スイス

EUの富裕層へ向けた日本製品進出可能性調査レポート(スイス編④-井澤フッシンガー明子氏-)

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 みなさんは「富裕層」と聞いて、どのような方が思い浮かぶでしょうか。近年、「当社の製品を海外の富裕層に売りたい!」という中小企業の方々からのご相談が増えてきています。このレポートでは、中小企業の方々が富裕層に向けた海外展開を計画するうえで、そのターゲット像の具体化に資するべく、富裕層と呼ばれる方々のお気に入りのものやライフスタイル、お勧めのショップなどをインタビュー調査し、まとめたものです。みなさんの商品開発やマーケティングのお役に立てれば幸いです。
 なお、このレポートは2018年に執筆されたものであり、現在の状況と異なる可能性があることをご了承ください。

井澤フッシンガー明子氏(Ms. Akiko Izawa Füssinger)

プロフィール

氏名:井澤フッシンガー明子(Akiko Izawa Füssinger)
年齢:40歳代
職業:主婦
家族構成:夫、子ども2人
自宅エリア:チューリッヒ近郊
職場エリア:なし
住居の間取り:一戸建て所有、4LDK
車所有台数:1台、BMW
使用する言語:ドイツ語、英語、フランス語

国際的な環境で育ち、フライトアテンダントに

 出身は日本の神奈川県です。祖父は、1960年代に金沢市とニューヨーク州バッファロー市の姉妹都市提携に貢献した人物。引退後は、世界各地を旅して過ごしていました。その影響もあって、私も幼い頃から母と一緒に旅行に出かけたり、アメリカでホームステイをする機会に恵まれたりと、外国に行く機会が多かったですね。
 日本を離れたのは、高校生のときです。アメリカのボーディングスクール(寄宿学校)に通った後、パリの大学で美術史を学びました。卒業後は、外資系航空会社のフライトアテンダントとして、シンガポールをベースに、3年間世界中を飛び回る生活を送っていました。

美術への興味が高じてクリスティーズへ

 フライトアテンダント時代にインテリアやファッション、アートへの関心が高まり、本格的に勉強しようと思い立って、競売会社クリスティーズの大学院へ進学。ニューヨークとロンドンで、オークションの流れや美術品の知識を身に付け、修士号を取得しました。実際にクリスティーズでも働いていたんですよ。個人的にアートのコレクションを始めたのも、この頃です。
 金融コンサルタントであるオーストリア人の夫とは、イギリスで出会って結婚しました。スイスに移住したのは、2010年。夫の仕事の関係です。現在は双子の子どもたちと一緒に、家族4人で暮らしています。主婦の傍ら、自ら立ち上げたオンラインショップ「クラシック・スタイル(www.theclassicstyle.com)」で、エルメスやシャネルのヴィンテージハンドバッグを販売しています。

生活スタイル

子どものスケジュールに合わせた生活

 普段は、9割がた「子ども中心」の生活。家事をしたり、子どもたちを習い事へ車で送り迎えしたりしていると、1日があっという間に過ぎていきます。食事は、毎日手作りが基本。野菜や果物をできるだけ多く摂るメニューを心がけています。和食を始め、イタリアン、フレンチ、アメリカンなど、何でも作りますよ。
 趣味は運動で、週2回、ジムでトレーニングしたり、サウナに行ったり。睡眠時間は、8時間くらいでしょうか。起床後は毎朝アプリで聖書の言葉を読み、祈りを捧げています。「神様」は私の人生にとって、とても大切な存在。元々カトリックの学校に通っていたんですが、子どもを産んでから、さらにその思いが増しました。家族を始め、すべての人々への感謝の気持ちを忘れずに、毎日を過ごしたいと思っています。

現在の交友関係は、インターナショナルなママ友

 子どもを産む前は、大学や仕事関係で知り合った友人たちと付き合っていました。とてもインターナショナルで、みんな世界各地に散らばっています。
 今は、子どもを通じて出会ったママ友や、家族との付き合いが増えました。とはいえ、スイスは移民が多い国なので、スイス人に限らず様々な国の人がいますし、日本人のママ友もいますよ。偶然、大学時代の友人2人が、近所に家族で住んでいるので、彼女たちとのつながりも大事にしています。

毎年必ず、実家のある日本とオーストリアへ帰省

 休暇は、子どもたちの学校のスケジュールに合わせています。地元の幼稚園に通っているので、夏休みは5週間。1年で一番長い休みなので、日本へ一時帰国することが多いですね。家族や友人たちと会ったり、スイスにはないテーマパークに遊びに行ったりしています。
 クリスマスの時期は、毎年夫の実家があるオーストリアへ向かいます。スイス国境に近い地域なので、普段も月1~2回程度、訪問しています。

