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COLUMN



[ 海外出展 ] INSIGHT 21 ビジュアルの情報発信

  • 2018-03-06
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国内にいながら世界をめざす時代、SNSとローカルが切り札です

 

『東東京モノヅクリ商店街』など、新たな価値を提案するプロデュース力で数多くの中小企業の魅力を引き出しているKIRAさん。むやみに海外に出るのではなく、「国内からできること」を示唆する視点が新鮮です。

 

KIRAさん

 

 

本当に海外展開する必要がありますか?


海外進出や展示会出展のご相談があると、まず「なぜ、海外に出るのかという目的が大事ですよ」とお伝えしています。率直に言うと、「本当に出る必要がありますか?」ということですね。
というのは、「出たら何か当たる」みたいに考えていらっしゃる方が、いまだにすごく多いからです。「とりあえずニューヨーク行こうよ!」みたいなノリです。
でも、行ったからには必ず回数を重ねて継続しないと効果は出ませんし、本気で海外に売りに行くのか、海外に行った実績を国内でPRに利用するのか、あるいは勉強のために行くのかといった目的をはっきりさせないと、やるべきことが見えてきません。勉強のためであれば、何を学び、リサーチしたいのかということを考え、それなりに準備してから行かないと、お金をかけて「ただ出ただけ」になってしまいます。

 

 

海外では、まず「ビジュアル」で信頼できる企業かを判断される


本気で海外展開をするのでしたら、やはり最低限、英語版のWEBサイトやパンフレットは準備する必要があります。
その際、ビジュアルの重要性に気づいていない企業さんがすごく多いですね。たとえば、「商品写真を送ってください」とお願いすると、iPhoneで適当に撮ったようなものが送られてきてしまうのです。そのような写真では、それなりの海外展示会に出ようとしても、まず審査で落とされてしまいます。
WEBサイトのデザインも同様です。以前、商品自体は良くて海外からコラボしたいという話が来たのに、サイトを見た途端、「やっぱりやめておきます」と言われてしまったという企業がありました。海外から日本の企業を見る際、まずはビジュアルでしか判断ができないので、そこが洗練されていないと、「この企業、いまいちだな」と思われてしまうのです。
信頼性に関わるところですから、そこはやはり実績のあるプロのカメラマンやデザイナーを起用したほうがいいと思いますね。予算的に厳しい事情もあると思いますが、信念を持って良いプロダクトをつくっていれば、その思いや可能性に共鳴して、低予算でも一緒にやりたいというクリエイターはけっこういますよ。出会いはやはり紹介が多いので、日頃からの人と人とのつながりが大事だと思います。

 

 

「メイド・イン・ジャパン」にアドバンテージはさほどない


中小企業の社長さんは本当に意欲的で、「何でも試してみる」「すぐやってみる」という方が多いですね。しかしその結果、プロダクトやサイトに統一感がなく、世界観がバラバラになってしまっていることがあります。
また、「伝統工芸で、良いものをつくっている」と自負していても、海外では通用しないことが多いです。海外に価値を伝えたいのであれば、海外向けに洗練させたプロダクトだけをまとめたサイトを別に用意するといった対策が必要です。
そして勘違いしてはいけないのは、「メイド・イン・ジャパン」にアドバンテージはさほどないということです。それが売りになると思っている人が多いのですが、海外では「どれだけプロダクトとして優秀なのか」をフラットに判断されるため、「日本でつくっているからすごい」みたいな土俵では闘えません。機能もデザインも世界レベルで闘えるものにブラッシュアップして持って行かないと、振り向いてもらえないのです。
まずは見栄えの良さとプロダクトとしての優秀さがあり、その次に商品開発のストーリーや企業理念のメッセージがあれば、後押しとなります。「メイド・イン・ジャパンですよ」ということも、そこではじめて効いてくる情報です。

 

「プロダクトを入り口にOEMを取る」というビジネス戦略も


国際ファッションセンター株式会社とクリエイティブチーム『SELF』による、東東京のモノヅクリ企業が集まる架空の商店街『東東京モノヅクリ商店街』では、開発したプロダクトを入り口にしてOEMを受注するというスタイルを増やしています。海外展示会でも、じつはOEMを取りに行くというのをバックエンドにしてプロダクトを打ち出すというビジネス設計は強い。出展したプロダクトが売れなくても、「この素材は何だ?」から入ってもらって、取引につなげるイメージです。買い手は、気になる商品があると必ずサイトをチェックするため、やはり海外向けに自社サイトを整えておくことが取引の決定力となります。(KIRAさん)

 

