スイス

EUの富裕層へ向けた日本製品進出可能性調査レポート(スイス編①-シュテファン・ラインハート氏-)

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シュテファン氏の御用達~アパレルセレクトショップ・ディーシースタイル(DeeCee style)

店名:ディーシースタイル(DeeCee style)
業種:アパレルショップ
所在地:Talacker 21, CH-8001, Zürich
電話番号:+41 (0)43 497 3585
営業時間:月~水・金10:00~19:00、木10:00~20:00、土10:00~17:00
定休日:日曜日
ウェブサイト:https://www.deeceestyle.ch/(英語、ドイツ語)
取材対応者:オーナー、マルクス・カドルヴィ(Markus Cadruvi)さん
商品名(値札)等の言語:ドイツ語

インプレッション(印象)

銀行街にたたずむ、メンズファッションのセレクトショップ

 チューリッヒ中心部の広場、パラーデプラッツ。ここはトラム(路面電車)の様々な路線が交差し、UBSやクレディ・スイスといったスイスの銀行の本店が建つ金融街です。ハリー・ウィンストンなどの高級ブティックや老舗の高級菓子店シュプルングリ(Sprüngli)の本店もあり、海外からの観光客もショッピングに訪れます。
 この広場から歩いて1分かからない場所に、「ディーシースタイル」があります。外観でまず目を引くのは、店の看板。なんとカタカナで書かれています。「日本人のお店?」と思うも、店内にはカントリー・ミュージックが流れ、革ジャンやジーンズ類も並び、アメリカンな雰囲気。所々に「岡山」「超極」などという日本語も見えます。客層は、男性メインといったところ。店員は客1人ひとりに対し、丁寧にアドバイスしています。

お店の概要

アメカジ一筋30年以上、目利きのオーナー

 この店の創業は2009年ですが、オーナーであるスイス人のマルクスさんは、1980年代からチューリッヒでアパレルショップを手掛ける実業家。若い頃からアメリカの文化やファッションに憧れ、地元バーゼルのショップに勤めるうち、「ゆくゆくは自分の店を持ちたい」と思うようになったのだとか。
 1986年、満を持してチューリッヒの旧市街に、ウエスタンスタイルのアパレルショップ「VMC」をオープン。ジーンズファンのニッチな需要に応え、カルト的な人気を誇ったといわれています。2000年には、環境に配慮したショッパーを作る会社「C-bag-trade AG」も立ち上げました。

富裕層をターゲットに、新たな店をオープン

 2005年にVMCを譲渡し、2009年には現在地に「ディーシースタイル」をオープン。店名のDは「デニム(Denim)」、Cは「カジュアル(Casual)」の頭文字なのだそう。土地柄、富裕層の顧客が多いことから、より高価格でコンテンポラリーなスタイルへとシフトしました。「モノ」と「サービス」のクオリティが高いため、客は引きも切らず、2014年には事業を始めて以来の成功を収めました。
 それでもマルクスさんは、8人の従業員と共に日々店頭に立ち、接客を欠かしません。毎年4月には、「ハナミ・パーティー」と銘打ったイベントも開催。取り扱っているブランドや出版社を招待し、同じファッションスタイルを愛する人々の交流の場も創り出しています。

品揃え

歴史あるブランドから最新ファッションまで幅広く

 店内には、世界中から選び抜かれたハイエンドなファッションアイテムがずらり。正統派の英国革靴や日本製のジーンズ、1940~70年代のヴィンテージの革ジャンなどのほかに、マルクスさんの趣味でもあるバイクのヘルメットやグッズも並びます。帽子やベルト、スカーフやアクセサリーなどの小物類も充実。ファッションやバイクをテーマにした雑誌も取扱っています。
 ブランドは、アメリカや日本を始め、イギリス、フランス、イタリア、スペイン、ベルギー、ノルウェー、オーストラリアなど多岐にわたります。「チャーチ(Church’s)」などの19世紀から続く由緒ある欧米ブランドだけでなく、「ノルウィージャンレイン(Norwegian Rain)」のように2000年代に出てきた新進気鋭のブランドの姿も。