寒い時期には、暖かいビーチで過ごすのが定番

 また、「スポーツ休暇(Sportferien)」という名前で、2月に2週間の休みがあります。スイスは一番寒い時期なので、山の別荘に滞在してスキーやスノーボードをするファミリーが多いですが、私たちは寒さから逃れて、タイやグアムなどの暖かい国に行くこともあります。子ども向けのアクティビティやデイケアがついたホテルに滞在し、プールで遊んだりして過ごしています。
 春休み(4月に2週間)や秋休み(10月に2週間)には、飛行機で1時間半ほどの距離にあるスペインのマヨルカ島へ。別荘はありませんが、いつも同じ4つ星ホテルに宿泊しています。ここでも、子どもと水遊びが、定番の過ごし方ですね。

住居の印象

チューリッヒ近郊に、一戸建てを所有

 自宅は、チューリッヒ湖畔の町にある一戸建て。価格は、東京の中心部と同じくらいだと思います。チューリッヒにアクセスがよく、最寄り駅からも徒歩圏内で、買い物に便利な場所です。
 家の間取りは、1階にキッチン&ダイニングとゲストルーム、2階に寝室と子供部屋、3階にリビングルームといった感じ。庭にはブドウとイチジクの木があるので、実がなる時期には、子どもや夫のお弁当にデザートとして入れたり、ジャムを作ったりすることもありますよ。

インテリアは、世界各地で収集したアンティーク

 家具は、アンティークです。子どもが産まれる前はインテリアに凝っていたので、ベルリンやチューリッヒ旧市街のショップやアンティークマーケットを巡って集めていたんです。オンラインのオークションも利用していました。でも今は、「ホーム24(home24)」というオンライン家具ショップで、リーズナブルなものも買っています。
 私たち夫婦の出身国である、日本の浮世絵とオーストリアのエッチング作品も飾っています。将来、子どもたちが、私たちのルーツや自分たちのアイデンティティを知る手がかりになると思って。それぞれ、私と夫の生まれ育った場所の200年前の風景画なんですよ。

調理に使う電化製品や食材の多くは、日本製

 所有している電化製品は、掃除機を除き、ほとんどが日本製です。パナソニックの炊飯器が、代表的なもの。お米がおいしく炊けると感じますし、炊飯後2~3日たっても色が変わらないのは、やはり日本製だからでしょうか。あと、サンヨーのオーブントースターも日常の調理には欠かせません。ピザや魚、チキンナゲットなど何でも焼けますし、丈夫で使いやすいですね。
 家に置いてある日本食材といえば、日本米(新潟の魚沼産コシヒカリ)です。私たち家族は、日本の家庭と同じくらい頻繁に、お米を食べているんですよ。夫も大好きなので、日本に帰国するたびに、持ち帰っています。よく使う調味料は、キッコーマンの醤油、ミツカンのすし酢、タカラの料理酒、中華の素といったあたり。チューリッヒの日本食材店で購入しています。

持ち物を拝見

パリで買った19世紀のシャンデリア

 リビングの照明は、シャンデリアです。2011年に、パリの蚤の市で手に入れました。1990年代にパリに住んでいた頃から、この形の照明のオリジナルが欲しいと思っていたんです。約200年前のハンドメイドのものなので、工場の大量生産品にはない、人の手の温もりが感じられます。
 費用は修理代を含めて、30万円くらいしたでしょうか。アンティークを扱っている者の視点からすると、今後値段が落ちることはなく、世界中どこでも、これ以上で売れる価値のある作品だと思います。将来的には、子どもたちに譲りたいと考えています。

リビングを飾るのは、日本の現代美術

 同じくリビングに飾っているのが、1979年生まれの若手現代美術家、鎌谷徹太郎氏の絵画(2014年)です。こちらは、日本人の現代美術商から購入しました。現在は、購入した当時よりもさらに価値が上がっているようです。
 気に入っているポイントは、着物の色使いのようで、部屋の雰囲気が明るくなるところ。チューリッヒの冬はどんよりと曇っていることが多く、ほとんど日が差さないですから、この絵から元気をもらっているんです。自宅を訪れるヨーロッパの友人たちからも、評判が高い作品です。

大掛かりな江戸末期の屏風も

 こちらの江戸末期の屏風も、リビングに飾っています。本当は床に置きたいところですが、子ども達がまだ小さいため、手の届かない高い場所に移動してあります。「ヤフオク!」で発見し、売り主に電話して骨董商であるのを確かめてから、購入しました。
 日本の情緒あふれる品ですので、欧米の友人たちはみな「素敵ね」と褒めてくれますよ。

買い物について

食料品は、地元スーパーや日本食材店で

 普段の食料品などの買い出しは、地元のスーパーマーケット「ミグロ(Migros)」で。セール品を見て、日々の献立を考えています。
 日本食材は、チューリッヒにある日本食材店「西(Nishi Japan Shop)」や、韓国・日本食材店「ユミハナ(Yumi Hana)」で買いますね。よく購入するのは、アンパンやメロンパン、醤油、めんつゆ、料理酒、蕎麦やうどんなどの乾麺。子どもたちのおやつには健康面を考えて、米粉で安心なおせんべいを選ぶこともあります。

