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COLUMN



「地道な努力でなしえた畳の輸出」 ‐森田畳店‐


  • 2017-02-23
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東京の下町にて親子で営む畳店

森田畳店は1934年の創業以来、東京都荒川区で親子3代にわたって事業を営んできた畳屋である。

畳というのは、おおまかにいうと、芯にあたる「畳床(たたみどこ)」、表面に貼り付ける「畳表(たたみおもて)」、縁につける「畳縁(たたみぶち)」から構成される。この畳は、新築あるいはリフォームの際に、建物の寸法に合わせて新しく作られた後、色あせや傷みが出てきたらすぐに交換するのではなく、畳表を裏返す「裏返し」、畳表そのものを交換する「表替え」を行い、畳床が傷んではじめて「新調」するという過程をたどる。こうした畳の寿命に合わせて、工務店や一般家庭などからの注文に応じて作業を行うのが、畳屋の仕事である。

森田畳店では、二代目の森田精一氏とその息子の隆志氏と通いの職人の合計3名で、採寸、畳床のカット、畳縁の縫い合わせ、敷きこみといった作業を分担して行っている。手作業が多いため、一日に仕上げられる数には限界があるので、大規模な仕事を請け負った時は、地元荒川区の組合加盟の畳屋に協力してもらったり、逆に仲間が多忙な時には助人に入ったりと、地域内で助け合いながら事業を営んでいる。

近年は和室の減少などから畳の需要は減り続けており、工業統計調査(経済産業省)によると畳製造業の出荷額は1993年の1,826億円から2014年の662億円まで減少。それに伴って事業所数も7,354から3,882まで減ってしまっている。

こうした経営環境の変化の中、同店では、1995年に同業他社に先駆けてホームページを開設。立ち上げから運用まですべて手掛ける隆志氏によれば、「『畳店』で検索をしても1ページの半分ぐらいしかヒットしない」ぐらい、当時はまだ畳店のホームページが珍しかったという。

ホームページがきっかけで届いた海外からの注文

同店の畳の輸出はこのホームページがきっかけとなった。開設から3年ほどだった頃、ホームページを見たオランダに住む日本人から畳の購入について相談が寄せられた。せっかく届いた異国からのリクエストに何とか応えたいと思ったものの、畳の輸出はそんなに簡単ではなかった。畳のサイズは1畳、910mm×1,820mmというのが一般的であるが、関西地域の本間、中京地域の三六間、関東地域の五八間など地域によってサイズが異なり、さらに集合住宅でよく使われる五六間(団地間)もあるなど規格が統一されていない。しかも、部屋の大きさというのは正確な正方形や長方形にはなっておらず、注文毎に職人が納品先に出向いて、寸法を丁寧に測り、それに合わせて畳を加工する必要がある。加えて畳の素材や色・デザインは多数あって、それを依頼主と話し合って決めなければならない。さらに、輸出となると、関税も調べなければならないし、使う素材によっては植物検疫も受けなければならない。そして、何とかそれらをクリアしても、物流の問題も発生する。通常、国内であれば自社トラックに載せ、簡単な包装のみで現地に運んで自ら敷きこめばいいが、海外の場合は寸法を測るのと同様、現地まで運びに行くわけにはいかないので、長旅に耐えられるようにきちんと梱包し、輸送手配をフォワーダーと呼ばれる貨物利用運送事業者に依頼する必要があった。こうしたことから結局、この取引は成約せずに終わってしまった。しかし、この時調べたことを、備忘録の意味も込めてホームページに載せていたところ、1999年、再び、今度はオーストリアに住む日本人から畳の相談が届き、これが記念すべき輸出第1号になった。

こうして苦労の末に輸出を実現させた同店であったが、この時はまだ手間ばかりかかって実入りの少ない輸出事業に対して周囲の反応も冷ややかであった。それでも輸出に関して掴んだ情報はホームページに掲載し、さらに英語の詳しい知人の協力を得て英文ページも1ページだけだったが製作した。その結果、不定期だが海外からの注文が入るようになった。しかも、2001年には当時英国にあった日系百貨店から宴会場の畳替えを頼まれたり、自動車メーカーの英国現地法人でコンセプトカーへの畳の敷きこみを頼まれたりということが続いたので、実際に渡英して作業を行うこともあった。こうしたこともすべてホームページに掲載し、どんどん内容を充実させていった。ところが、国内では2004年頃、主力となっていたリフォーム会社との取引が、低価格を武器に参入してきた企業に奪われる事態に陥っていた。そこで、国内市場の厳しさを目の当たりにした同店は、可能性を感じていた輸出に力をいれようと頭を切り替えた。

お客様との丁寧なやりとりを心がける

こうして本格化させた輸出事業であったが、取り扱う商品も前述のとおり、基本的にオーダーメイドであって、お客様とのやりとりが頻繁に発生する。その上、畳床であれば建材、稲わら、畳表はい草、和紙など素材の選択肢も多く、縁の有り無しや畳表の織り方や色まで含めると多種多様となる。その上、畳縁の柄も伝統的なものからキャラクターものまでと、ありとあらゆるものが出回っており、その中から相手にあったものを決めてもらうのは非常に骨が折れることだった。

