海外進出ノウハウ

[ 海外出展 ] INSIGHT 07 出展前の準備

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1年かけてしっかり準備をすれば、1回の出展でも成果を出せます

 

通算23年に及ぶ海外ビジネスを経験し、のべ1000社以上の中小企業の国際化支援に携わっている小川陽子さん。多くの中小企業の出展を成功させた経験から導き出した事前準備と心構えの重要性とは?

 

小川 陽子 さん

 

 

中小企業の出展は一発勝負
仮説を立てて戦略的に


海外展示会には、数回続けて出ないと成果が出ないと言われますが、私は「1回でも成果は出せる」派なのです。同じ展示会に繰り返し出るなんて多くの中小企業様には高いハードルではないでしょうか。私が中小企業で働いていた頃、つねに予算はないと言われていましたし、いま支援させていただいている企業のみなさまだって一発勝負の覚悟。「これがあかんかったら、海外あきらめる」といった崖っぷちで挑んでおられます。
予算的にも時間的にも2回目はない前提。だったら、事前準備をしっかりするしかありません。
補助金がついたからといって準備も目的も詰め切ることなく出展してしまうと、パンフレットを配る、名刺交換する、詳細は後でメールする、そしてメールの返事は来ない、で終わってしまいます。
展示会は、じつはそのようなことをしに行く場ではなく、色々な可能性のある来場者との具体的な雑談や商談を通じて、自分たちが海外展開に対して持っている「仮説」の答え合わせに行く場なのです。

 

 

「マーケティング調査」の出展では帰ってきてからが辛くなる


準備には、平均で1年かかるとお伝えしています。初出展でも密度の濃い商談をして複数の引き合いを得るためには、そのくらい手間と時間がかかるのです。
準備を過小評価される企業様は共通して、「1回出てみないとわからないし、マーケティング調査で行きます」とおっしゃいます。でも、帰ってきてから辛いのと事前準備で忙しくて今辛いのとどちらが良いですか? 準備不足の出展では帰国後やることが何もなく本当に辛いのです。お礼メールを送っても返事はこないし、1件も受注できない。何百万円もかかったうえに、社内のモチベーションも下がって、うちは海外ムリなんじゃない?と早々にまわりから結論を出されてしまうことも。
海外展開は文字通り「全社一丸となって」海外で販路拡大するという目標を持っていないと成功しません。輸出をするとなると設計・製造部では海外向けの仕様を考えなければならないし、経理部は海外向けの請求書や外国為替に対応することになります。その準備や心づもりがないまま、社長や営業サイドの情熱だけで出展しても、社内の協力がなければその後が続けられないのです。

 

 

徹底的に「準備」をすれば展示会に出るのが楽しみになる


なかにはどうしても「まずは視察しに行きたい」という方もいらっしゃいます。でも、出展より視察の方が、じつはむずかしいのです。ブース費用をかけて出展している外国企業への逆営業ということになりますので、ふわっとした目的意識で行くと普通は収穫は得られません。
私はやるべき準備を厳しく追求するのでスパルタ~とよく言われますが、それにはちゃんと理由があります。そもそも海外、とくにアジアの競合は、国の支えはないし何から何まで自己責任、誰のことも信用できないというなかで、腹をくくって攻めてくるのです。
そんな競合たちが当然するであろうこと、たとえばターゲットとなる市場や企業、商品や価格の下調べなどはやっておかないと、商談の入り口にすら立てない。
でも、やるべきことを乗り越えたら、あとはとても楽になります。引き合いが来ることを前提にフォロー体制をつくっておけば帰国後すぐ取引が開始できますし、外国企業との取引ノウハウの蓄積は会社の財産になり、他の国に出展する際にも応用できます。
だから、1年しっかり準備した企業様は、「展示会が楽しみになってきました」っておっしゃるんです。「よっしゃ来い!」とわくわくして、すごい団結力で展示会当日を迎えます。でも、準備ができていない企業様は、「何聞かれるのかな」と不安でいっぱい。この時点で勝敗がついているかもしれません。
初出展で結果を出したい企業様は、準備不足による失敗を防ぐ「海外展示会チェックリスト」も参考にしてください。

