スイス

EUの富裕層へ向けた日本製品進出可能性調査レポート(スイス編②-ピーター・コンラッド氏-)

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ピーター氏の御用達~レストラン&チョコレートショップ・ジャノッティズ(Gianottis)

店名:ジャノッティズ(Gianottis)
業種:小売業(製菓)、飲食業(カフェ・ワインバー・グリル)
所在地:Via Maistra 140, CH-7504, Pontresina
電話番号:+41 (0)81 842 7090
営業時間:菓子店:月~金7:30~12:00、14:00~18:30、土日7:30~12:00、14:00~17:00、レストラン:月~日9:00~1:00
定休日:月、火曜日(※4、6、11月のみ)
ウェブサイト:https://www.gianottis.ch(ドイツ語)
取材対応者:オーナー、ロマン・クリング(Roman Kling)氏
商品名(値札)等の言語:ドイツ語

インプレッション(印象)

スイスの山岳リゾートにある、高級チョコレートショップ

 スイスを代表する観光列車「ベルニナ急行(Bernina Express)」が通る、ポントレジーナ(標高1,805m)。近隣のサンモリッツと比べると世界的な知名度はそれほど高くはありませんが、地元スイスでは、山岳リゾートとして根強い人気を誇っています。この村で、菓子店とレストランを長年営んでいるのが、「ジャノッティズ」です。
 お昼どきには、山小屋風でありながらモダンなレストラン「ヴィルデライ(Wilderei)」で、様々なグループ客が、サラダやキッシュ、チーズやミートプレートなどを楽しむ姿が見られます。一方、菓子店の内装はダークでシック。ガラス玉のように色鮮やかに並ぶプラリネや、この地方の名産品であるナッツタルトを始め、チョコレートでできたハイヒールなども陳列。そのどれもが輝きを放っており、クオリティの高い店であることが伺えます。

お店の概要

創業125年以上、家族経営の菓子店

 「ジャノッティズ」は、125年以上に渡り、地元の菓子職人ファミリーが代々引き継いできた店。創業は、なんと1880年まで遡ります。スイス人菓子職人のジュールス・カロンダー(Jules Calonder)氏が、海外修行後に母国に戻り、ポントレジーナで「ア・マ・カンパーニュ(A ma Campagne)」という菓子店を開いたのが始まりです。1917年には、クラウディオ・ジャノッティ(Claudio Gianotti)氏が婿養子に入ります。彼の息子が菓子職人となり、1955年、現在地に「コンディトライ・ジャノッティズ(Konditorei Gianottis)」をオープン。その後ティールームを併設するなどして事業を拡大し、2006年からは5代目のクリング兄弟が経営を担っています。

欧州各地から集められた、秘伝のレシピ本

 創業者であるカロンダー氏は、「エンガディン地方の菓子職人(Engadiner Zuckerbäcker)」の1人。ポントレジーナのあるエンガディン地方では、15世紀から19世紀ごろまで、生活の困窮により多くの職人が国外へ脱出。スイス人菓子職人は、ヨーロッパ各地へ散らばっていったといわれています。
 カロンダー氏は、フランス、ベルギー、オーストリアで様々なレシピを収集。今でも店には、当時の彼の直筆ノートが大切に保管されています。こうした伝統のレシピを元に、ジャノッティズの菓子は作られてきました。

質の高い原材料を用いた、ハンドメイドの菓子

 現在は、創業者の血をひく5代目のマルコ・クリング(Marco Kling)さんが菓子作りを担当。店の工房で、プラリネチョコレートやタルトを手作業で丁寧に作り上げています。
 また、世界の産地から選び抜いた最高品質のカカオ豆だけを使用するなど、原材料のクオリティにもこだわっています。伝統のレシピを尊重しつつ、エキゾチックな素材とチョコレートを合わせるなど、新たな味のクリエーションにも積極的に取り組んでいます。

