スイス

EUの富裕層へ向けた日本製品進出可能性調査レポート(スイス編①-シュテファン・ラインハート氏-)

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シュテファン氏の御用達~デリカショップ・キュンツリ精肉店(Metzgerei Künzli)

店名:キュンツリ精肉店(Metzgerei Künzli)
業種:精肉業
所在地:Letzigraben 149, CH-8047, Zürich
電話番号:+41 (0)44 492 1656
営業時間:月~金7:00~19:00、土7:00~17:00
定休日:日曜日
ウェブサイト:http://metzgereikuenzli.ch/(ドイツ語)
取材対応者:店員、マリナ・シュテヴァノヴィッチ(Marina Stevanovic)さん
商品名(値札)等の言語:ドイツ語

インプレッション(印象)

清潔で明るい、「デリカテッセン」的肉屋

 「キュンツリ精肉店」は、チューリッヒの中心部から少し離れた庶民的な住宅地域・アルビスリーデンにあります。比較的新しい建物の1階部分に入っており、目印は「Künzli」と文字が入った大きなソーセージのレプリカ。隣には、ベーカリーがあります。パンとソーセージが軽食の定番であるスイスの人々にとって、ここは「必需品が揃う場所」といえるかもしれません。実際に、どちらの店にも寄っていく客が多いようです。
 お昼どきには、近隣で働いているビジネスマンや工事現場の労働者、親子連れ、カップルなど、年齢も職業も様々な客が訪れ、ランチをテイクアウトしています。店内は清潔で明るく、パスタやチーズ、ワイン等も並び、「肉肉しさ」を感じさせません。日本でいうところの「肉屋」のイメージよりも、はるかにモダンで洗練された印象です。

お店の概要

伝統のレシピと高品質を売りに成長

 創業は1959年。同じ地域にあったリメ精肉店(Metzgerei Rimé)を、現在のオーナーであるハインツ・キュンツリ(Heinz Künzli)氏の両親が引き継いだのが始まりです。出身地ザンクトガレン州で作っていた特製レシピによるソーセージはまたたく間に評判を呼び、小売店や飲食店からの注文も増加。1970~80年代には、店舗を拡張しました。
 増え続ける需要に応えるため、2000年にはチューリッヒ州スタリコンに精肉工場を新たに設置。店員のマリナさんによれば、この店で売っている肉製品の約9割は、自社工場で加工されているのだとか。ビオ(有機)など質の高い肉を選んでおり、顧客からの信頼も厚いそうです。

肉製品以外にも幅広い品揃え

 店舗は、ほかに工場の直売所と、グラウビュンデン州クールに配送センターがあります。社員は約60人で、アルビスリーデン店の従業員は13人。ケータリングやパーティサービスも行っています。
 「創業者のレシピ」という伝統を大事にしながらも、顧客の要望に応じて肉以外の商品も置くなど、品揃えに関してオープンな姿勢が特徴的です。2018年からは、野菜や果物も置き始めたのだそう。肉屋という括りにおさまらない柔軟な姿勢も、顧客をひきつけている要因の1つかもしれません。

品揃え

入り口には、華やかな贈答品コーナー

 入口を入るとすぐ、贈答品のコーナーがお出迎え。看板商品である「ユートリベルク(Uetliberg:自社工場近くにあるチューリッヒの低山)」の名前を冠したドライソーセージの詰め合わせが並びます。肉を花びらに見立てるなどデコレーションも凝っており、価格は1個89.90フラン(約1万円)ほど。スイス人が贈るプレゼントの価格帯としては、比較的高級品の部類に入ります。
 「ユートリベルク」印の商品はバラでも売られており、一番の売れ筋商品なのだそう。価格の一例は、「ビュンデナー・フライシュ(Bündnerfleisch))が118gで11.70フラン(約1,300円)となっています。

ランチのテイクアウトは手頃な価格

 テイクアウトコーナーでは、毎日11時半から日替わりメニューを用意。こちらの価格は12.50フラン(約1,400円)。スイスで外食すると、安くても1皿15~20フランはかかるため、リーズナブルな方です。店の新鮮な肉をグリルでローストしたものが、メインディッシュになることが多いようです。
 ある日のランチは、ローストビーフに付け合わせはゆで野菜と「シュペッツレ(Spätzle)」と呼ばれる柔らかいパスタでした。精肉店ならではの肉のおいしさは、折り紙付きです。

プレゼントにふさわしい高級調味料やワインも

 反対側の棚には、本場イタリア産の高級パスタやソース、酢やオリーブオイル類、スイス産のチョコレートなどが陳列されています。イタリアの赤ワインやフランスのシャンパンを始めとして、地元スイスのワインも揃えています。
 スイスでは、イタリア産の高級調味料やパスタ等の詰め合わせを、家族や友人の誕生日祝いとして贈ることがよくあります。また、ディナーに呼ばれた際の手土産としてワインを持って行くのも一般的。そうした目的で、このような商品が置かれているのでしょう。
 価格の一例を挙げると、イタリア産バルサミコ酢は250mlで17.50フラン(約2,000円)。一般のスーパーマーケットで同量のバルサミコ酢が5~6フランほどで買えるのに比べると、約3倍の値段です。一般には日常使いよりも「プレゼント用」の価格帯に近いです。

アペロに適した食材の種類も豊富

 メインとなるガラスケースには、野菜や果物のほか、シャリキュトリと呼ばれるハムやソーセージ、テリーヌ、そしてチーズやオリーブといったアンティパスト類も並びます。サラダドレッシングも自家製なのだとか。スイスでは定番の「アペロ(夕食前の白ワイン&おつまみ時間)」用の買い物にはぴったりといえそうです。
 スイスの定番ソーセージであり、冷たいままでも食べられる「セルベラ(Cervelat)」は240gで4.20フラン(約470円)。店おすすめの「ユートリベルクの農家風ロースト用ソーセージ」は、1本3.50フラン(約400円)となっています。どの商品も、「スーパーで買うよりも少し高めで、質のいいもの」という印象です。