 

 

金銭的に「無理!」と感じるなら海外はやめておくほうが逆に得策


支援アドバイスでは、私は最初にお金の話をします。「出展準備のための人件費や渡航費、そしてブース設営、外国語版サイトの作成などで、国によりますが約3年で総額1500万円ほどかかる場合があります。しかもその間、売上げがゼロの可能性も。会社として耐えられますか?」と。そこで、「とんでもない! ついでに海外もと思っただけです」とか「1500万円かけて回収がゼロはちょっと……」と感じるようでしたら国内事業にフォーカスし続けたほうが逆に得策です。「1500万円かけて3億円とったるわ」というくらいの気概や長期計画がないと海外展開を軌道に乗せるのはむずかしいのです。

 

 

CHECK POINT 1
海外展示会チェックリスト:予算check

 

予算check

 

 

〇視察は、「初日」が勝負! 一芝居打って情報収集を

出展する前の「視察」では、ただ会場を見て回るだけではなく、ここで自社製品が売れるかどうかを探らねばなりません。そこで一芝居打ち、ネームタグを隠して「お客様」のふりで出展している競合に話しかけてください。聞くべき情報は、以下を参考に。

聞くべき情報

ただし、この作戦は「初日の午前中」が勝負。競合だと面が割れてしまえば、その時点で「NO!」と追い払われます。

 

 

自社の商品の強みを分析して出展国・展示会を決める


覚悟が決まったら、社内で話し合いの場を持ち、仮説でいいので予算を設定してください。出展する展示会も選びます。その際、自社商品の強みは何か、何を訴求したいと思っているのかをきちんと分析して国を決めてください。ここはすごく大事で、自社商品にあったバイヤーが来る展示会でなければ成果が出ません。補助金がつくからという理由先行で出展国を決めてしまうと、結局会いたいバイヤーには会えず時間を使っただけで終わってしまい、遠回りになります。
市場価格に関しては、自社と同ジャンルの製品とその国の名前を入れてインターネット検索すれば相場がわかります。太刀打ちできない値段であれば避けるべきですし、チャンスを求めるのならば「高いかもしれませんが、ここが優れています」という付加価値をどのように提案するかという作戦会議が必要になります。
このように事前にわかってきた課題をすべて片づけていこうと思うと、あっという間に1年が経ってしまいます。でも、焦らず着実に取り組んでください。準備には、「目に見える準備」と「目に見えない準備」があり、「目に見えない準備」のほうが断然大事なのです。
目に見える準備は、英文の自社サイトやカタログ、ブース設営などですね。それらは非常に大事ですが、ターゲット設定、流通確認、各国規制準拠といった見えない準備をしたうえで取り組まないと、何百万円かけても成果は得られません。

 

 

自分たちで「仮説」「検証」し続けることが販路を拓く


最初の「仮説」が半年後、1年後に変わることは問題ありません。なぜ変わったか?の検証をしっかり詰めることが重要です。仮説を立てずに海外展開をはじめることや、仮説一つひとつの検証をあいまいに進めることは、どのタイミングでなぜ変わってしまったのかが誰にもわからない状況に陥る要因となるため注意が必要です。海外展開しているはずなのに、いつまでも階段の踊り場にいるような企業様がまわりにいらっしゃいませんか。5年も10年も海外の展示会に出ているのに成果が出ておらず、やや思考停止な状況から抜け出せない企業様。
たとえ途中で「AではなくBがいいよ」とまわりの人に言われても、自分たちが考え抜いてAという仮説を立てたのであれば、まずそれで出展して検証してみることが大事です。その結果、間違っていたのなら、「○○なので、AではなくBだった」、たとえば「富裕層に絞って展開するべきだと思ったが、富裕層への流通アプローチには実質中間層の何倍も費用が掛かるため、日本での2/3くらいの価格帯での中間層のマスを狙うべく仕様変更を検討した方がよい」などと理由を分析し、社内で共有したうえで、改めてBという仮説を持って出展してみるなどです。
海外展開では、この試行錯誤を何度か続けていくことになります。最初は無限の選択肢がありますが、経験を重ねることで選択肢はそう多くないことに気付き、自分たちが進むべき道がくっきりと見えてくるはずです。