日本のオンラインショップも頻繁に利用

 海外在住ですので、日本のものを購入するには、オンラインショッピングが欠かせません。よく覗いているのは、アマゾンや楽天のオンラインショップ。子どもの洋服などを見ています。普段使いには、ヨーロッパのユニクロ的なブランド「C&A」の服も買いますが、日本のブランドの方がデザインもかわいいし、品質も優れていると感じるんです。
 自分の洋服も、オンラインショッピングで買うことが多いですね。スイスで売っている洋服は色合いが好ましくないです。最近購入したものの8割は、「ダイアン・フォン・ファステンバーグ(Diane von Furstenberg)」というブランド。素敵な柄がたくさんあり、皺にならず汚れが目立たない素材であるのもいいところ。昔のデザインの中古品を買っているため、予算は5,000~1万5千円くらいです。

日本製品は、お土産としても好評

 ちょっとしたプレゼントとして、日本のものをあげることもありますよ。日本から持ち帰ったもので、こちらの人に「それいいね!」と言われたものも結構あるんです。例えば、持ち運びできて、旅行でも使えるタイプのヘアアイロンは、スイスではなかなか手に入らないので重宝します。
 また、日本の美容商品は、こちらの女性にも人気。スイスだけでなく、イタリア人やアメリカ人の女性にも好評なのは、BBルースパウダー。日本では1,000円くらいのお手頃価格で買えるので、お土産として友人たちに配ったりもしています。ヘアケア製品では、日本の椿油やハホニコ十六油が人気です。

プレゼントには、ちょっと高級な品物を

 親しい友人の誕生日には、他の友人たちと一緒に集まり、レストランでご馳走する形が多いですね。誕生日パーティーに招待されたら、ちょっと高級なキャンドルや商品券などを。夫はワインを持参します。夫の友人の奥様へは、「自分では買わないけれど、もらったら嬉しいもの」を考えて、香水やボディローションなどを選ぶことも。チューリッヒの高級デパート「イェルモリ(Jelmoli)」で探すことが多いですね。
 最近で一番高い買い物はというと、私の場合は「寄付」です。毎月の収入の1割を、キリスト教会に寄付しているんです。夫の場合は、私にくれたシャネルのバッグ(約14万円)や、自身がファンのサッカークラブ・チェルシーの年間パス(約8万円)といった感じです。

情報集め

日経オンラインとグーグルが日常の情報ツール

 毎日、朝・昼・晩と欠かさず、日本経済新聞の電子版をチェックしています。世界のトレンドやビジネスチャンスがどこにあるかを知るためです。その他のニュースに関しては、グーグルニュースでトップに来るものを英語で読んでいます。
 テレビはほとんど見ませんね。子ども向けには「ネットフリックス(Netflix)」でアニメなどの番組を視聴することが多く、個人的にドキュメンタリー番組は好きで見ています。

SNSはフェイスブック、仕事ではウェブサイトも

 SNSではワッツアップ、フェイスブックを利用し、世界中の友人たちと繋がっています。インスタグラムのアカウントは持っていません。ビジネスでは、Twitterを使っていたことがあり、個人でやっているハンドバッグ販売事業のウェブサイトもあります。
 この仕事は、2009年にロンドンのクリスティーズと提携して始めました。その後自分のショップを「イーベイ(eBay)」に開き、今では世界約20カ国に顧客がいます。アメリカ、香港、シンガポール、オーストラリアの中国系やユダヤ系のお客様が多いですね。

日本文化に対して

遠く離れていても大好き、デザインと質は世界一

 日本を離れて30年以上たちますが、「日本が好き」という気持ちに変わりはありません。むしろ、海外に出たことで、かえって日本の良さに気づけたのだと思います。日本人は「平静で落ち着いている」というイメージがありますし、責任感が強いですよね。街中や道なども清潔なところが多いですし、満員電車や人がたくさんいる場所でも安心していられるのは、海外の都市にはない安全さだと思います。
 また、日本製品のデザインと質は世界に誇れるレベルだと感じますし、何よりサービスがきめ細やかで素晴らしいと、日本に帰るたびに思います。

スイスは昔の日本の良さがあり、住みやすい国

 スイス人の国民性は、日本人の持つ「律儀さ」と、ヨーロッパ人が持つ「人生を楽しむ生き方」がどちらもあり、ちょうどよくバランスが取れている感じがします。「信頼できる」という点もありますね。スイスは都市も田舎も美しく、どこに行っても安全で、公共交通機関が整っており、古き良き日本のようにも感じます。
 また、「ヨーロッパのシンガポール」と呼ばれるように、法人税が安い国であるため、世界の大企業の欧州本社が数多くあります。法人を持っているだけなら、ほとんどお金がかからないため、個人で法人を持っている人たちも多くいます。働く人の賃金も高めに設定されているため、人の心もお財布も、豊かなのかもしれませんね。

成功者、富裕層の定義

強い精神力がカギ、大事なのは中身

 何を持って「成功」とするかにもよりますが、成功者には、精神力が強い人が多いのではないでしょうか。どんなにお金を持っていても、大事なのは人間の中身であり、「自分が幸せであるかどうか」だと思います。富裕層かそうでないかは、家の大きさであったり、休暇の過ごし方に差が現れてくるのではないかと思います。

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