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流通拠点オランダにみる 欧州マーケット開拓・第一歩

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5. 自社に合った欧州販路開拓の第一歩

 

 

商材タイプや会社の規模感、目標設定で考える欧州販路開拓の方法

これまで見てきた6つの例は、その会社の規模感や商品タイプなどにより、例で見たようなそれぞれの形での展開となった。ここにたどり着くためにはどのような準備が必要だろうか?

欧州販路開拓の方法と順序、目標設定

上の図のように、展示会の機会を利用して実践的なマーケティングを行う会社は多い。また展示会に出展した後に改めてリサーチのために現地に行くという会社も。“基礎完成第一目標”では、今後どのように欧州内で商品を流通させるかの方法となる。

欧州販路開拓の基礎作り各順序や目標

前ページで挙がった欧州販路開拓の項目についてメリットや目標、必要事項を見ていこう

  1. マーケティングリサーチ
  2. 欧州展示会出展
  3. 現地パートナー
  4. Eコマースサイト
  5. 現地法人設立

欧州マーケティングリサーチ

欧州販路と言っても、どの国からまずはじめるのか、販売、流通方法はどのようなチョイスがあるのか、関税や輸送にかかる費用、現地の同商材の価格帯を知ること、また各国の景気やターゲット層を知ることなど、現実的な販路開拓を考えるのに不可欠。以下の項目は欧州販路開拓に踏み出す価値があるかどうかの判断に必要なリサーチ項目を書き出してみた。

  • 欧州全土でのマーケット規模の把握
  • 輸送費と関税、輸入消費税など輸出に関わる情報収集
  • 自社製品と市場とのマッチング
  • 既存商材の市場での価格帯とそのターゲット層、マーケティング手法
  • 訪問国の店舗やオンラインショップなど商材にあったリテールのリサーチ
  • OEM受注の可能性がないか、有識者からのリサーチ

展示会でのリサーチ

展示会はネットワークも広げやすく大勢の人が集まるので、相性が良さそうな展示会があれば参加してリサーチの機会とすることもお勧め。

  • 展示会に出展しているメーカーなど見て欧州の消費傾向やトレンドを掴む
  • 出展している日本企業と情報交換の機会
  • 出展している現地企業から現地の情報を仕入れる

現地に詳しい日本人ガイドや商材を理解する専門家などを見つけ、現地事情の情報収集や現地パートナーとのネットワーキングの機会設定などもできると良い。

欧州展示会出展

欧州で多くのバイヤーやメディア、クリエイターが集まる展示会出展は効率よく大勢の人と出会え、セールスやネットワーク作りの格好の機会となる。

展示会出展では以下の可能性が期待できる。

  • マーケティングリサーチの機会
  • 欧州バイヤーからの受注獲得
  • 現地代理店となる企業や人物との出会い
  • 現地PR会社やクリエイターなどとの出会い

展示会以外にも、街を歩いたり、展示会中に名刺交換したバイヤーを訪問、商材に適したリテールのリサーチなど、展示会会期後に欧州マーケットやターゲット層に対する知識を得るための時間を持つことは重要。

欧州展示会は住み分けがはっきりしている。自社商品対応やブランドに合わせた展示会選びが重要だ。

メゾン・エ・オブジェ(フランス、パリで毎年1月下旬と9月中旬開催)

日本で一番有名な欧州展示会。世界中から多くの人が集まり、トレンド感を求める欧州バイヤーは同展示会を選択。大規模で出展者数も多いため、ブース作りや配布リーフレットなどはプロが必要。継続出展により成果が上がる。バジェットがあり、会場デザインや現地スタッフなど十分な費用をかけられる企業向け。出展前にリサーチに行き、出展プロダクトや欧州向けブランディングを考慮すべき。

アンビエンテ(ドイツ、フランクフルトで毎年2月中旬開催)

