スイス

EUの富裕層へ向けた日本製品進出可能性調査レポート(スイス編②-ピーター・コンラッド氏-)

Google+ Pinterest LinkedIn Tumblr

ピーター氏の御用達~レストラン&バー・デビルズ・プレイス(Devil’s Place)

店名:デビルズ・プレイス(Devil’s Place)
業種:外食業(バー)
所在地:Via Dim Lej 6, CH-7500, St.Moritz
電話番号:+41 (0)81 836 6000
営業時間:毎日0:30まで
定休日:なし
ウェブサイト:http://www.waldhaus-am-see.ch/en-us/Whisky-Wine/Whisky-Bar(英語、ドイツ語)
取材対応者:バーテンダー、ジャンニ・アンメ(Gianni Amme)さん
商品名(値札)等の言語:ドイツ語、英語

インプレッション(印象)

サンモリッツ湖の絶景が楽しめる、高級ホテル内のバー

 スイスのみならず、世界的に有名な保養地サンモリッツ。冬に凍結するサンモリッツ湖を舞台に繰り広げられる「ホワイトターフ(雪上競馬大会)」は、110年以上の歴史があるイベントで、世界各地の富裕層が観戦に訪れます。そんな湖を眼下に眺める高台に、3つ星ホテル「ヴァルトハウス・アム・ゼー(Waldhaus am See)」が建っています。
 ホテルのレセプションを通り過ぎると、レストランの手前にバーがあります。ウイスキーに関しては別に部屋が設けられており、ガラスケースの中には、世界各地から集められたボトルが並んでいます。スコットランド産のシングルモルトウイスキーを始め、スウェーデンや台湾といった珍しい国のものもあり、まるで博物館のよう。軽井沢ウイスキーなどの日本産のボトルが入口付近にディスプレイされています。

お店の概要

前ホテルオーナーは、こだわりのコレクター

 このウイスキーバーの創業は、1994年。前ホテルオーナーのクラウディオ・ベルナスコーニ(Claudio Bernasconi)氏が、個人的に集めたウイスキーコレクションを元にオープンしました。「デビルズ・プレイス」という名前は、中世において、ウイスキーが「悪魔の飲み物(devil’s drink)」と呼ばれていたことに由来。
 クラウディオさんは、ウイスキー以外にも、ワインやLPも収集するコレクター。ワインはホテルで提供しているリストにあるだけでも1,300本以上。地下のワインセラーには、なんと2万5千本ものワインが眠っているのだとか。そのコレクションのクオリティの高さは、たびたび表彰されているほどです。

インドでウイスキーに目覚め、収集を開始

 クラウディオさんは、ホテル学校を卒業した後、世界旅行に出発。旅の途上のインドにて、衛生上の観点から「歯磨きの際は、水ではなくウイスキーで口をすすぐと良い」と教わったのだそう。そのうちに、ウイスキー自体の味わいに目覚めていったのだといいます。
 ホテル「ヴァルトハウス・アム・ゼー」を開業した後も、顧客を通じて、個人的にウイスキーを集めていました。あるとき、8,000本以上のウイスキーを所有するというイタリア在住の収集家の話を耳にし、「自分は世界一のコレクターにはなれないかもしれないが、世界一の規模のウイスキーバーなら実現できるかもしれない」と思ったのだそうです。

ギネス記録を持つ、世界一のウイスキーバーに

 そして1994年、クラウディオさん自身が所有する500本のボトルをもとに、念願のウイスキーバーをオープン。現在の本数は、なんと2,500本。世界で最も多くのウイスキーコレクションを持つバーとして、ギネスブックにも掲載。様々な国から、ウイスキー愛好家が訪れるメッカとなっています。
 現在は、オンラインショップでもウイスキーを販売するほか、レストランやバーテンダー向けのトレーニングも行うなど、事業の幅も広がっています。

品揃え

売れ筋はスコッチ、日本産やスイス産も人気

 バーでは、スコットランドのシングルモルトウイスキーを中心に、ブレンデッドウイスキー、アイルランドのウイスキーやバーボンなど、世界中から集めたボトルが用意されています。また、特に貴重なものに関しては、別の場所に保管してあり、客の要望に応じて提供します。
 売れ筋は、やはりスコッチ。アイルランドや日本のものも、とても人気があります。また、海外からやってくる客の中には、「スイス産のウイスキーを試してみたい」という人も多いそう。

ホテルの客向けに、価格帯は幅広く

 1グラス(2センチリットル)の価格帯は、リーズナブルなものだと5.50フラン(約600円)から、高いものだと660フラン(約7万2千円)ほど。ウイスキー初心者から、こだわりのファンまで、どちらにも対応できる幅広い価格設定となっています。
 試飲コースとしては、ウイスキー4種45フラン(約5,000円)、5種65フラン(約7,000円)、6種90フラン(約1万円)が用意されています。また、「世界のウイスキー」と題して、アメリカ、スコットランド、アイルランド、日本の4カ国のウイスキーを楽しめるコース(50フラン、約5,500円)や、スイス産ウイスキー3種のコース(35フラン、約3,800円)もあります。

日本のウイスキーは、現在ブーム

 日本のウイスキーリストは、現在33本。ジャンニさんによれば、「いま流行っている」のだそう。「サントリーの『山崎18年』が国際的な品評会で受賞した後、こちらでも、日本産ウイスキーの人気が高まりました。以前はそれほどストックがなかったのですが、今は真剣に集めていますよ」とのこと。
 その人気ぶりを反映してか、日本のウイスキーの価格は高騰。中には、スコッチより高いものもあります。
 例えば、軽井沢シングルモルトウイスキー(1984年製造)の1グラスの価格は、なんと350フラン(約4万円)。1本の価値は、100万円を超えるとか。また、シングルカスク宮城峡(1989年製造、シェリー樽)も、1グラスで220フラン(約2万4千円)と高価であるにも関わらず、よく飲まれているといいます。

