海外進出ノウハウ

[ 海外出展 ] INSIGHT 11 食品の海外商談

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価格、付加価値、輸送の工夫で、成約率はグッと上がります

 

2005年から食の海外販路開拓に取り組んできたJTB 西日本の西川太郎さん。アジア市場での商談会を運営してきた立場から、より成約率が高くなるポイントをお伺いしました。

 

西川 太郎 さん

 

 

バイヤーの目線で弾力性ある価格設定


JTBグループが、シンガポール、香港、台湾、マレーシア等で開催する食産品の商談会「Japanese FoodsPremium Trade Fair」に取り組んで、今年で4年目を迎えます。“両思い”になる可能性の高い商談をセッティングするため、事前にサプライヤーや海外バイヤーの商談希望を把握し、開催後は商談評価アンケート等を実施しながら成約状況を分析してきました。その中で見えてきたさまざまな課題があります。
まず1つめは「価格の改善」です。8割もの海外バイヤーが、日本企業に対してもっと柔軟な価格設定を望んでいます。
海外のバイヤーは、まず消費者に受け入れられるか判断するために、フェアでのテストマーケティングをしたいという気持ちが強いのです。だから、まずはごく小ロット(1ケース単位)で試したいのですが、「うちは最低10ケースからです」と譲らない生産者さんが結構いらっしゃるんです。そのような通り一遍の対応ではなく、お試しセットのような商品導入のための最小ロット価格を含み持っておいたほうがいいと思います。小ロットでは利益が出ないかもしれませんが、そこは先行投資としてとらえるべきです。そして、それだけの好条件を提示するからには確実に取引してもらいたいと強い意志を示す姿勢が必要だと思います。
逆に、「大量に発注した場合はどれくらいのインセンティブがつくのか」ということを求められることも多いです。日本の生産者さんは、単純に単価×数量で価格を提示することがほとんどですが、「たくさん買うから安くしてほしい」というバイヤーの要望に柔軟に対応することで、さらに購入の意欲が高まると思います。

 

 

「付加価値」=「科学的根拠」で成約につなげる


2つめは、商品の「付加価値」です。日本産品は、現地のローカル普及品より高くても「美味しい」「安心安全」「ヘルシー」など高い評価を受けています。しかし、競合する他国産品やローカル普及品の品質向上が進んで競争が激化しています。そこで優位性を保つためには、「美味しい」プラスアルファの付加価値が必要です。「日本のものだから」という付加価値は、バイヤーにとっては前提条件となっています。
では、何を付加価値にすればいいかというと、「科学的根拠」を持つのも有効ではないかと思います。たとえば、いまアジアでは食の西洋化が進み、サラダなど生食をよく食べるようになりました。調理用のトマトは酸味があってもよかったのですが、サラダで使用する場合は糖度が求められます。弊社主催のシンガポールでの商談会では「糖度」を訴求していたトマトの生産者さんに人気が集中しました。酸っぱいかもというリスクを解消する「科学的根拠」を示すことで、一気に成約率が高まったのです。他にも、GGAP(Global Good Agricultural Practices:農業生産工程管理の世界基準)認証を取っているとかオーガニックや減農薬など、なんらかのエビデンスを提示することで付加価値を高めることができます。

 

 

「輸出輸送」へのこだわりが海外販路創出の切り札となる


3つめは、「輸出輸送」へのこだわりです。商品に合った最適な輸出輸送方法、輸出輸送するための梱包、輸出輸送出荷時の商品状態など、自ら工夫して考えていただきたいところです。実際、我々が商談会時にバイヤーに行ったアンケートでは、成約につながらなかった理由のトップが「輸送」なんです。とくに輸送コストの見直しは、成約につながる最大の改善ポイントです。
なぜ、その視点を売り手側に持っていただきたいかというと、輸送コストにメスを入れずに自分たちの商品ばかり見て、「100円を80円に値下げしたら買ってくれるのかな」とやっていては、精神的にも疲弊してしまうからなんですよ。
輸送コストの低減は、ちょっとしたアレンジでできるんですね。ある生産者さんは、1つ1000円で輸送していた3キロの箱を、バンドルでまとめることで3箱1000円で輸送できるようになりました。梱包材や箱を軽いものに変えて、5.1キロの荷物を4.9キロにするだけで、5キロ未満の料金が適用されて輸送コストがガクッと下がったケースもあります。ケース重量1.0kgと0.99kgでは輸送コストが違うということを理解することが重要です。

 

 