メゾン・エ・オブジェよりもトレンド感は控えめだが、来場バイヤーが浮つかず本気のビジネス目的で来ているため、受注が入りやすい。落ち着いた日用品でも出展しやすい。欧州デザイナーの出展より、各国の様々なレベルのメーカーが多く出展している印象。トレンド感のないブース作りであっても商品次第では注文が入ると思われる。注文獲得のための資料作りや、受注時の英語対応など準備が必要。こちらも継続出展が重要。

ミラノサローネ国際家具見本市(イタリア、ミラノで毎年4月中旬開催)

欧州デザイン業界、クリエイターたちが一番好む見本市。欧州デザイナーやメーカーの新作発表は多くがミラノで行われる。場外イベントを含めてミラノサローネと呼ばれ、展示会会場はメゾンやアンビエンテと同様の雰囲気だが、ミラノの町中で開催される多くのイベントや展示が「デザインの祭典」と呼ばれる華やかで多様な楽しみを提供している。デザイナーを起用して企業のコンセプトをインスタレーションとしてみせる日本企業も毎年多数出展。富裕層向けのライフスタイル商材、デザインプロダクト、新素材など。

MONO JAPAN(オランダ、アムステルダムで毎年2月上旬開催)

欧州で唯一日本プロダクトに特化した展示・即売会。大規模展示会では日本のモノづくりの背景や歴史が伝わり難い環境であることから、小規模で欧州マーケットに合うキュレーションされたプロダクトが揃うことで好評を得ているイベント。ターゲットのエンドユーザー像を知りたい、マーケットリサーチ、現地クリエイターと出会いたい、来場者に丁寧に製法などを伝えたい、商品を販売したい、他の展示会と世界観が合わない、などのメーカー向け。現地日本人スタッフが出展に関してのサポートを行うので、海外出展初体験のメーカー向け。

現地パートナー

6ブランドの例の中にも、商品に惚れ込み欧州展開を引き受けたいと名乗りをあげる現地人との出会いから欧州販路拡大が始まったケースもあり、欧州人の中にも日本プロダクトの流通や日本メーカーとの協業をビジネスチャンスと考える人は少なくない。現地人パートナーには2つのタイプ(流通・デザイン)が考えられる。

現地流通パートナー

SIWA l 紙和やTsunagu Sonogi Tea Farmersのように、現地に熱心な代理店が見つかり、現地の市場に応じた流通を担当するパートナーが見つかるケース。

この方法だと欧州各国の市場知識を自社でもたずとも各地域にパートナーを持つことで展開が可能、小規模な企業に適している。デメリットは販路拡大も販売チャンネルの選択やボリュームも現地パートナー次第になってしまうこと。

この方法をとる場合、会社や産地自体がムラのない生産体制を組んでおく必要があり、契約の際にはパートナーの担当エリアや業務担当の範囲確認も大切。

現地デザインパートナー

2016/や西海陶器は欧州クリエイターと商品開発を行っている。

日本メーカーとの商品開発を希望する欧州クリエイターは多い。日本国内での多岐にわたる素材での製造業の存在、高品質のイメージ、伝統工芸の技を現代的に生かしたプロダクトの作成への興味、日本国内の販売網などが理由として挙げられる。

デザインパートナー選びには、デザイン能力や彼らから得られる世界的な視野、彼らの活躍やメディアの注目度、ブランド力以外にも、人同士の相性や、産地やメーカーへの理解、長く付き合っていける人柄など、人的部分も継続的で発展的な関係構築のためには不可欠だ。

ブランディング力があり、マーケット理解にも通じた欧州クリエイターを工場や産地に迎えることができれば、多くの知識を得られメリットが多い。 SNSでの発信力やWEBサイトでの販売力を持っている場合もある。

