みなさんは「富裕層」と聞いて、どのような方が思い浮かぶでしょうか。近年、「当社の製品を海外の富裕層に売りたい!」という中小企業の方々からのご相談が増えてきています。このレポートでは、中小企業の方々が富裕層に向けた海外展開を計画するうえで、そのターゲット像の具体化に資するべく、富裕層と呼ばれる方々のお気に入りのものやライフスタイル、お勧めのショップなどをインタビュー調査し、まとめたものです。みなさんの商品開発やマーケティングのお役に立てれば幸いです。
なお、このレポートは2018年に執筆されたものであり、現在の状況と異なる可能性があることをご了承ください。

氏名:ガボー・ウルヴィツキ(Gabor Ulveczki)
職業:ギルティングデザイナー、ULGADOR CEO
年齢:52歳
家族構成:一人暮らし、子ども4人
自宅エリア:パリ郊外
職場エリア:パリ市内、自宅
出身:ハンガリー
住居の間取り:一戸建て所有
車所有台数:1台、フォルクスワーゲン
使用する言語:フランス語、英語、ハンガリー

画家からギルティングアーティストへ

ハンガリーで生まれ育ち、17歳の時に画家を目指してフランスで暮らし始めました。1年後にアートアトリエを開いて、ギルティングに限らず絵画や彫刻といった作品を作り続けました。14年続けて、装飾を専門とするアトリエ、ULGADOR をパリで立ち上げました。独自に編み出したギルティング技術は高く評価され2007年には“Living Heritage” 賞を受賞し、国家遺産会社(Entreprise du Patrimoine Vivant)にも認定されました。多量の金・銀・銅・アルミニウムなどの金属をあえて酸化、腐食させることにより独自の金属の味を出すのが自身の作品の特徴で、今までにルイヴィトンのファッションショー、シャネル、カルティエ、ブルガリ、ピアジェのショーケース、ホテルのロビーの壁紙などのデザインも担当しました。日本に住んだこともあります。

生活スタイル

家族とは適度な距離感で

現在は1人でパリ郊外にアトリエの横の庭付き一軒家で暮らしています。パリ市内まで車で30分と遠くなく、緑も多くて閑静で気に入っています。4人の息子のうち1人が自宅裏に住んでいて頻繁に会います。まだ幼い子供が2人いて、元妻と2週間交代で面倒をみています。少し大変ですが子供はかわいいし楽しいです。

生涯、自宅を改築・増築したい

出来る限り時間をやりくりして、暇さえあれば自分で自宅を改築・増築しながら暮らしています。あとガーデニングをのんびりやるのこと、この2つは人生の大きな楽しみです。大きな買い物をするよりも、家の改築費に当てることがほとんどですね。
健康維持のために1日15分ほどのサイクリングをしています。家の近くにある湖で趣味であるカヤックやカヌーで休日は体を動かします。料理も趣味の1つで、近所の八百屋やbioショップで買ったオーガニックな物だけを使い自炊します。動物愛護の精神により、40年前からベジタリアンです。
夏は6週間ほど海のあるところにいくことが多く、冬は毎年必ず10日間ほどアルプスにスキーに行きます。

住居の印象

アーティスト仲間による贈り物の数々

家にある絵や彫刻などの置物はアーティスト仲間や娘の作品です。家の中央に設置されている薪ストーブをはじめ家具など家の物は自分で作ったり、人から譲り受けたものがほとんどです。日本に住んでいた時に買った日本の陶器や扇子、本なども飾ってあります。

買い物について

無駄な買い物はせず楽しみのために使う

自分のために物を買うより人に贈る物を買うことの方が喜びを感じます。夏、冬に毎年とるバカンスで様々な場所に行き、そこで友人や家族への贈り物を買うことが多いです。安いものもあれば数十万円するものまで気に入ったものであれば値段はあまり気にしないです。パリでプレゼントを購入する際は、日本雑貨が喜ばれるので買うことが多いです。日本人が着物や日本雑貨を売っている「kimonoya」というパリ市内の店で購入します。自分も日本に住んでいたことから日本雑貨の目利きには自負があります。たまに子供達を連れてパリまで出て、外食をするのも楽しみの一つです。

情報収集方法

情報収集方法は昔と変わらず

情報は主に新聞とラジオから。テレビとインターネットはほとんど活用しません。新聞(ル・モンド紙)、TV(BFM局、RAI局)ラジオ(France culture)が主な情報源で毎日視聴しています。インターネットはあまり得意ではなくSNSもフェイスブックのメッセンジャーを利用する程度であまり活用しないです。情報誌では週刊誌のL’OBSを定期購買している以外は気になった号を買うくらいですね。

