海外進出ノウハウ

[ 海外出展 ] INSIGHT 10 生産財の海外展開

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商社やローカルネットワークを活用して効率的な販路開拓を

 

長年、生産財の専門商社に勤務し、欧州、中華圏、ASEAN 諸国に駐在して生産財の営業に携わった鈴木 修さん。商社の意外な活用法や海外取引における注意点などを伺いました。

 

鈴木 修 さん

 

部品調達ドットコム

 

 

メーカーと商社が協力して営業活動をする時代


近年、「商社はいらない」という中小企業の方が多いのですが、うまく活用すればやはり販路拡大の強い味方になります。
たとえば、海外で成功しているある産業機器メーカーは、営業こそ自ら海外へ行きますが、その後の物流や商流はすべて国内商社に任せて販売しています。メーカーは商品を商社の国内指定倉庫に入れるだけで「引き渡し」は終了。さらに、国内決済ですから売上は「円」で回収しています。これは賢いやり方で、海外ビジネスの実態を鑑みると非常にリスクが少ないんですね。
ポイントは、営業だけは自前でしっかりやることでしょう。海外の営業担当者が3ヵ月に1度現地に赴き、商社の営業マンと一緒に現地のユーザーを定期的に訪問しています。
昔は商圏意識が強くて、メーカーが直接ユーザーに営業することを商社が嫌がる風潮がありましたが、いまはまったくそんなことはないですよ。むしろ、そこまで販路をオープンにできるのは信頼関係があるからです。
ところが、いまだに「自社製品がどこに納められて、どう使われているのか知らない」というメーカーが多いのは残念ですね。いまどき、商社に任せきりにしていてはだめです。「ユーザーと直に取引したいわけではありませんが、実際に現場を訪問して、うちの製品がどのように使われているかを見てみたいので、同行訪問をアレンジしてもらえませんか?」と頼んでみて、「ちょっとそれは……」と難色を示すような商社であれば、お付き合いしないほうがいいかもしれません。

 

 

商社のネットワークを販路開拓に活用する


商社は、現地ディストリビューター(販売代理店)として活用することもできます。とくに現地法人がある商社は、ものすごく情報を持っています。
私が商社のマレーシア現地法人に勤務していたとき、ある金型メーカーからASEAN進出の相談を受けて、拠点の選定、海外拠点づくりから売り先の紹介まですべてサポートしました。情報も売り先もほぼゼロという状態でスタートしましたが、大手メーカーの現地法人につないだのを機に、独自での販路開拓にも取り組まれ、取引先が着実に増え、いまではすっかり成功されています。現地で実績のある商社が間に入ることで信頼されやすく、スムーズに販路拡大ができるというメリットがあるのです。
語学に問題がなければ、地元のローカル商社(ディストリビューター、代理店)とお付き合いするのも一つですね。日系商社はやはり日系ユーザーに強く、ローカルはローカルに強い。日系とローカルをうまく使い分けて取引すればいいのです。商社を活用したほうが販路開拓しやすいのは、アジアも欧米も同じです。

 

 

競合メーカーのWEBサイトでディストリビューターを探す


ディストリビューターを選ぶ際、私がよく企業の方におすすめするテクニックは、同じ業界の競合メーカーのWEBサイトをチェックしてみること。すると、「OverseasAgent」と丁寧に各国の代理店を書いてくれているところがたくさんあるんですよ。そこに片っ端からコンタクトするのです。
競合メーカーが掲載している代理店は、まずすでに精査されているので、さほどハズレがない。そして競合製品を扱っているとしても、100%満足しているというのはあり得なくて、たとえば似たような製品で「もっとハイエンドの製品を補完しておきたい」というようなニーズがあることが多いのです。ですから、まずコンタクトをとってみることが大事ですね。
日本国内にある各国の貿易促進の政府機関にコンタクトをとってみるのもいいですね。日本でいえばジェトロのような機関の海外事務所です。現地の有益な情報を教えてもらえますよ。

 

日本に事務所を持つ海外機関の例

 

 

一国一代理店はNG
エリアごとに担当代理店を


基本的に、一国一代理店というのはNGです。よほど売り先が限られた商品なら別ですが、一つの国の市場を一つの会社でカバーしきれるものではありません。たとえばアメリカは広いですから、中西部、南部、西海岸、東部と、エリアごとに代理店を決めていくといいでしょう。
小さい市場でも一社では無理ですね。たとえば、マレーシアは人口も3000万人程度で一見小さな市場に見えますが、それでも生産財ユーザーは結構な数があると思います。もし1万社あるとして、そこにたった1社ですべてのユーザーに営業をかけられるでしょうか。「うちは3000人営業マンがいるから任せてください」というのはあり得ません。
複数の代理店と契約する場合、気をつけたいのは“交通整理”です。2社の代理店が同一ユーザーでバッティング(競合)した場合、そのユーザーとそれぞれの商社の関係性をしっかりと見極めて、誠心誠意対応することが必要です。
中小企業からこうした問題が出てきたと聞くと、私はいつも「良かったね」と言うんです。それはマーケットが動いているという証拠ですから。今まで誰もいなかったこの池に、石を投じてやっとさざ波が立ってきた。それはいいシグナルです。切磋琢磨しながら動いてもらってください。

 

 