売れ筋商品は日本のジーンズ

 「看板に日本語を載せたのは、日本のブランドを多く扱っているから」とマルクスさんが語る通り、この店の日本製品の多さには目を見張るものがあります。売れ筋商品の1つ、ジーンズの多くは日本製。世界的に有名な「エドウィン」、大阪発の「サムライジーンズ」、岡山発の「桃太郎ジーンズ」を始め、「シュガーケーン(Sugar Cane)」「マスタークラフトユニオン(MasterCraft Union)」「45rpm」などを取り扱っています。
 サムライジーンズ1本の価格は、なんと379フラン(約4万2千円)。物価が高いといわれるスイスでも、通常100フラン台で男性用ジーンズが買えることを考えると、かなり高い方だといえるでしょう。

他では見かけないユニークなシャツ

 ジーンズ以外では、「秋冬はジャケット、夏はTシャツがよく売れる」(マルクスさん)とのこと。「ネイバーフッド(Neighborhood)」の黒シャツは159フラン(約1万7千円)、「スタイルアイズ(Style Eyes)」の50~60年代風レトロ柄シャツは298フラン(約3万3千円)。どちらも日本のブランドです。
 マルクスさんおすすめの東京発ブランド「ファンダメンタル(FDMTL)」のパッチワーク風シャツ(298フラン)は、エスニックな雰囲気がありつつ、藍色で和も感じるという点が受けているようです。「ジュンヤ・ワタナベ コム・デ・ギャルソン(JUNYA WATANABE COMME des GARÇONS)」のジャケットも、今季一押し商品です。

ハイクオリティの手仕事を高く評価

 この店に置かれているブランドは、すべてオーナー自身が選んだもの。マルクスさんは、イタリアや日本、パリやニューヨークなど、世界各地の展示会を訪問。品物を実際に手に取り、ブランドに関わる人たちと話をすることを大切にしています。前述のブランドとも、こうした場所での出会いがきっかけになったのだとか。
 また、腕利きの職人による手仕事を高く評価しており、「産地も非常に重要」と話します。30年以上、最高品質のジーンズを探し求めてきたマルクスさん曰く、「ジーンズはアメリカのものだと思われがちですが、クオリティの高さでいうと日本が世界一。日本製のデニム生地は厚く、強靭で、長持ちします。アメリカも最近伸びてきましたが、まだまだ日本がトップですね」とのこと。

顧客

客層は、チューリッヒの富裕層ビジネスマン

 世界有数の金融都市・チューリッヒで働くビジネスマン達が、おもな顧客層です。スイス人に限らず、イギリス人やアメリカ人など、顔ぶれは国際的。年代は10代~70代と幅広く、この店が提供するスタイルが好きな人が集まってくるのだそう。
 スイス人のファッションについて、マルクスさんは、「東京の若者のような、エッジィ(前衛的)な着こなしはしませんね。流行はありますが、基本的に皆保守的です。しかし、良質のものを長く着たいという傾向があるので、いいものにはお金を払うという感覚の人が多いですよ」と分析しています。

「高くても質のいい服を買いたい」という顧客

 そんな常連の1人が、シュテファン・ラインハート氏。職場からもそれほど遠くない場所にあるこの店を、週1回くらいのペースで訪れているのだとか。愛用している「マスタークラフトユニオン」のジーンズもここで購入。日本の雑誌も何冊か持っています。
 彼にとってこの店の魅力とは、「ベルリンやロンドンのハイエンドなショップにも引けを取らないクオリティでありながら、品揃えがより豊富であること」。洋服のスタイルにも幅があるので、コーディネートを考えるのが楽しいのだとか。男性用だけでなく女性用もあるため、パートナーへの洋服を選ぶこともあるそうです。