日本文化に対して

和紙を学びに日本へ

和紙に魅せられ、和紙とギルティングのコラボを実現すべく、2008年から「JAPANブランド育成支援事業」に参加し、日本の五十崎町で和紙の伝統的な作法を学びながら、和紙を使った作品を多数作成しました。元々日本に興味があったが、住んでみてより好きになりました。
「モノづくり」への探究心には日本独特の拘りがあり、作品の良し悪し以外にもその哲学が人を惹きつける要因だと実感しました。ヨーロッパ、特にフランスで日本文化や製品が受け入れられる要因はそこだと思います。今後、和紙以外でもまたぜひ、日本関連のワークをやりたいと考えています。
とりわけ日本で感銘を受けたのは自然です。特に日本の自然の厳かな雰囲気は心が洗われるようで好きで、中でも特に佐渡島は印象に残っています。

成功者、富裕層の定義

成功とは実る過程で自分がどれだけ満足感を得られるかが重要であってお金とは関係がない。充実度こそが豊かな暮らしだと思います。お金を持っていても幸福感を感じられない人もいるし、富裕層というイメージが湧かないので定義が難しいです。

ウルヴィツキ氏の御用達お店~メロディ・グラフィック(Melodie Glaphiques)

店名 : メロディ・グラフィック(Melodie Glaphiques)
所在地 : 10 Rue du Pont Louis-Philippe, 75004 Paris
電話番号 : 01 42 74 57 68
営業時間:火~土 11:00~19:00、日、月14:00~18:00
ウェブサイト(Facebook):https://ja-jp.facebook.com/pages/category/Home-Decor/M%C3%A9lodies-Graphiques-541446209366781/

インプレッション

夫婦で経営する文具専門店

マレ地区南部のPont Louis-Philippe通りにはモダンな文具店が多く立ち並びます。中でもアンティークな雰囲気が漂う年季の入った店構え。人当たりの良いイタリア人Giacomoと日本人の奥さんのヒトミさんが経営している文具店はパリでは知る人ぞ知る本物志向のお店です。万年筆を使う人というニッチな需要に応えるために店内には年代物の万年筆やペン先、インク瓶などが置かれており一般的な文具店とは違い時代を遡った感覚になります。外観もクラシックなパリのブティックのお装いをしていて見栄えします。

お店の概要

夫婦で経営する文具専門店

マレ地区の南に位置する陽気なイタリア人Giacomoと日本人のヒトミさんが経営している文具店。年代物の萬年筆のペン先からノートまでカリグラフィーやアート関係の品揃え。日本製のものも多く扱っている。プロや美大学生が自分用に購入しにくる場所でありながら、置いてある商品はギフトとしても人気でクリスマスや誕生日プレゼントととしても売れているそうです。

カリグラフィー教室

お店の地下にあるアトリエの隣にはメトロが通っており、電車の通過音聞きながらヒトミさんによるカリグラフィのワークショップを定期的に開いている。ヒトミさんは個人でカリグラファーとして活動しており、フランスの高級ファッションブランドのファッションショーの招待状や様々な手書き案件にも対応しているアーティストです。

顧客

プロや美大生といった専門性の高い顧客が多い

専門性は高いが客層は限られておらず、プロや美大生以外でも趣味でカリグラフィーをやってる人や少なくはなったがまだいる万年筆ユーザー、普通の手帳を買いに来る人など様々です。やはり専門性高いので常連客は多いです。どちらかと言うと女性の方が多い様です。

世界各国からくるお客さん

立地から観光客も多い。観光客にとってもフランスの年代物の文具に関心を持って店に立ち寄ってくれる人も少なくないとか。世界中から来た来店者からのメッセージがお店の奥に無造作に置かれた分厚い本の数々に寄せ書きされている。中には有名人によるものも多数あり、ミック・ジャガーやポール・マッカートニーのものもあるとか。日本の漫画家も珍しいペン先を求め若手大御所問わず来店し買いに来る。「アキラ」の作者、大友克洋もペン先を買いに来たことがあると言う。FIGARO JAPANで紹介されて以降日本人の若い女性観光客も良く見る様になったそうです。