レストランも、国内外で高い評価

 一方ロマン・クリングさんは、店舗経営を担当。レストランの「ヴィルデライ」という名前が狩猟関係の言葉であるように、実は彼自身もハンター。彼が仕留めた鹿肉などのジビエが、レストランで提供されることもあるのだとか。日々フレンドリーに接客する姿は地元でも人気で、彼の人柄に惹かれてこの店を訪れる常連も多いようです。
 地元産の食材にこだわり、季節感を味わえる繊細な料理は、フランスのレストランガイド「ゴ・エ・ミヨ(Gault&Millau)」(2018年版)で満点20点のうち13点を獲得し、美食家もうならせるほど。もはや「菓子店のおまけ」という位置づけではないレベルにまで達しています。

品揃え

ピリリとエッジをきかせた、板チョコ各種

別名「ピッツ・スース(Piz Süss、甘い山)」と呼ばれる菓子店の価格帯は、スイスの高級菓子店と同レベル。ちょっと贅沢したいとき、または大切な人への贈り物としてふさわしい高級スイーツです。

 

 看板商品は、チョコレート各種。この店では、「グラン・クリュ(Grand Cru)」と呼ばれる最高品質のカカオ豆のみを使用。産地はベネズエラやアフリカ、マダガスカルやパプアニューギニアまで、多岐にわたります。
 板チョコには、クランベリーや胡椒など、様々な味わいをプラス。中には、ハバネロチリを合わせたタンザニア産チョコレートも。こうした大人向けのテイスト以外にも、スイスではよく見かける「キンダーキャビア(Chinderkaviar、カラフルなシュガーミンツをトッピングしたチョコ)」もあり、子どものお土産にもぴったりです。

プラリネは約20種類、ウィスキー入りも

 ガラスケースに整然と並んでいるプラリネチョコのフレーバーは、柚子やピスタチオ、ブルーベリーなど20種類。好きなものを選んで詰めることができますが、バリエーションが豊富で、思わず目移りしてしまいそう。常に同じものがあるわけではなく、時折新商品も加わるといいます。また、お酒入りのチョコレートもあり、中にはシングルモルトウィスキーを詰めたものも。ワインバーも併設しているため、ワインとチョコレートのマリアージュについてもアドバイスが可能。ちょっと優雅な楽しみ方ができそうですね。

世界で話題のルビーチョコも、自社製造

 また、この店では、世界でもまだ珍しい「ルビーチョコ」のクーベルチュールを扱っています。そうした菓子店は、スイスでも数少ないのだとか。
 2018年に世界で初めて商品化されたこのピンク色のチョコレートは、スイスのチョコレートメーカー「バリー・カレボー(Barry Callebaut)」が開発したもの。フルーツを加味していないのに感じる甘酸っぱさが特徴的で、話題になっています。「ジャノッティズ」ではもちろん、店の工房で手作りした商品を購入することができます。

売れ筋商品は、この地方名産のナッツタルト

 エンガディン地方の代表的な名産品として知られる、キャラメルとクルミを生地で包んだタルト「エンガディナー・ヌストルテ(Engadiner Nusstorte)」(250g、17フラン、約1,800円)も、キャラメルから手作り。
 そのクリーミーで濃厚な味わいは、一般のスーパー「ミグロ(Migros)」で売られている品(500g、7フラン、約800円)とは比べ物にならないほど。常温保存でよく持つため、お土産に最適な商品としてよく購入されています。

知られざるスイスの名菓、「洋梨のパン」

 もう1つの売れ筋商品は、グラウビュンデン州の名産品「ビルンブロート(Birnbrot)」。洋梨とイチジクを乾燥させたものを、ナッツと合わせて餡子のように生地で包んだパンです。日本ではあまり知られていませんが、スイスでは人気のある伝統菓子の1つであり、シャープな味のチーズと一緒に食べるとよく合うのだそう。
 こちらも、家族代々受け継がれてきたレシピで作られており、ずっしりとした味わい。どちらの菓子も、本場ならではのおいしさです。