「プロダクトを入り口にOEMを取る」というビジネス戦略も

 

 

SNS で拡散したくなるような洗練されたビジュアルの発信を


写真やサイトが洗練されていると、ネット上で情報拡散してもらいやすいという利点もあります。たとえば、購入者やコラボしたクリエイターが自分のサイトにリンクを張り、「俺はここのファブリックを使っているんだよ」と、すすんで表に出してくれるのです。
そのとき、企業の規模や知名度、所在地などはまったく関係ありません。徳島をベースに活動する藍師・染師『BUAISOU(ぶあいそう)』は、徳島県上板町の地域おこし協力隊となった2人が移り住み、藍の畑づくりから始めたのですが、商品もロゴもおしゃれで、ファクトリーも元牛舎をかっこ良くリノベしているんです。それを上手に撮影して、Instagramに上げているんですよ。それを見た海外の人たちの間でどんどん拡がって、いまや「コラボしたい!」という海外のデザイナーやアパレルブランドが後を絶たないような状況になっています。
このようにInstagramを使ったマーケティングには大きなチャンスがありますし、もはや必須と言えるでしょう。ただ、だいぶ乱立しているので、単にきれいな写真というだけでは火がつかなくなってきました。
これからフォロワーを増やすのであれば、トーンを統一したクオリティの高い写真を毎日ポストするのは大前提で、さらに写真の向こう側に職人さんがいるというような“現場の息吹”を伝えることが大切です。
「そこにしかない」という何かを感じたとき、人は「フォローしなきゃ」と思います。『BUAISOU』も、東京ではなく徳島という、どこにでもある景色ではないものを美しい写真でポストしたこと、さらに藍染という日本ならではのプロダクトに取り組む自分たちの姿を伝えたことで、多くの人たちに支持されたのです。

 

BUAISOUのInstagramページ

 

 

コト消費を促すローカルな活動で国内にいながら世界進出も可能


SNSの登場で、非言語のコミュニケーションが発達し、ビジュアルで世界中の人たちと話ができるようになりました。今後、世界はさらにフラットになっていきます。そのような世界ではどのようなものが残るのか。
チームラボの猪子寿之さんがおっしゃっていたのですが、ひとつは「グローバル・ハイクオリティ」という、世界のマーケットで闘える非常に質の高いものです。クオリティをとことん磨き上げ、世界と闘っていかなきゃいけないわけですね。
その一方で、「ローカル・ロークオリティ」を極める手法もあります。地元のコミュニティに根差し、身近な人たちの共感が得られるものであれば世界に出ていくことができます。
たとえば、「新しいプロダクトをつくりました」とSNSにポストしたとき、「いいね!」をたくさん押してもらえれば、じわじわと拡散していきますよね。ローカルから世界への展開に成功している企業は、自分たちに共感し、応援してくれる人たちによって、SNSなどを通じてコミュニティを世界へと広げています。
しかし、やはり1社単独では認知されにくいので、地域や同じ業種同士で組んで協力し合ったほうがいいですね。
いま、僕たちが挑戦しているローカルな取り組みは、谷中の『上野桜木あたり』という、古民家を改装した複合施設です。そこはもともと茶会が開かれていたような風情のある家屋で、ビールやパン、オリーブオイル、ファッションのショップやギャラリーが路地でつながったユニークな空間です。そこにインバウンド(外国人観光客)を呼び込もうと意識しながら週末のイベント等を開催しています。
僕たち一人ひとりがパリやニューヨークに出展するのは難しいですが、海外からの観光客に見てもらい、Instagramに上げてもらえばすごい宣伝になるわけです。そして有名になってから海外に行こう、あるいは向こうからこっちに来てもらおうという発想です。WEBサイトを海外向けにもつくっておけば、海外から注文が入ってきます。
このように、いまは海外に行かなくても海外進出が可能な時代です。そのポイントは、“コト” の消費をどこまで演出できるかということ。プロダクトのクオリティで押しきれないのであれば、ワークショップなどの体験(コト消費)をしてもらうことで、「楽しい!」「いい商品だった!」と広めてもらえばいいのです。
極論すると、やはりこれからはコミュニティスペースづくりですね。モノ・コト両方の消費ができるコミュニティスペースを、地元のメーカーさん同士でどのようにつくり上げるかが勝負だと思います。「うちはもうこの蔵は使わないから、世界に向けてここで何かやろうよ」というような、楽しく意欲的なアイデアがどんどん出てくるといいですね。

 

『上野桜木あたり』のある路地の様子

 

『上野桜木あたり』

 

 

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