Eコマースサイトの立ち上げ

Eコマースサイトを英語で開設することの意義は大きい。世界中の顧客の目に止まる可能性が手に入るため、テストマーケティングとしても無駄にはならない。

オランダを始め、欧州諸国の消費者はEコマースサイトでの購買に移行傾向。オランダでは人口の97%がインターネットユーザー、現在のセールスの11%がEコマースで行われている。 Eコマース購買の全体の1位が旅行やチケッでファッション関係は5位。以下はEU諸国のEコマースでの売り上げグラフ。アイルランドがトップで、全購買の15%以上となっている。2位以下がベルギー、チェコ、イギリス、スウェーデンとなる

オレンジ:BtoC 青:BtoBセールスグラフ:“Eurostat –  Statistics Explained”より

実際に欧州向けEコマースサイトの開設には以下の2通りとなる。

日本を拠点に英語対応のEコマースサイト開設

決済はクレジットカードとPayPalで、商品の発送は日本から行う。各国への輸送費を調べ、地域ごとの料金設定やキャンセル、返品、破損の際の規約をきちんと英語で記載すれば運営は可能。集客にはエリアごとの他社サイトを研究。

欧州拠点でのEコマースサイト開設

現地法人設立や現地パートナ−を持つことで可能。決済もクレジットカードとPayPal以外に各国銀行カードの決済が可能となり、購買が進む。現地パートナーがEコマースサイトの運営やマーケティングに長けた人や会社だとメリットが大きい。また現地に在庫できると輸送コストが抑えられるため、ユーザー・フレンドリー。ただしGDPR (EU一般データ保護規則)が2018年5月25日から適用され、個人情報の取り扱いにはますます注意が必要になっている。欧州顧客の情報がきっちり管理され、情報が転用などされず、広告メールなどを送る際に情報送信前に確認が取れていれば、必要以上に恐れる必要はない。

欧州Eコマースサイトの開設時には以下のことが成功の鍵となる。

  • 海外の多くのサイトを研究、購入も試してみる
    ⇨決済方法や発送、商品購入時のメール連絡やパッケージングなど学べる
  • 写真は写真家とスタイリストを起用し、スタイルを作り上げる
    ⇨現地パートナーの協力を仰ぐ、または国内で海外向けサイトやメディア発信している人を起用
  • 名前は欧州向けに短くわかりやすく
  • 文字情報を極力減らし、英語で⇨優秀な英語ライターか現地パートナ−に依頼
  • 支払いまでのステップはできるだけ短く
  • 英語でのインスタグラム投稿も重要 ⇨現地パートナ−に依頼も可能

現地法人設立

企業の規模や将来的な展望によっては、現地法人を設立することが最良の方法であることもある。Time & StyleやMUJUN、西海陶器の3ブランドはそれぞれ規模感や経緯は違うが、“自社に知識と経験を蓄える”という共通の考えがこの選択として形になっている。

また他の日本メーカーで、現地人が現地法人を作りたいと名乗りをあげるケースもあり、商材、価格帯、人的出会い、会社規模、などで多様な形が可能であることも頭に入れ、展示会に出展してみるのもお勧め。

現地法人設立のメリット

  • 企業自身が知識と経験を蓄え、国際的に販路開拓できる体質作りが可能
  • 長期的に欧州全域を対象とした展望が、自社の舵取りで行える
  • 現地法人の予算で欧州内セールスや展示会出展など活動を行い、現地で税務処理でき、効率よく運営することが可能

以下はオランダでの邦人の立ち上げに目安となる一般的な項目。会社規模にも、また国ごとにも条件が異なるため、法人設立の際には本格的なリサーチが必要。

  • 社員を現地へ派遣し、滞在許可証の取得、家探しなど居住の準備
  • 物件(オフィスや店舗、倉庫など)探し、賃貸契約
  • 商工会議所に会社登録、また登録の際に必要な条件を満たす準備
  • 現地銀行開設
  • 現地会計士や人材派遣会社、輸送会社など、必要に応じて探す
  • スタッフ探し
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