店自慢のスイス産肉、そして和牛

 店の一番奥には、自慢の新鮮な肉類が並びます。牛や豚、鶏肉のほかに鹿肉もあり、様々な部位を揃えています。産地の多くは、スイスにこだわっているのだとか。スイス人の国産肉に対する信頼は厚く、地元産のものを選ぶ顧客が多いそうです。
 国産の蒸し煮ステーキ用牛肉(Rindssaftpläzli)は100gで5.60フラン(約630円)と、一般のスーパーで買うよりも1フランほど高め。また、スイス産和牛を使ったハンバーグも販売されており、100gで7フラン(約780円)。焼くと小さくなるため、1個あたりの分量に対しての価格はかなり高いと感じますが、実際に食べてみると味が段違いであると分かります。顧客からの評判も上々で、「何度も買いに来る人たちもいますよ」とのこと。

選定基準は、何よりも「クオリティの高さ」

 店で揃えている商品に関して、マリナさんは「品質はどれもナンバーワン」と太鼓判を押します。アペロからメインの食事までの食材が用意され、ディナーに呼ばれる際の手土産まで販売。食のシーン全体を見据えた商品展開は、肉屋としてはとてもユニークです。取扱う商品を選ぶ際は、クオリティを何よりも重視しているそうです。

顧客

ローカルにも、遠来の顧客にも愛される店

 この店には、10代~80代まで、幅広い年代のお客がさん訪れるといいます。中には、毎日ランチを買いに来る年配の男性もいるのだとか。近隣住民や労働者など、ローカルがメインの顧客層ですが、近くにホテルがあるため、時々観光客も訪れるのだそう。
 常連も数多く、シュテファン・ラインハート氏もその1人です。散歩の途中でこの店に立ち寄ったのがきっかけで、普段の買い物や来客用の食材調達に週1~2回のペースで訪れているのだとか。お気に入りは、ローストビーフなのだそう。また、クリスマスの時期に用意されるフィンランドのハム(Finnen Schinken)はとても人気で、これを目当てに毎年、チューリッヒのみならず、スイス各地から注文が入るというから驚きです。

ランチは行列、金・土も混雑

 1日で店が最も混雑するのは、ランチタイムです。マリナさんによれば、「並ぶのは必至」なのだとか。また、金曜日と土曜日は常に混んでおり、週末にまとめてショッピングをしたり、ゲストのために手の込んだ料理を作ったりするスイス人のライフスタイルを反映しているようです。

宣伝方法

各媒体に掲載される有名店

 自ら広告を出しているわけではありませんが、地元の各種メディア(新聞、地元テレビ局、フリーマガジンなど)に、頻繁に掲載されています。2017年版「チューリッヒでお買い物!」(Zürich Kauft Ein!)という、チューリッヒでショッピングにおすすめのお店リストに取り上げられたり、2018年には日刊紙ターゲスアンツァイガー(Tagesanzeiger)で、「チューリッヒにある、数少ない伝統の精肉店」の1つとして名前が挙げられています。

一番の宣伝は口コミ、SNSも活用

 マリナさんによれば、一番の宣伝は「顧客による口コミ」であるとのこと。店のウェブサイトは、2017年5月にリニューアル。店の紹介のほか、きれいな写真を豊富に掲載しています。フェイスブックのアカウントもあり、新商品や週替わりのテイクアウトメニュー、工場直売店での割引情報などを随時更新しています。

日本関連の品物

テリヤキソースや和牛も陳列

 肉のコーナーには、日本産ではありませんが、キッコーマンの「テリヤキソース」の姿もあります。顧客からの要望で置いたものの、「実際のところ、残念ながらそれほど売れているわけではないんです」とマリナさん。ただ近年、スイスでのテリヤキソースの知名度は上がってきており、寿司の具として「照り焼きチキン」がよく使われているのは確かです。
 一方で、和牛は顧客に愛されている人気商品なのだとか。肉部門担当の男性は、「最高級の肉といえば神戸牛でしょう」と断言。神戸牛は店には置いていないものの、日本発ブランドである「和牛」に対する評価は総じて高いことが伺えます。

早くから和牛に目をつけ販売を開始

 肉の品質にこだわるキュンツリ精肉店は、スイスで和牛を取り扱い始めたパイオニア的存在。スイスの和牛飼育場と提携し、2015年から販売を開始しています。
 スイスの和牛も100%自然に飼育されており、餌はトウモロコシ、牧草、オオムギとミネラルのみ。人工的なホルモンや成長促進剤、抗生物質などは一切与えていません。スイスは世界的にみても動物保護の基準が高いことで有名であり、和牛の飼育もそれに沿ったものになっています。

日本商品のスイスでの可能性について

肉に合う和風調味料、ウィスキーも視野に

 生鮮食品を扱う店の性質上、スイスやイタリアなどヨーロッパ産の商品が多く、顧客からもそうしたものを欲する声が多いとマリナさんは言います。そのため、彼女自身も日本とほとんど接点がなく、これまでに日本企業からの売り込みもなかったのだとか。
 しかし、顧客は新しい味にもオープンな人が多いことから、肉料理の味付けに使うワサビや柚子胡椒などの調味料や、料理に合わせるお酒、特にウイスキーに関しては取扱いの可能性があるかもしれないとのこと。日本企業から売り込みがあった場合にも、「まずは試してみてから考えたい」と好意的に受け止めるスタンス。質の高い日本の商品であれば将来、この店の棚に並ぶ可能性がありそうです。

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