決済は「100%前金」からスタート
ダメ元で値引き交渉も忘れずに


決済条件は、数百万円ぐらいまではT/T(Telegraphic Transfer Remittance:電信為替送金)が主流です。あるいはL/C(Letter of Credit:信用状取引)です。各国の商習慣や相手先との関係によっても変わってきます。
それよりも私が強く言いたいのは、海外ビジネスの支払い条件は「100%前金」が大前提だということです。
海外企業の方は営業に行くとニコニコともてなしてくれますが、支払いの話になったら「うちは100%前金じゃないと出荷しません」とシビアですよ。ところが日本人は甘いので、「これだけ買うから、支払いは30日オープン(来月末)にして」と言われると「わかりました」とOKしてしまうんです。それは海外ではアウトですからね。向こうが約束どおり送金してこなかったら、回収は困難です。
100%は無理な場合でも、受注生産ならせめて製造コスト分だけは前金でもらってください。コストが3割なら、前金を3割もらってから製造を始めるのでかまいません。
たまにあるのは、「うちは前金100%もらっているから」と胸を張っているケース。「受注する前に支払ってもらっているのですか?」と訊くと、「いいえ、船積前ですよ」と平然としているケース。船積前にすべてキャンセルされたらどうなるのでしょうか? 丸損ですが、海外取引ではよくあるんです、そういう話。だから製造前にコスト分だけはもらっておく。
どうしても掛け売りしなければならないのなら、日本貿易保険(NEXI)を使うという手もありますね。数万~数十万円の小口取引にも対応しています。
また、海外ビジネスでは、「ダメ元でとりあえず値引きをお願いしてみる」というのも必要です。すると、ちょっと譲歩してくれたりするわけですね。
ただ、日本人の交渉下手なところは、「安くして」と言われたら、「わかりました」と言って、ただ値引きして終わりなんですよ。海外の人たちはどうするかというと、台湾人も香港人も、「わかりました、5%引きます。その代わりに……」と、交換条件を出してきます。値引きするから2台じゃなくて3台買ってねと、いたってフェアなんですね。相手の要望を突っぱねるのではなく、ただ呑むのでもなく、交換条件を出す。海外では、そういう交渉ができなくてはいけません。

 

 

物流は日本のフォワーダーが安心
梱包の工夫でコストダウンを


物流については、小口貨物なら郵便局のEMS、ヤマト、DHL、FedEXなどのクーリエサービス。ある程度の物量になったら、いわゆるフォワーダー(貨物利用運送事業者)を使うことになるでしょう。関西系の会社であれば近鉄エクスプレス、南海エクスプレス、阪急阪神エクスプレスなどです。
海上輸送の場合は、大手では日本通運、郵船ロジスティクスなどですが、中堅の業者で信頼できる会社もたくさんあります。
現地でどれだけ輸入税がかかるかわからない場合は、日本でおつきあいのあるフォワーダーに聞いてみてください。HSコード(物品に固有分類番号をつけて、貿易上、それが何であるのか世界各国で共通して理解できるよう取り決めた番号)をフォワーダーに伝えると、「このHSコードだったら無税ですよ」とか「5%かかります」ということがすぐにわかります。
また、一般的に海外のフォワーダーのほうが日本の業者よりも輸送費は安いと言われていますが、言葉の問題や書類の作成、輸送の品質を考えたら、日本の業者に任せたほうが安心ではないでしょうか。
輸送費を下げたければ、梱包をフォワーダー任せにせず、自分たちで梱包業者を手配するだけで数万円のコストダウンになったりします。

 

 

引き渡し条件はEX Works保険の範囲も確認すること


引き渡し条件に関しては、インコタームズをすこし勉強してみてください。初心者はEXW(EX Works:工場渡し条件)で提示したほうがいいと思います。「うちはFOB JAPANでやってます」と言う人がいますが、FOB(Free On Board:本船渡し条件)というのは梱包して港や空港まで運ぶ費用をすべてこちらが負担しなければならない。それだけリスクが高いんです。EXWであれば、費用はすべて相手持ちです。
気をつけなければならないのが、保険の範囲です。CIF(Cost, Insurance and Freight:運賃・保険料込み条件)だと輸送中の保険料はすべてこちら持ちになります。仕向地の港まではこちら、そのあとの陸送~工場設置までは御社で保険をかけておいてくださいというように、必ず範囲を明確にしてシームレスにしておいてください。というのは、ちょうど保険がかかっていない範囲で事故が起こるケースがけっこうあるんですよ。輸送途中でトレーラーから製品が落ちてしまったとかね。
たまにC&F(Cost and Freight:運賃込み渡し条件)で取引している企業がありますが、これは保険がないから怖いですよ。絶対にダメです。相手が「保険はこちらでかけるから」と言っても、基本は避けてください。
最近、DAP(Delivered at Place:仕向地持ち込み渡し条件)、DDP(Delivered Duty Paid:仕向地持ち込み渡し・関税込み条件)もよく使われますが、DAPは通過の際の輸入税はお客さん持ち、DDPはこちら持ちです。これもうっかりDDPにしてはダメなやつですね。
ビジネスですから、少しでも有利な条件で取引をするのは当然のことなのです。向こうもそれが当たり前ですから、国内よりもシビアに契約書や条件の確認をして、「ダメ元」で必ず交渉をしてください。