージにも注力

 アレキサンダーグラッパが飲み物としてでなく、優れたギフトとして認識され、世界中の空港の免税店やエアラインの定番になっていった理由は、そのパッケージの魅力にもあります。ほど近いヴェネツィアの歴史と文化の象徴でもあるヴェネツィアングラスに、様々なメッセージや事象、自然の創造物を象った細工を施した独自のデザインの自社工房製アートボトルは、食文化と芸術、職人技の結晶として高く評価され、80年代から90年代にかけてニューヨークやマドリッド、ケルンなどで美術展として展示されたほどです。
 私はきちんと美術を勉強したことはないのですが、昔から絵をかいたりデザインをすることが大好きで、アートボトルをはじめ、すべてのパッケージのアイデアは私から生まれ、それを私の長年のパートナーでもあるモニカ・リゼットが作品、製品として実現する、という形をとっています。すべての製品から社屋のデザイン、庭やぶどう園の隅々に至るまで、私たちのインスピレーションから生まれたボッテガ社そのものが、私たちの子供といえるかもしれません。

目指すはフェラーリのような世界に誇るMade in Italyの最高峰

 2000年に入り、イタリアの食文化がますます世界に浸透するに従い、グラッパと同じく地元の伝統的なスプマンテだったプロセッコにも同様に新しいコンセプトの高品質と、洗練されたパッケージを与えることで大きな成功を収めました。とくに、2005年に世界で弊社が初めて製作したゴールドメタリングボトルのボッテガゴールドは、2018年にはトラベルリテイルのカテゴリーで世界第二位の売り上げを誇る、代表的な製品になっています。このゴールドもキボトルも、ヴェネツィアンゴールドと呼ばれる深みのあるゴールド、そして耐久性の高いゴールドカラーを実現するために、わが社にしか実現できない特殊な製法でメタリングを弊社と共同経営の専属工場で行わせています。ヴェネツィアングラスの工房から始まり、メタリング工場、最近ではプロセッコ以外のブルネッロ・ディ・モンタルチーノやアマローネの赤ワインを作るトスカーナやヴェローナ郊外のワイナリーも買い取っており、私の会社が生み出すもの製品は、中身もパッケージもできるだけアウトソーシングなしで、隅々まで自分たちの哲学と技術、心配りの行き渡った自社製となるように努力を続けています。すべての部品に至るまで最高のデザインと技術で自社製造するMade in Italyの最高峰といえるフェラーリのような会社を目指したいですね!

地球を少しでも健康で美しいまま次世代へ…次なる課題はグリーンと社会奉仕。

 モニカと二人で長年力を入れてきたのは、グリーンカンパニーの実現と、チャリティーなどの社会奉仕です。
 自社畑はすべてオーガニック無農薬栽培を行うほか、産業廃棄物やCO2の軽減、リサイクル素材を使った包装資材使用、地下水再利用にによる産業用水の自給自足といった環境への配慮のほか、バイオマスや地熱発電の導入の高く評価され、ボッテガは2015年エネルギーと環境問題に取り組む模範的企業に与えられるGREENERの認証を受けています。
 地球を少しでも、健康で美しいまま次の世代に引き継ぐ努力も私たちの世代の企業家、経営者に課せられた大きな課題と考えています。また、世界各国で乳がん基金のサポート、孤児救済チャリティーなどの取り組みも進めていますが、2011年には福島に捧げるチャリティーボトルの制作、また2年前には広島の美術館3館における、ヴェネツィアングラスの作品で平和の尊さを訴える展示会、Spirit of Peaceの開催など日本でも、様々な活動をさせて頂いています。

生活スタイル

年間220日は出張のヘビーデューティーな日常

 国内から海外まで、年間を通じて多くの出張に出かけます。フライトの数でいうと190回くらいかな?
非常に大変なリズムではありますが、この社屋と同様、ある意味で世界そのものが自分の家と思っているし、人との触れ合いや様々な文化を体感することで得られるものには何物にも代えがたい価値があるので、進んで旅をします。
 普段は朝9時に会社に出て夜は9-10時になることもざらです。日曜日も6時間は仕事をします。

張り詰めた生活の中での健康維持と自分の時間探し

 一番大変なのは時差による睡眠と、外食による食事の管理ですが、どこにいても7-8時間の睡眠を確保し、茹でただけのパスタと野菜と、時々の肉、という決まったメニューだけを食べるように心がけています。家にいるときは、パートナーのモニカがすべてオーガニックの食材で作る野菜や穀物中心の食事です。時々は自分でもつくりますよ!
 常に仕事で張り詰めていますし、フライトのストレスのためか少し血圧が高めなので、弱い薬を一種類飲んでいますがサプリなどは摂りません。健康のために心がけている習慣?やはり”Making love”でしょう(笑)あとはなるべく歩いたり、週末にスキーに行ったり程度ですが、仕事が非常に立て込んでいるので、自分の時間を確保するのは簡単ではありません。

バカンスは一番大切な人と

 休暇は夏に2-3週間、ギリシャ、イタリア、フィジー、ポリネシア、カリブ、モルジブなど毎年場所を変えていきますが、どうしても多少仕事のアポも入れてしまうので、リラックスはしますが完全休養ではないです。冬はとれて1週間、近くの山に毎年決まったシャレーを借りてスキーにいそしみます。
 やはり私の人生で最も大事なのはパートナーであるモニカ。優れたデザイナーであると同時に彼女があらゆる意味で自分を受け入れ理解し、サポートしてくれるので、今日の自分があると考えています。なのでバカンスは少しでも美しい場所と楽しい時間を彼女と共有するための貴重な機会でもあるのです。