 

 

CHECK POINT 2
海外展示会チェックリスト:ゴール設定check

 

ゴール設定check

 

 

事前に必ず準備したいバイヤー対応の「Q&A」


海外展示会に出て、「なにをもって成功とするか」というゴールもしっかり考えておいてください。何百万円もかけて出展して、「50万円の輸出が年間1 件ありました」では、ちょっと残念ですよね。せめて投資額は回収しなければならないし、取引先も増えていかないと困ります。
そのために必ず準備してほしいのが、バイヤーとの商談を想定した「Q&A」です。ブースで聞かれるであろう質問をお客様の立場になって考え、それにどう答えるかを、あらかじめつくっていってほしいのです。そうすれば動じることがないし、共有することで、スタッフ間で回答がブレるのを防げます。
日本の商品は「高い」と言われることが多いので、回答もいくつか準備しておいて、どれがバイヤーに刺さるのか予想しておきます。基本的には、「高い」と言われたら、競合との比較検討に持ち込み、ロジカルな数値説明で、総合的にはそれほど高くないかも、と納得させる「営業力」は海外でも必要です。
展示会場に来るバイヤーは、買い付け商品がすでに決まっている一方、さらに良いものはないかを探していて、オープンな状態でざくっと見て回っている人も多くいます。そういう人たちとブースで雑談しながら、「この商品、そういう経緯で開発されたのか」「それだったら、試してみようかな」と興味や関心をもたせることが肝心。あらゆる質問に的確に答え、こちらからいろんな提案ができる状態で行けば、数日間出展して1件も引き合いがないということはあり得ないのです。

 

通訳に「営業」を任せてはダメ! 必ず自分たちで対応を


展示会の際、通訳に「営業」まで無意識に丸投げしてしまっている企業様がいます。「通訳さん、もううちの商品のことわかったでしょ? あとはあなたが前に出て説明して、見込みの高そうなお客様のときには我々を呼んでね」と引きの姿勢でブースの奥にいってしまう……、これは絶対にダメです!
通訳さんは通訳の専門家。営業職ではないので、バイヤーのニーズを探りながらの説明や、質問から別の案件の可能性を感じ取るといった機微はわかりません。必ず自分たちで対応してください。
通訳さんも気の毒で、「何度も同じ説明をさせるな」と怒る日本企業が多いため、なるべく意図を汲んでこちらが言っていないことまでバイヤーに説明しようとします。時にはそれがいきすぎて、価格まで先に話してしまうことも。
こうした過剰な“サービス” を防ぎ、適切な意思疎通を図るため、通訳さんを食事に招くなどして、展示会前日までに当日の段取りをレクチャーする時間をとってください。他のスタッフ同様に情報共有し、自己判断せずに自分たちに聞いてバイヤー側に説明してほしい旨を伝えておけば、通訳さんも「ちゃんと準備している企業だな」と安心し、適切にサポートしてくれます。
ちなみに、通訳費用もケチってはダメです。とくに安いからと学生アルバイトを雇うのは絶対やめてください。商談と日常会話では言葉遣いがまったく違いますし、ビジネスマナーも身についていないため、信用を損ねてしまいます。

 

 

