みなさんは「富裕層」と聞いて、どのような方が思い浮かぶでしょうか。近年、「当社の製品を海外の富裕層に売りたい!」という中小企業の方々からのご相談が増えてきています。このレポートでは、中小企業の方々が富裕層に向けた海外展開を計画するうえで、そのターゲット像の具体化に資するべく、富裕層と呼ばれる方々のお気に入りのものやライフスタイル、お勧めのショップなどをインタビュー調査し、まとめたものです。みなさんの商品開発やマーケティングのお役に立てれば幸いです。
なお、このレポートは2018年に執筆されたものであり、現在の状況と異なる可能性があることをご了承ください。

氏名:ガビ・フランクラン(Gharbi Franklin)
職業:家具メーカーVilla–Francaise社長
家族構成:1人暮らし、子ども4人
出身:パリ
自宅エリア:パリ市内、インドネシア・ジュパラ

インドネシアを拠点に家具事業を展開

パリ生まれパリ育ちのパリジャンです。15歳の時から父親の家具会社の手伝いを始めたことをきっかけに、家具業界に入りました。25歳の時に独立し、パリ郊外で欧州家具店の経営を始めました。当時はまだ輸入家具が珍しかったんです。そこで目を付けて、インドとエジプトからの輸入家具の卸販売事業を開始しました。エスニック家具にポテンシャルを感じ2001年には現在の会社Villa -Francaiseを、インドネシア・ジュパラに設立しました。2006年には自社での生産も開始し、今ではミドルからハイエンド向けの家具ブランドとして成長を遂げ、フランスとインドネシアを行き来しながら会社を経営しています。

生活スタイル

二つの国を行き来する生活

インドネシアとフランスそれぞれの生活があります。前者はビジネスに、後者は家族と過ごす時間に使います。インドネシアの家は一戸建てにメイドと運転手がつく生活で、仕事に常に集中するため規則正しい生活環境を心がけています。朝8時から夜19時まで業務に集中して、週末は休息に当てるようにしています。
一方フランスにいる時は4人の子供達と過ごす時間に費やします。一年中一緒にいられるわけではないので、子供達のために自分で料理をしたり、最大限家族に尽くすようにしています。休暇は子供達の予定に合わせて取り、子供達を呼びインドネシアで過ごすこともあれば、モロッコやタイ、香港などに旅行することもありますね。人生で最も重要なのは家族と過ごす時間であり、単身で仕事をしていても休暇をモチベーションにインドネシアでの労働生活に励んでいます。
趣味は乗馬で、ブルターニュの別荘には2頭所有していますが、娘に乗馬を習わせるために現在3頭目の購入を検討中です。趣味はボードゲームやウォーゲームで、プレイするだけでなく年代物の品を探すのも好きで、コレクションしています。アンティークや歴史が好きで、日本の歴史や武将も好きです。

買い物について

買い物をする際はフランス国内で

お気入りの買い物スポットは百貨店の「ボンマルシェ」です。ファッションだとイタリアのブランドが好みです。時計はパネライ(Panerai)、靴はサントーニ(Santoni)と物によってこだわりのブランドがあります。服はラルフローレンやポールスミスが好みでよく着ていますね。クロエには知り合いのデザイナーがいて、よく買うブランドの一つです。今週は友人の誕生日なので彼女を通じてクロエのバッグを購入したばかりです。ショコラティエのジャック・ジュナンも友人で、彼のお店のお菓子も頻繁にギフトとして購入します。物を購入する際には値段はあまり気にせず、「良いもの」を買うようにしています。なので知り合いがやっているブランドやお店は信頼できる。選ぶ際の大きな要素になっていますね。反対に私の知人は私の家具を買ってくれたりします。無駄なものは買わず、欲しいものは良質で長持ちするものを買うことを心掛けています。自宅の家具に関しては自社の製品で統一しています。インドネシアにいる時はほとんど必要じゃないもの以外の買い物はしませんね。

情報収集方法

基本的にはオンラインで情報を得る

ル・モンド紙のオンライン版で毎日ニュースを購読しています。自分のメインの情報収拾先はフランスソースのものが多いですが、インドネシアにいる時は地元のコンパスというメディアもチェックしています。ラジオは音楽を聴くためだけにNPRを活用している。最近ではNPRラジオ局で紹介されたアーティストを好んで聴いています。SNSはフェイスブック、ツイッターは使用しておらず、インスタグラムを会社のアカウントで宣伝のため活用していますが自分の生活を見せるようなアカウントは持っていないですね。テレビはほとんど見ず、YouTube、Netflixがメインの娯楽です。