品揃え

オリジナルの商品も多数

10ユーロ代の万年筆、お店オリジナルの三角便のインクは常に売れている商品とのこと。Giacomo氏が自ら作成している皮のクラフト手帖ももちろんお店オリジナルの商品。日本からの商品も人気でミドリカンパニーの手帳も好調な売れ行きだとか。最近のベストセラーはベニスのアーティストが作った栞。アンティークな柄や絵が刻印されている栞で10ユーロ〜30ユーロ。入荷した途端に売り切れる人気商品だとか。厚紙に緻密な刻印がされているこのしおりの製造方法はアーティストの企業秘密だそうです。商品の購買は大手から個人アーティストなど仕入先は様々で多く取り寄せている日本の商品の取り扱いにはむしろ慣れている。

宣伝方法

SNSがメインの広報

ホームページは存在しておらず、2人でFacebook とinstagramをメインに広報活動しています。ワークショップの開催通知や商品の入荷などの情報を発信しています。それ以外では様々なメディアに取り上げられる事で知名度が上がりました。特に雑誌の影響力は強く感じています。

ウルヴィツキ氏の御用達お店~ワフプリュス(Waf+ Kyoko Kanasugi)

店名 : ワフプリュス(Waf+ Kyoko Kanasugi)
所在地 : 2 Place du Marché Sainte-Catherine, 75004 Paris
電話番号 :01 48 87 30 24
営業時間:火~土11:30~13:00、14:00〜19:00
ウェブサイト:https://www.lamaisondusake.com/

インプレッション

アンティーク生地をリメイクして作られた全て一点物

パリの4区の閑静な通りの角に位置するWaf+。ショーウィンドウ越しに展示されているヴィンテージの着物が目を引きます。日本で仕入れた着物や着物生地をを使ったリメイク品が店内には所狭しと並べられています。展示されている生地の美しさに惹かれ、通りすがるパリジャンがもの見たさに良く来店するそうです。伝統的な生地ならではの色合いは落ち着いていて、なおかつ繊細で現代のデザインではあまり見られない様なモチーフが特徴的です。

お店の概要

日本の技術や製品を紹介できるセンターになりたい

Waf+ は日本の古い着物や帯をリタッチして作られたワンピースやシャツ、小物を販売しているセレクトショップ。着物のリメイクをしているのがオーナーの金杉さん。元々金杉さんは広島大学でフランス語の講師をされており、定年後に以前からやられていた着物のリメイクをパリでやりたいという思いより2015年の10月よりお店をオープンしました。着物を通して文化と製品を発信できる場所を作りたいと考えています。日本のテレビ番組でも紹介され、今パリで活躍するアーティストしてオーナーの金杉さんも有名です。昔パリに留学で来ていたので言語だけでなくフランスの文化に深い理解がある金杉さんだからこそ、ターゲットを明確化しどの様にパリで商売をするかの戦略が立てられています。

定期的に行う交流イベント

地下にはサロンがあり、日本人の書道家を呼んだ書道教室や和菓子のティーサロンなどを行なっております。参加者はフランス人で日本の身近な文化を敷居を高くせず、少人数でこじんまりとやります。イベント通して気取らないありのままの日本文化をパリの人に紹介することを目的としています。

顧客

地元客から観光客まで

常連客が少しづつ増えてきたとの事。半分は地元の人で残りは観光客。近くに住んでいる人たちにも認知され始めたとか。買わないにしても目を引く日本織物のディスプレイに惹かれて入店する人が多数いるとのこと。女性だけでなく男性客も少なくなく年齢層もまちまちだそうです。一番混雑する時間帯は木曜日と金曜日のアフター5で、多くの仕事終わりのパリジャンが立ち寄ります。

若者にも人気

和柄の羽織ものがパリジェンヌの間でのブームとなっていて、若年層の常連も少なくないです。羽織ものは大体75ユーロからと安くわないのですが、他では見つけることができないヴィンテージ生地の価値も理解して買っていきます。ポシェットからヘアバントと安価な小物も多く、これらの商品は若者に人気だそうです。

品揃え

老若男女が楽しめる品揃え

日本の着物市から仕入れた生地でシャツからぬいぐるみまで様々な作品を製作している。紬の形状を残し少しリタッチしたり、仕入れた生地の形状や柄からインスピレーション受け作品を作っています。ポシェットなどの雑貨系は高くないのもあり良く売れるとの事。着物は羽織物として若い女性に人気。女性だけでけでなく男性が着られる着物やシャツも取り扱っている。何が売れるかいろいろ試しています。雑貨のテストマーケティングなども商品が良ければやりたいとのこと。