クオリティの高い、限定ボトルを求めて

 買い付けの流れとしては、まず時間をかけて、インターネットでリサーチすることから始まります。オンラインで購入することもありますが、スコットランドなどの産地を実際に訪れたり、展示会に足を運んだりと、新商品のチェックも怠りません。
 また、コレクターとのつながりも大事にしています。日本産ウイスキーに関しては、ジャンニさんの友人が膨大なコレクションを持っていることから、彼を通じて手に入れることもあるそうです。
 選定基準としては、「まずオリジナルであること、それからエイジステートメント(年数表記)があること。カスクストレングス(樽から加水せずに瓶詰めされたもの)であれば、さらにいいですね。1,000本以下の限定ものであれば、パーフェクトです」。

顧客

ビギナーから専門家まで、幅広い客層

 ホテル併設のバーということもあり、様々な顧客が訪れます。「カウボーイハットをかぶったアメリカ人や、へビーメタル愛好家が来るかと思えば、『ウイスキーを飲むのは初めて』というファミリーもやってくる」。夕食後の時間帯が、一番混み合います。
 日本人の年配の男性グループ客が訪れた際、「彼らが軽井沢ウイスキーを初めて見たときの、目の輝きが忘れられません。とても楽しい時間を過ごしました」とジャンニさん。
 地元の常連も多くおり、近隣のサメ-ダンに住む金融コンサルタントのピーター・コンラッド氏も、その1人。ホテルのレストランで食事をする際に、このウイスキーバーに立ち寄ることもあるといいます。世界一のコレクションであるということと、ジャンニさんを始めとするホテル関係者のプロフェッショナルな姿勢に感銘を受けているそうです。

アジアの新興富裕層もやってくる

 現在は、新興富裕層である中国人やインド人の観光客も多く訪れる同店。2017年には、アジア圏からやってきた、ある若い富裕層の男性の行動が、世界の注目を集めました。
 彼は、このバーで1878年製造の未開封のマッカランをオーダー。2センチリットルに、なんと9,999フラン(約110万円)を支払ったのです。しかしその後、ボトルのラベルが偽物であったことが判明したため、オーナーが彼の出身国を訪問し、全額を返金したという後日談も報道されました。
 現在でもこのバーでは、戒めのために、このボトルと新聞記事がディスプレイされています。

宣伝方法

口コミ、オンラインショップでも販売

 広告は出しておらず、宣伝のメインは口コミ。ホテルのウェブサイト(ドイツ語、英語)内にウイスキーバーのページがあり、概要を紹介しています。
 また、オンラインショップ「ワールド・オブ・ウイスキー(World of Whisky)」では、世界中から選りすぐったウイスキーボトルを販売中。フェイスブックのアカウントもあります。
 「あとは、ホテル内で発行している情報誌くらいでしょうか。ウイスキー愛好家の輪は狭いので、お互いによく知っていますよ」(ジャンニさん)

日本産の品物

バーでは33本、1グラス650円~4万円

 前述したように、日本のウイスキーは33本用意しています。その半数以上が、宮城峡や余市など、ニッカウヰスキー関連ですが、サントリーの山崎や白州もあります。
 また、江井ヶ嶋酒造のシングルモルトウイスキー「あかし」、秩父のベンチャーウイスキーによる「イチローズモルト」、中国醸造の「戸河内」など、大手ブランド以外の品物もラインナップに含まれています。
 最も安いのは、ニッカのブレンデッドウイスキーで、1グラス6フラン(約650円)。次に安価なのは、同社のオールモルトウィスキーで6.50フラン(約700円)。最も高いのは、前述の軽井沢シングルモルトウイスキーで1グラス約4万円となっており、プレミア価格です。

オンラインでは21本、貴重な軽井沢能シリーズも

 オンラインショップでも、日本のウイスキー21本を販売中。銘柄は、山崎、ニッカ、軽井沢、戸河内、倉吉、ホワイトオークなどです。
 価格帯は最も安いもので1本43フラン(約4,700円、ニッカオールモルト)、最も高いものでなんと1本8,555フラン(約94万円、軽井沢能1976年製造)。こちらは、世界のコレクター垂涎の品物といえるでしょう。

日本文化や特記すべき自国・外国文化へのコメント

日本とスイスは、仕事に対する真剣さが同じ

 これまでに、日本企業から直接の売り込みはなかったと語るジャンニさん。しかし、ウイスキーを通して、日本についてはポジティブなイメージを持っているようです。
 「日本人はとても真面目で、勤勉というイメージがあります。どんなときでも、仕事を完璧に仕上げようとする。ウイスキーからも、仕事に対する情熱を感じます」(ジャンニさん)。
 そうした面はスイス人の国民性とも共通しており、ほかにも「尊敬を持って人と接する」「伝統を重んじる」といった点が似ているのではないか、と話していました。

1970~80年代のシングルカスクに興味あり

 ジャンニさんは、2021年に日本の蒸留所などを訪問する予定で、1970~80年代のヴィンテージ、シングルカスクのウイスキーを探すのが、主な目的です。
 日本産ウイスキーは品薄で、入手困難なことが多い。「特にこの年代のウイスキーは素晴らしい味わいであり、値段も高騰しているので、どうしても手に入れたい」と意気込んでいます。
 日本のウイスキー醸造所に対しては、「エイジステートメントのあるシングルモルトウイスキーを、もっと生産してもらいたい。シングルカスクも、もっとスイスで紹介していきたいですね。いつも素晴らしい仕事をありがとうございます」とメッセージを送っていました。

1 2 3 4

中小機構 ロゴ