商談会後のフォロー営業を見越した事前準備が肝心


商談会の前準備では、「商談会後の営業経費(出張費等)の計上」を考えていない方が多いです。商談会で成約見込みが立ってから実際に発注につながるまでに、決済や価格調整、包装デザインなど、実際の販売まではとても時間がかかります。フォロー営業は円滑な発注につなげるためにも必須です。そのため海外に行く渡航費も工面したうえで商談会に臨んでください。出展者が陥りがちなのが、商談会をやりきった達成感で終わってしまうことです。「あー、良かった、みんながおいしいと言ってくれた」と満足しているケースが多いのですが、本気で商売につなげたいのなら、そこからがスタートです。
たとえば、食品見本市で成約の見込みが立てば、2~3週間後に海外にフォロー営業に行って契約を交わすなどスケジュール化しておくことで、成約を促すクロージングができます。
先ほどの糖度訴求のトマト生産者さんが成功したのも、じつはそのような営業力がポイントでした。糖度訴求で成約の見込みが立ったところで、念押しで翌週に相手企業を訪問しているのです。わざわざ来てくれたということで、先方はその場で発注書を書いてくれたそうです。バイヤーさんって、ドライなようでいて人情味あふれる人が多いのが現実です。つくり手の真剣さに打たれて、「よし、この人から買おう」となるので、これぞと思ったバイヤーには、とことん情熱を持って接していくべきだと私は思います。
加工食品でバイヤーから求められる賞味期限は6ヵ月と言われますが、農産物の場合は収穫時期が短いため、タイミングを逃すと取引ができなくなります。収穫がまだ先だからと先延ばしにすると、成約のチャンスを逸することになります。収穫時期に関わらず商談会後1ヵ月までが勝負だと思います。半年後にしか営業に行けないという状態では頓挫します。とにかく先手必勝、スピード優先で準備をしておいてください。これも見落としがちですが、非常に大事なポイントです。

 

 

インバウンドの増加で「本物の味」が人気


商品開発で押さえたいのは、「訪日(インバウンド)効果による志向の変化」です。私たちはものすごく肌で感じていますが、いま海外のお客様は、「本物」を求めています。日本の食文化をよく知っていますし、非常に関心が高いです。
わかりやすい話をすると、日本のコンビニのおにぎりって、おいしいですよね。外側が固めで、中がふわふわという食感が、海外にはないんですよ。だから、おにぎりの本当のおいしさを知らない消費者ばかりだったのですが、彼らが日本に来てコンビニでおにぎりを食べて、「なんておいしいんだ!」という体験をして帰っていくわけです。その訪日効果は、いまや海外のコンビニを変え始めています。シンガポールのコンビニでは、「日本のおにぎりの食感がいい!」という消費者の声が高まり、現地で日本食レストランを手がける大手外食チェーン事業者におにぎりの製造をアウトソースして供給するようになりました。
ラーメンも、以前は現地好みの味にアレンジした店じゃないと受け入れられませんでしたが、インバウンドの増加で日本の人気店の味が知られるようになり、いま海外でも「一風堂」や「けいすけ」などが大人気です。面白いのは、日本の認識ではラーメンは大衆的なソウルフードですが、海外ではこじゃれたデートでも行くようなお店になっていることです。いま日本で人気の本物の味が求められていること、でもその価値観には日本人とギャップがあることが、商品開発のヒントになるのではないかと思います。
マーケティングも、ざっくりしたものでは本当に通用しなくなってきています。とくにアジア各国のマーケティングは、3年前のものではもう古いです。すごいスピードで社会も消費者も変化し、多様化しています。少しの工夫で一気に売れるという夢があるのがアジア市場の魅力です。我々もJ’ s Agri 事業(日本産農産物等のEC等での輸出販売や輸出支援とインバウンドの一体的販売)を通じて日本の食と農の魅力を海外に広め、多くの生産者さんや地域振興に貢献したいと思います。

 

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〇商談で使う「生きた貿易用語」

 

米と米加工品を扱う生産事業者(Aさん)とシンガポールのスーパーマーケットと取引をしている輸入業者(Bさん)の商談です。

商談で使う「生きた貿易用語」

 

 

「生きた貿易用語」の解説

※1 ライセンス:米、酒、畜産物などを輸入する商社はライセンスを取得することが必要。販売ライセンスとは別です。

※2 添加物・着色料:例として、シンガポールでは、日本でよく使用されるステビア、紅麹、甘草を含む食品の輸入は禁止されています。

※3 港渡しでの価格:一般的に、商談先が指定する港・空港の倉庫までの輸送費と国内卸売価格を合算した価格。

※4 最低ロット:採算や輸送に適した量を勘案して設定する最小限度の発注量。導入期(お試し期間)では、バイヤーから最低ロットを抑える要望が出る場合があります。

※5 ケースサイズとケース総重量:混載の輸送費は、体積(よほど重いと重量)から算出します。ケースサイズは体積計算とコンテナスペース検討の材料となります。

※6 サンプル:現地取引先への営業ツールや販売時の消費者への試食、現地当局への認可申請等に利用することが一般的です。

※7 消化仕入れ:現地で売上げた分のみ購入する取引。売れ残った商品は販売ロスとなり、サプライヤー側の経費となります。

※8 リスク:債権回収、PL、販売ロス、輸入規制による差し止めなど、様々なリスクをできるだけ回避する調整がとても重要です。

※9 マネキン:ここでは販売員のこと。他に場所代や制服代、活動後の清掃費などを販売の経費として要求される場合もあります。

※10 料理レシピ:日本産品の食し方を知らない消費者向けで、現地語での提供が必須。

※11 社員が店頭で販売:日本のサプライヤーが店頭で販売すると現地消費者が信用してくれて売上にも直結するので、バイヤー側が最も望む協力内容です。

※12 インボイス:ここでは請求書。

※13 リードタイム:発注から納品までの日数・時間。

※14 リーファーコンテナ:ドライコンテナ(常温)に対して、冷蔵・冷凍で輸送するコンテナ。赤道付近では常温だと50℃超を想定する必要があります。

 

資料作成:株式会社JTB西日本 西川太郎