他の歴史ある高級菓子店とも提携

 2017年には、近隣の村の有名ベーカリーや菓子店とも販売協力協定を結び、互いの商品を置くようになりました。
 120年以上の歴史を誇るポントレジーナのベーカリー「コッヘンデルファー(Kochendörfer)」からは、パン各種やナッツタルトなど。また、創業1892年のサンモリッツの菓子店「ホイザー(Hauser)」からは、ケーキやクロワッサンなどが提供されています。
 他にも、チューリッヒの老舗食材店「シュヴァルツェンバッハ(Schwarzenbach)」からセレクトした、オレンジピールや生姜のチョコレートがけも販売しています。

顧客

おもな客層は、スイスの個人客

 観光地ではあるものの、近隣にあるサンモリッツとは異なり、外国人よりもスイス人の顧客が多いといいます。団体客が押し寄せることもなく、個人で訪れる客が多いため、店の雰囲気はゆったりと落ち着いています。「混みすぎないので、個々のお客様に合わせた接客ができるのがいいところ」とロマンさん。
 以前はイギリスやドイツからの客も多かったそうですが、現在は政治や通貨などの影響もあり、変わってきているのだとか。国境が近いイタリアからは、一年を通じて多くの客が訪れます。日本人やアジアからの観光客も、それほど多くはないですがやってくるといいます。

クオリティの高さで、リピーター続出

 毎年夏と冬にポントレジーナで1~2週間ほど過ごし、その度に寄ってくれる顧客もいます。スイスでは、別荘があるという理由などから、毎年同じ場所で休暇を過ごす人々も多いのです。
 地元の常連の1人が、近隣のサメ-ダンに住む金融コンサルタント、ピーター・コンラッド氏。店の長い歴史や、クオリティの高いチョコレート、そして「おもてなし精神」にあふれたオーナーに魅せられているそうです。レストランの方にもよく足を運ぶそうで、おすすめは「グリルで焼いた肉」なのだとか。ディナーで支払う平均価格は、1人あたり1万円くらいだそうです。

宣伝方法

ウェブサイトやSNSを活用、口コミがメイン

 自ら広告は出していませんが、口コミで客が訪れるといいます。ウェブサイトでは、店の歴史や菓子商品を紹介しており、レストランのメニューとワインリストも公開されています。
 SNSも利用しており、フェイスブックでは新商品やイベントの告知を行うことも。インスタグラムでは、目にも美しいチョコレート商品の写真の数々が投稿されています。トリップアドバイザーでも220を超えるレビューが寄せられ、星5つの内4.5と高評価を受けています。

スイスのテレビや出版社から取材も

 そのクオリティの高さから、スイス公共放送SRFを始め、数々の取材を受けてきた「ジャノッティズ」。
 書籍では、2016年にエンガディン地方のこだわりの店を特集した本(「Leben,Wohnen & Geniessen: Engadin und Umgebung」)に紹介されたり、2017年版「グラウビュンデンでお出かけ!(Graubünden geht aus!)」というガイドブックにおすすめのレストランとして取り上げられたりしています。

日本産の品物

現在は、柚子を使ったプラリネのみ

 日本関係の品物は、「柚子を使ったプラリネ」が挙げられます。ロマンさんによれば、「どの世代のお客様にも喜ばれていますが、特に女性に人気が高い」とのこと。
 同じプラリネは、レストランのデザートとしても活用されています。チョコスフレとヘーゼルナッツアイスの横に、柚子のプラリネを載せたデザートは、一皿15フラン(約1,600円)。柚子の黄色が、華を添えています。

日本文化や特記すべき自国・外国文化へのコメント

チョコレートと合うような日本食材を歓迎

 小さい山村にあり、日本人客も少ないことから、特に日本企業からの売り込みもなかったと話すロマンさん。彼によれば、最近流行りのスーパーフードであるゴジベリー(クコの実)など酸っぱいものでも、チョコと合わせると風味が変わるため、日本産のドライフルーツや桜などの花にも興味があり、その場合は「砂糖漬けにするなど、長持ちする工夫をしたほうがよいですね」とのことでした。

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