日本文化に対して

古い日本の文化は趣を感じることができるので好き

日本にはすごく興味はあるがまだ行った事がないです。日本でまず最初に思い浮かべる物は浮世絵の富士山です。浮世絵が好きなのですが、中でも葛飾北斎の絵はやっぱり好きですね。厳かで神聖なイメージが日本でそれをうまく表現しているところが好きです。歌川広重も独特な世界観が気に入っています。ウイスキー、秋田犬、日本車などがパッと思い浮かぶものです。日本に行った際には大阪城や富士山や山中湖周辺に行ってみたいです。叔父がパリで有名なアンティークショップのオーナーだったため、子供の頃から歴史やアンティークに興味があり歴史書や古い雑貨を集めるのが好きでした。とりわけ古代武器の収集に熱心で日本の伝統的な槍、鉄砲も一時期お店でも扱ったこともある。古本も好きで、日本人作家では三島由紀夫、大江健三郎、村上春樹などが好きなです。日本のビジネスモデルなどにも感銘を受けることが多いのです。いつか日本企業ともビジネスをしてアジアの拠点を拡大できれば嬉しいですね。

成功者、富裕層の定義

お金はただのツールであり、富裕層の定義はできない

富裕層と言われてもどういった人をそう指すのかわからないですね。お金はただのツールでありそれを沢山持っているからといって裕福とは言えないと考えています。成功者とは財産とは関係なく、自分がどれだけ満足できるかだと思います。

フランクリン氏の御用達お店~ミロ アンド グローブ (Wilo & Grove)

店名 : ミロ アンド グローブ (Wilo & Grove)
所在地 : 22 rue de la Tour d’Auvergne
電話番号 : 06 86 54 91 14
営業時間:月~金 10:00~19:00、
ウェブサイト:https://wilo-grove.com/

インプレッション

若手アートディーラー2人によるセレクトギャラリー

Fanny SaulayさんとOlivia de Fayetさんによる女性コンビで創業したパリの9区にあるアートギャラリーWilo & Grove。ギャラリーには彼女たちによってセレクションされたアーティストの作品が展示されている。展示されている作品にはそのまま値札がつけられておりその場ですぐに購入することも可能です。展示されている作品以外にも、広いアパートの一室をワーキングスペースとして利用し、そこにも契約したアーティストの作品を保管しています。

お店の概要

まだまだアート市場は未開拓 

2人はもともと老舗オークションハウスのクリスティーズで7年間一緒に働いていましたが、その際に仕事を通して多くのアーティストと出会いアート市場にもっと大きな可能性を感じ、自分たちでアートビジネスを展開することを決断します。主にインスタグラムを使い、若者をターゲットに50〜5000ユーロの手が出し易い価格帯のモダンアート作品を紹介しています。顧客との距離も大切にしており、よりアートを手軽に楽しんでもらいたいというコンセプトの元活動しています。

頻繁にポップアップイベントを開催 

一押しの若手アーティストがいたり、紹介したい作品がある時はポップアップイベントを行います。彼女たちの契約している中での今一押しのアーティストVANESSA BOUZIGESによる作品などはボンマルシェで行なったポップアップイベントで紹介したところ大好評だったとのこと。彼女の作品のループシリーズは円形の木型に色とりどりの毛糸を巻きつけ、それを連ねた装飾品です。一風変わったデザインが受け、とても反応が良く、様々なサイズがありますが一点で300ユーロからとアート装飾品としては手が出しやすい価格帯であることも人気の要因だったそうです。

顧客

アートを身近に感じてもらうための顧客対応を常に意識

顧客のほとんどはフランス人であり、まだまだ若い顧客が実際は少ないとのこと。市場拡大を目指し、今後はもっとアーティストを増やしたり、ポップアップギャラリーを頻繁に行うつもりだそうです。売上の10%はオンライン、90%は展示会・ショールーム。やはり顧客のほとんどは実際に見たものを買いたい人が多く、そのため顧客とは直接対話できるギャラリーの存在は大きいです。

とにかく若い人に買ってもらいたい

若い人にとってはギャラリーでアート作品を買うといと敷居が高いイメージがあります。だからこそアート販売の間口をより広くてして若者の客層を取り入れるための工夫をしています。自分達のセレクションにも自信を持っているためまずはギャラリーを知ってみに来てもらう様に若者の目が触れやすいメディアでの広報もしています。残念ながら購入まで行き着く若者はまだそこまで多くないので広報を続けて行きたい。