全員で目的とゴールをシェアしてモチベーションをキープする


つくれば売れた日本の黄金期を経験している世代の社長様、あるいは海外との垣根のないネット世代の社長様は、これから発展していくアジアなら「出ればなんとかなるのでは」と少々強引なこともあります。しかし、実際には海外での販路開拓にはさまざまな困難が待ち受けていますから、社内でコンセンサスがとれていないと、担当者が追い詰められて潰れてしまうこともあります。
そもそも社内の人たちにとって、海外展開するメリットは少なく、自分には関係ないと言い切る方もいるほど。慣れない海外対応の手間仕事が増えるのに給料は増えない。不満がくすぶるといつしか社内に亀裂も走ります。海外展開1年目は投資回収に精一杯で、給与に反映するほど売上げをあげるには時間がかかります。
この苦しい時期のモチベーションをどのようにキープするかというと、「なぜうちは海外販路開拓をするのか」という目的と、「それを達成したらどうなるのか」というゴールを従業員全員にシェアすることです。「これからは国内市場だけでは売上げを伸ばし続けるのがむずかしい。海外展開のためにこれだけ投資をするし、輸出環境の整備のために各部署でこういう作業が増えるけれど、3 年後には売上げが今の1.2 倍になる見込みがある。会社が再び成長路線になれば全員に還元される」というようなゴールが見えないと、やはり人はがんばれない。社内のモチベーションを上げるのも海外展開するうえでの社長の大切な仕事です。

 

 

CHECK POINT 3
海外展示会チェックリスト:輸出環境check

 

輸出環境check

 

 

初回から注文がとれる社内環境を準備しておく


1回の出展で成果を上げるということは、初回からどんどん注文をとるということです。せっかく引き合いがあったのに、輸出対応や知財の問題で取引が頓挫しないように、社内関連部署の環境を整えてから出展してください。
忙しい展示会場では、「あとでメールします」とつい言ってしまいがちですが要注意。なぜあとで? 目の前にいる今、詰める話ではないだろうか? と自問自答して、逃げずに踏ん張ってヒアリングを続けてみてください。価格交渉はもちろん、送料や決済、輸送方法もその場で説明して注文を確定し、帰国後、輸出手配、あるいは仕様の本格的な詰めの協議というのがベストです。渡航する前から渡航後の想定ができていると効率がいいし、お金をかけて出展したかいがあります。

 

 

現地で売ってくれる人を見つけてどんどん別の国にシフトしていく


さらに言うと、ずっと同じ展示会に出続ける前提ではなく、その展示会では1~2回で結果を出して、あとはその国の現地パートナーに任せ、次は別の国の展示会に出展する、あるいは、同じ国でも別の市場(業界)にいくなど、どんどんシフトしていく、これが予算も人材も限られている中小企業の攻め方です。
展示会は「自分たちの代わりに現地で売ってくれる人を見つけに行く」という位置づけです。自分たちですべてを抱えPRに奔走するのではなく、良いディストリビューターを一刻も早く見つけ、現地営業などは早々にバトンタッチするのです。さらに一緒にローカライゼーションを進めることができれば、自分たち日本人だけの頭で考えるよりも間違いも戻り幅も少なく効率的です。

 

英会話は3つの話題を丸暗記すればOK!


海外展示会では英会話は必須ですが、みなさまハードルを高く上げすぎです。商談で聞かれることは3つだけ。「商品のこと」「会社のこと」「自身のこと」です。それ以外は一切興味を持たれませんから、この3つについてA4一枚程度の原稿にまとめ、プロに翻訳してもらって丸暗記してください。
商談のときは、3つの中から話せばいいので気が楽ですし、それ以外の話になりかけたら、「商品のことなのですが」と自然と話を元に戻せばよいのです。
注意点は、通訳と同様、学生アルバイトやすこし留学経験があるという程度の従業員に翻訳を任せたりしないこと。費用はかかってもビジネスで信頼されるビジネス英語を熟知している翻訳者に依頼してください。