しかし、畳は日本固有の製品とはいえ、実際には、既製品であれば大手ショッピングモールを通じて世界中で手に入る時代になったし、主要な国では現地にも畳店は存在する。それでも海外から問い合わせが入るのは、本格的な畳を手に入れたいと思うからであって、できる限り、相手の希望に合ったものを届けようと考えた。

現在までに輸出実績は、欧米、中東、アジアなど世界各国に及ぶが、こうした世界各国からの問い合わせにも、基本的には翻訳ソフトを駆使しながら隆志氏自らが対応している。

まず、正確な寸法を把握するため、同店では、お客様から寸法を送ってもらった後、必要に応じてコンピュータで図面を作成し直した上で、追加で採寸が必要な箇所を明記して送り返し、計測してもらい、畳の敷き方を提案している。そうした上で費用などを含めた了解が得られれば入金をしてもらい、製作に取り掛かる。「言葉だけだと絶対に伝わらない」と話す隆志氏によれば、図面や場合によってはイラストや写真を使ってやり取りするため、非常に時間がかかるが手間は惜しまないという。

次に、製作においても、納品後に指定したサイズと異なるといったことを防ぐために、作業途中の段階と仕上げの段階でチェックをはさみ、ミリ単位の誤差でも許容範囲を超えると手直しをする。「直しに来てくれと言われても、いけないですからね」と隆志氏は苦笑する。また、輸出の場合は顧客が敷き込みを行う過程で畳の側面や裏側に手が触れることから、糸の緩みや汚れが無いように加工を施すなど各段階できめ細かな対応を心がけている。

試行錯誤のうえに掴んだ輸出のノウハウ

輸出ならではの試行錯誤もたくさん行った。例えば、最初のうち、輸入の際に関税を徴収されたという苦情が多数寄せられ、詳しく聞いてみたところ、輸入経験のない購入客が商品価格に関税が含まれていると勘違いしていたことわかった。そこで、東京税関やJETRO(独立行政法人日本貿易振興機構)などへ問い合わせ、輸入関税に関する情報を集め、国別の畳の関税一覧を作成してホームページに掲載した。ほかにも、国別の植物検疫情報など、輸出に関する事項について掲載し、トラブル発生や問い合わせを減らす工夫をした。一方で、ホームページが唯一の営業手段だったことから、不定期ではあるが大手ポータルサイトのリスティング広告を出したり、ウェブサイトのアクセス解析ソフトを使って、検索ワードを分析し、新たなページを追加したり、更新するなど検索結果が上位に来るよう工夫した。

また、「本当に苦労しました」と話す梱包は、最初ベニヤ板で囲んでみたものの、想像以上に時間がかかる上、輸出先によっては検疫対象とされ、燻蒸処理が必要となるなど問題を抱えていた。そのため、効率よく梱包でき、かつ耐久性を確保できる梱包材の確保が課題となり、大きなビニール袋や発泡スチロールなど梱包に適した材料を見つけては試してみるといった工夫を繰り返した。その結果ようやくたどり着いたのが段ボールだった。当時近くの段ボール箱メーカーに相談を持ちかけたところ、ダブルフルートという二重構造の段ボールを薦められ、試してみると他の材料に比べて加工しやすく、また作業の過程で生じる段ボールの切れ端も、緩衝材として再利用できるなど使い勝手も良かった。心配していた耐久性も段ボールを4重、5重に梱包することで落下や破損に耐えられ、雨や湿気などの水濡れには畳を1枚ずつ防水紙で包むことで対応できると判断し、新たな梱包方法へ切り替えた。

他にも当店独自の工夫を取り入れている。それは畳表や畳縁の実物のサンプルを無料で発送するというサービスで、「ホームページを見ても分からないから、実物を見て、触ってもらって、選んでもらうしかない」と輸出開始当初より、海外からの注文の場合には、地域を問わず希望者全員に送っている。サンプルの材料には、畳の製作の過程で余った畳表と畳縁を使い、畳表には英語の説明書を添える。全て手作りによるもので、手が空いた時や休日を使って作成している。

そうした取り組みは、手間も経費もかかるために同業者からも否定的な意見もあったが、結果的に海外顧客からの信用を得ることにつながった。1999年の輸出開始以降着実に実績を重ねてきた同社の輸出事業は50カ国以上にのぼり、海外の建築設計士から同店が指名されるまでに成長している。

輸出事業を柱に育てる

同店にとって輸出事業は、経営を支える重要な位置づけとなり、売上の4割を占めるまでに大きくなった。最近は、日本文化の流行の効果に加えて自然素材の畳が注目されつつあり、手ごたえを感じている。海外顧客から舞い込んだチャンスを地道な努力によってつかんできた森田畳店は、さらなる市場の獲得を目指している。

森田畳店 輸出事業担当

森田 隆志

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所在地  東京都荒川区西日暮里4‐28‐9

創業   1934年

資本金  ‐

従業員数 2名

事業内容 畳の製作、補修

電話番号 03-3828-0613

URL  http://www.tatami-mat.net/index.html

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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