生地選びが最も重要

生地の買い付けに最も力を入れています。買い付けのポイントは単純な物の良し悪しもそうですが変わった柄や珍しい柄に金杉は目がありません。昔の和柄には製作者の強い自己主張があり、現代ではあまり見られない奇抜さがあって、そこがヴィンテージ生地ならではの価値なんだとか。
生地自体安く手に入ることがあっても輸送量が高いので、必然的に割高にはなっているが客層のほとんどの人は物の価値を理解して買っていくそうです。

宣伝方法

インスタグラムとFacebookで作品をアップしながら宣伝しています。そのほかには日本文化を紹介する催しを定期的に開いて顧客との直接コミュニケーションをとる機会も定期的に設けています。また所有している200人以上の顧客リストから、メールでイベントの告知などもします。

ウルヴィツキ氏御用達のお店~スムスム (SUMSUM)

店名 : スムスム (SUMSUM)
所在地 : 25 Rue des Ecouffes, 75004 Paris
担当者 : Mqy Wiesem
電話番号 :01 45 68 91 03
営業時間:日~金 10:00~22:00、10:00〜22:00
ウェブサイト:https://sumsumandco.com/

インプレッション

パリ市内4区にあるマレ地区北部のユダヤ人街に去年オープンしたばかりの茶菓子店SUMSUM。今パリで大人気の中東料理「ファラフェル」の有名店「L’as du Fallafel」の向かいにあります。ここはユダヤ人が多く住んでおりユダヤ人が経営するお店がいっぱいあります。土曜日は店が閉まって少し閑散としますが観光客は常に多くいるスポットです。店内には代表商品の色とりどりのハルヴァがすぐにテイスティングできるように裸のブロック調に陳列されています。愛想の良い店員に頼むとその場でハルヴァを切り、味見をさせてくれます。ハルヴァをしらない人も多く店の中を見て興味深げに立ち寄る人も少なくないだとか。

お店の概要

中東菓子ハルヴァとは

ハルヴァとは中東がルーツと言われているゴマと穀物と砂糖を練り合わせて作ったお菓子。まだまだ認知度は低いが若い女性を中心に少しづつ認知され始めており、ヨーロッパで市場を広げたくパリに3店舗も展開しましました。パリでの挑戦は商品のポテンシャルを見極める上でとても最適な場所なのでパリ進出をしたそうです。甘さは控えめで糖尿病の予防になるとして健康志向の人達から注目を浴びています。スーパーなどにもハルヴァはありますが、今パリの市場に出回っているハルヴァより原材料、製造工程からクオリティが全く別物だそうです。

オランダ発のブランド

扱ってる商品の起源は中東となるがアムステルダム発の茶菓子店。もともとあるお菓子ですが再ブランディングすることでオランダ発の新しいものとして「SUMSUMのハルヴァ」として広めていきたいです。オランダに二店舗展開し、パリに1店舗、2019年内にはアメリカでも1店舗開く予定です。海外進出1店舗目としてパリで商品のポテンシャルを再確認し米市場に挑戦していきます。SUMSUMはアラビア語で「ゴマ」を意味する。

顧客

ほとんどは観光客

客層は幅広いが立地的にはユダヤ系やアラブ系フランス人が多く年齢もまちまちです。場所が観光地なため70パーセントは観光客だそうです。観光客にはハルヴァを知らない人も多いので、商品を見えやすく店頭に並べてテイスティングさせる事が大事だそうだ。ギフトで買う人と自分に買う人の割合は半々程度とのこと。女性客の方が多いです。

品揃え

メインはハルヴァ

ブロック調の大きな色とりどりのハルヴァが店内には並べられており、店員に切ってもらいながら味見ができます。定番はゴマ味ですが店の一番人気の味はピスタチオ味です。

種類が豊富な茶葉

メインのハルヴァのお供になるドライフルーツ入りの茶葉も目玉商品の一つです。一番人気はパッションフルーツ入りの紅茶葉。商品はシーズンごとに入れ替えます。今は四つ茶葉を買うと一つタダになるという割引もおこなっており、すごく良く売れている商品です。タリーニというペースト状のゴマも人気でこの商品はファラフェルに塗って食べたりします。ダーツの蜜も珍しい故に、人気な商品の一つです。

宣伝

主な宣伝活動はSNS

facebookとInstagramを利用して、お店の商品や割引情報を発信しています。サイトではオンライン販売もしており、海外からの購入も可能です。

公開日:2019年 11月 14日

タグ:富裕層