仕事の休み時間や土曜日に来店

 ビジネスエリアにあるため、ランチタイムや就業後の夕方が一番混雑する時間帯です。土曜日も終日、客足が途切れないといいます。

宣伝方法

ファッション雑誌への広告、SNSも有効活用

 日頃付き合いがあり、店でも販売しているイギリスの雑誌「メンズ・ファイル(Men’s File)」と日本の雑誌「クラッチ・マガジン(CLUTCH Magazine)」に広告を出しています。2017年版「チューリッヒでお買い物!」(Zürich Kauft Ein!)という本に、ショッピングにおすすめのお店として掲載されたこともあり、新聞や雑誌からの取材も多数受けています。
 店のウェブサイトには、取り扱っているブランドの説明や商品の写真をふんだんに掲載。フェイスブック、インスタグラムのアカウントもあり、新商品やスタイリングの提案、イベント情報が随時投稿されています。顧客とのパーソナルなやりとりを大切にしているため、オンラインでの販売はしていません。

日本関連の品物

取り扱う日本ブランドの数は20近く

 日本のファッションアイテムが店の看板商品といっても過言ではない、このショップ。前述のブランドの他にも、「キャピタル(Kapital)」「ts(s)」「ナナミカ(Nanamica)」「バズリクソンズ(Buzz Rickson’s)」「ブラック・サイン(Black Sign)」「ブルー・ブルー・ジャパン(Blue Blue Japan)」の商品が店頭に並びます。「ヴィンテージ・ワークス(Vintage Works)」や「天神ワークス(Tenjin Works)」の革製品、「マスターピース(Master-piece)」のカバン、「チュプ(Chup)」の靴下も扱っており、雑誌まで加えると、日本ブランドの数は約20にものぼります。

日本産の素材を使った欧米ブランドも

 取り扱う欧米ブランドの中にも、日本関連商品があります。例えば、「オンカイハッツ(Onkaihats)」はスイスの帽子ブランドですが、日本の「わびさび」にインスピレーションを受けた作品を作っており、装飾部分に日本の布を使用。また、「ネイキッド&フェイマス(Naked & Famous)」(カナダ)はデニム生地、「ノルウィージャンレイン」はハイテクリサイクル素材が日本製です。

出会いは、世界各地の展示会

 マルクスさんによれば、日本のブランドとは、展示会などで顔を合わせ、その後コンタクトをとっていくなかで仕入れにつながっているといいます。例えば「ファンダメンタル」の場合、イタリアの展示会「ピッティ・ウォモ(Pitti Uomo)」で度々見かけており、デザイナーが店に来たこともあるそう。2017年春に仕入れを決めたのは、「店の雰囲気とブランドの方向性が合致した」というのが主な理由。「タイミングも重要だ」と話します。
 日本の展示会では、「クラッチ・マガジン」主催の「CC Show」(横浜)に行くのだとか。「日本製のものは、生地、縫製、デザインのどの点においても質が高い」というイメージを持っているようです。

日本文化や特記すべき自国・外国文化へのコメント

プライベートでも親日家

 個人的に初めて日本を訪れたのは15年前というマルクスさん。これまでブランドや展示会の訪問で3回の渡航経験があり、中でも「京都の寺や神社が印象に残っている」と話します。妻は陶芸家で、日本の陶器をお土産に購入したのだとか。日本食では刺身が好物で、チューリッヒでも日本食レストランによく足を運ぶそうです。

現地の人々の体格に合わせた商品作りを

 ヨーロッパ進出を考えている日本のアパレル企業に対しては、「服のサイズに注目すべき」とアドバイス。日本人と体格が異なるので、日本のものをそのまま持ってくると、腕の丈が短すぎたりするのだそう。「こちらのサイズに合わせた服を作れば、取り扱いやすくなるのではないか」と話していました。
 2019年にも再び日本を展示会で訪れる予定だというマルクスさん。「ブランドとの付き合いは、人との付き合いと同じ」と語る通り、今後もじっくり信頼関係を作り上げていくのでしょう。

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