住居の印象

成功の証でもある社屋は、アートと歴史自然への愛に満ちたグリーンカンパニー

 歴史的にプロセッコの製法が研究されてきたコネリアーノ市からほど近い、DOCゾーンのビバーノ・ディ・ゴーデガにサンドロ社長が自らの家と称するボッテガの社屋が存在する。700年代世紀に修道院、孤児院などに使われてきた歴史的建造物を、特徴を生かしたまま機能的に改装したメインのヴィラ部分と、蒸留所、ワイナリー、倉庫、生産部門のオフィスを集めた約12,000 平米の新社屋からなり、周囲は10ヘクタールのオーガニックぶどう畑が広がっている。
 オリジナルの石壁と、白木、ガラスを基調にしたスタイリッシュなメイン社屋には、広大なボタニカル庭園、旧家屋ならではの石の炉を残したテイスティングルームや、歴代デザインのアートボトルを一堂に展示したミュージアム、そして2kmの距離にはヴェネツィアングラスの自社工房も備えているという、ワイナリーという観念を遥かに凌駕した内容で訪れるものを魅了する。

持ち物を拝見

日常生活の中で愛用する、日本製品のミニマルデザインと高品質

 デザインに興味があるので、世界を旅行する中で気になるものがあるとつい買ってしまいます。日本のものとしては、これまでに友人やお客様から頂いた食器類、箸、掛け軸、浮世絵などたくさん自宅にあり、ミニマルなデザインが気に入って実際に使っているものもあります。日本で自分で購入して特に頻繁に使っているのは、プレゼンテーションの時に使うミニスピーカーや、デジタルカメラです。やはり性能と耐久性が秀逸ですね!

買い物について

Duty Freeを活用する、まさに旅人流

 日常まず買い物をするという時間は見つけにくいので、洋服などは旅先のDuty Freeショップで調達することが多いです。好きなブランドはアルマーニ、ヴァレンティ―ノですが、スーツだけは昔から行きつけの近所のテーラーで誂えてもらっています。
 友人へのプレゼントは、やはり自分の造るワインを送ることが多いですが、家族には香水や、化粧品、チョコレート、アクセサリーなどをお祝いやクリスマスなどに送ります。やはりこれらもDuty Freeで買い求めることが多いですが….

お金は、心に響く特別なもののためにつかいたい

 今まで個人的に買った一番高価なものはやはり、メルセデス、マセラーティといった車でしょうか。これも安全に早く移動する手段なので、あまり贅沢という意識はないです。あまり時間もないですし、自分のためにいろいろ買い求めたりという機会は少ないです。
 食料品、日常品はすべてモニカが近隣のオーガニックスーパーで買い求めていますが、二人で出かけるときにその土地の名産の食材一緒に試食したり買い求めたり、というのは楽しいですよね!

情報集め

時間不足で媒体に触れる機会が少なく、旅を通じての生情報が中心

 新聞は経済紙と地方紙にはなるべく目を通しますが、テレビは日曜の夜に少し見るくらいでサッカー中継などにも興味ないです。ラジオも車の中ではずっと電話しているので聞く機会がありませし、雑誌は、やはりビジネス関係とワイン業界誌を時々情報収集のために読むくらいです。SNSは個人アカウントも持ってはいますが、時間がないので使うことはまずないですね。もちろん会社のマーケティング部が発信するソーシャルの内容には目を通しますが。
 最も得る機会が多いのは出張先で会う人たちとの話し合い、見聞するものから得る生きた情報です。

日本文化に対して

日本は世界一美しい国。日本製品の海外進出には行先のメンタリティーと、生活スタイルに合わせた柔軟なアレンジを

 日本は世界で最も美しい国だと心から思います。最先端の東京から、自然や伝統豊かな地方都市まで、どこに行っても秩序と礼儀、調和を感じられて、人々の根底にある素晴らしい教育を常に感じます。日本食、日本のビールも大好きですよ!
 海外に進出されたい日本の皆さんのへのメッセージは”Be flexible – 柔軟であること“ もし日本製品をこちらで売るとしたら、イタリアという国と国民性、文化に合わせてアレンジを重ねることが大事です。
 例えば、日本では機能性の高さを重んじてデザインや外見に比較的注意を払わないという傾向があると思いますが、ヨーロッパは真逆で、いくら便利で性能が良くてもスタイル感の感じられないものを受け入れない人が多かったりします。もちろん、すでに始まっている流れとは思うのですが、日本ならではの性能、機能性とジャパンデザインの良さを備えながらも、こちらの居住空間や生活習慣にに溶け込みやすいような形状、ヴィジュアルを研究することは大事だと思います。

成功者と富裕層の定義

成功とは信じたことを楽しみながら実現できること

 成功者とは、自分の人生で信じたことを実現、達成して同時に楽しんでいる人のこと。有名になることも成功の一つですが、リスクや代償も多く必ずしも幸せにはなれません。富裕層というのは、お金を追ったり追いかけられたりするのではなく、お金との距離感を知っている人たちだと思います。

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