品揃え

アーティストとの繋がりが生み出す独自のセレクション

扱う作品は展示会や個展で実際に見て見つけ出すことがほとんどだそうです。現在契約している40人のアーティストのほとんどがフランスを拠点に活動しています。様々な需要に応えられるように契約しているアーティストには安いものから、高いものまで幅広い価格帯の作品を手配するようにお願いしています。オンラインのギャラリーショップも展開しているが、やはりアート作品なのでほとんどの人は実際に作品に触れ、情報を得ながら吟味したいみたいです。
日本のアーティストも扱ってみたいが、送料や税関など考慮するとフランス国内で活動できる人の方がベターなのでなかなか難しい。

宣伝方法

基本的にはインスタグラムがメイン

ターゲットが若者なのでSNSを利用し、シンプルでアクセスのし易さをアピールしています。サイト上でも商品を紹介する時は値段を提示します。作品は買えるという事と安さをアピールするために値段に関してはオープンであることが重要だとか。
インスタグラムで作品を見た人が実際に足を運んで見に来るケースも多いとのことです。アート・ファッション系の広報はインスタグラムがベストとの宣伝ツールで頻繁に更新するようにして契約しているアーティストの作品を紹介しています。

フランクリン氏の御用達お店~きものや(KIMONOYA)

店名 :きものや(KIMONOYA)
所在地 : 11 Rue du Pont Louis-Philippe, 75004 Paris
電話番号:06 86 54 91 14
営業時間:月~土 11:00~19:00、
ウェブサイト:www.kimonoya.fr/

インプレッション

パリで最も古い日本雑貨店

マレ地区南部に位置する創業39年になる和雑貨店。近くにはパリ・ショア(ホロコースト)記念館があります。着物や雑貨、アンティークな箪笥など日本から取り寄せた商品がほとんどです。マレ地区はパリ中心部に位置するファッションやグルメが充実していつも賑わう地区で観光客も多いです。そんなマレ地区南部も創業当初はまだ閑散としていたそうで創業と共にまちが賑やかになっていく経過を見てきたと創業者の長谷川さん言います。パリで日本雑貨買うなら「きものや」と、パリジャンにとっては有名なお店である。立地条件から観光客が立ち寄ることも。

お店の概要

フランス人ご用達の和雑貨

着物や雑貨、アンティークな箪笥など日本から取り寄せた商品がほとんど。オーナーの長谷川さんと旦那のジェラルドさんが日本に行った際に買い付けたり、売込みなど。様々な商品があるが、選ぶ基準は価格帯だという。50ユーロを超えるか超えないかは凄く大きいとのことで、フランス人がギフトを買う際50ユーロを超えると途端に財布の紐が固くなるそうで、店内の雑貨はなるべく50ユーロを超えないものを揃えていると言います。顧客はパリ在住の常連さんがほとんどで、すでに日本文化が好きで和雑貨への理解や知識が深い人も多いです。

顧客

ほとんどはフランス人

客層はほぼフランス人で半分近くが人に贈るギフトとして商品を買う。顧客はパリ在住の常連さんがほとんどで、すでに日本文化が好きで和雑貨への理解や知識が深い人も多いです。客単価は30−100ユーロですがシーズンによっても異なります。もっともお店が繁盛するのはクリスマスシーズンの12月で、贈り物として和雑貨を買いに来る人で賑わいます。折り紙や動物をモチーフにした小物などは子供達に好評で親子で来る客も多いとか。

品揃え

人気商品は陶器と浴衣

価格帯が低くて手が出やすい雑貨はシーズン問わず良く売れるそうです。店舗で最も売れている商品は浴衣で部屋着や羽織りものとしてフランスで流行っているそうで年中問わず需要があるそうです。またコスプレイヤーなども着物や羽織もの目当てに来店するのだとか。きものやというだけあってやはり売れ筋は着物でこれらもオーナーが日本で買い付けたものです。
陶器類もここ数年ギフトとしてよく売れている。和陶器もフランスで人気が高いがデザインを模しただけのものも多く、きものやで買い求めに来る人たちは日本で作られた本物の工芸品を求めて来ます。
お店の中で最も高価な商品は600ユーロの花瓶。安価ではあるが電動で動く猫の置物は予想よりも良く売れたそうです。

宣伝方法

フェイスブックの店舗ページはジェラルドさんが担当で更新しているが、ほとんどが口コミ。あとは雑誌に紹介されることが多数ありました。日本の工芸品に特化した雑貨店はパリでも少なく、長く営業しているので知名度は高いです。古くから足繁く通う常連さんも数多くいるとのこと。