海外進出ノウハウ

[ 海外出展 ] INSIGHT 02 海外展開の心構え

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明確な目的をもって海外へ行動から得た学びは財産です

 

新潟県燕三条地域の工場を開放し、ものづくりの現場を見学・体験しながら購入もできるイベント『燕三条 工場の祭典』をプロデュースするなど、中小企業との関わりも深い山田 遊さん。買う側と売る側、双方の思いがわかるからこそ感じている「本音」とは?

 

山田 遊 さん

 

 

「日本の」から「世界の」になる海外展開の醍醐味


「燕三条 工場の祭典」のプロデュースをきっかけに、地域産業を支えてきたメーカーさんたちと仕事をする機会が増えました。工場の祭典の仲間とはイタリアの「ミラノサローネ国際家具見本市」の際に展示をしたことがあり、今年4月には台湾でも展示とワークショップを行っています。
他のプロジェクトでも積極的に海外展開を行っていますが、海外でモノを売るのは本当にむずかしいし、ビジネスとして見合わない部分も相当あるなと感じています。それでもやめないのは、「日本の」よりも「世界の」になりたいから。僕にとって、仕事に対するワクワク感はすごく大事で、自分のモチベーションを満たすために新しいことを追いかけているんです。台湾や香港、シンガポール、パリなどでの仕事を経て、いまはニューヨークやロンドンをターゲットにしています。
大きな視野で今後のグローバリゼーションを考えても、海外展開は「やらねばならないこと」ではないでしょうか。日本市場は先細りになる状況が見えています。とくに製造業は、どこかに活路を見い出さなければ衰退は免れない。その選択肢のひとつに海外があるのは至極当然だと思います。

 

 

旅気分でも出展目的は明確に


本気で海外展開をするなら、継続的な経営努力が必要です。20年以上、海外展開しているメーカーさんでも、なかなか利益が出ないなかで腰を据えて継続的に投資を行っているのを見ると、生半可な覚悟ではないと感じます。
一方で、ちょっとした旅行気分で海外展示会に出るメーカーさんもいますけど、日本の市場は逆輸入に弱かったりもするので、「展示会はPR の場」と割り切って出展するのなら、旅気分だとしてもそれなりに意味はあります。
ただ、バイヤー目線で考えると、見せたいのか売りたいのかという「出展目的」がはっきりしていないとは感じます。
たとえば、「ミラノサローネ」「ロンドンデザインウィーク」「ICFF(ニューヨーク国際現代家具見本市)」は、新商品(プロトタイプ)の発表を目的としている企業が多く、PR向きです。僕も情報のインプットのためになるべく足を運ぶようにしています。
でも、「メゾン・エ・オブジェ(インテリア見本市)」や「メッセ・フランクフルト」は、ガチで売る場所。バイヤーも本気で買いに来ています。出展の目的を明確にして、それに適した展示会に出ないと「場違い」です。

 

 

買いやすい決め手は「プライス」「発売時期」「ロジスティクス」


メーカー側によくある問題が、プライスリストを準備していないこと。プロトタイプの場合、発売時期が未定というケースも多いですね。これでは買い手側は検討ができません。
発売時期に関しては、「遠すぎる」というのも困るんです。1年後では、もうだめ。バイヤーにとって店頭に出すタイミングは重要ですから、よほどじゃないとそんなに待てませんし、買い付けの優先順位は下がってしまいます。
あと、つまずきやすいのがロジスティクス(物流)ですね。一般に送料、関税、送金手数料などは輸入者が持つことが多いのですが、その際にもっとも負担になるのが日本からの送料です。送料も商品価格に反映させざるを得ないので、「送料がかかりすぎる」という理由で仕入れを諦めるケースは多い。
なるべく送料がかからない梱包を工夫していたり、一定の取引額以上は送料をディスカウントするといった対応があれ
ば、やはり商談はまとまりやすいです。

 

海外展示会のつまずきポイント “あるある”

海外展示会のつまずきポイント “あるある”

 

 

商談は信頼関係を築く場
裏表のない本音の付き合い


僕は、商談ではただ売買の話をするだけではなく、取引先との信頼関係を構築することが重要だと考えています。
そのために、裏表のないコミュニケーションが取れるかどうかは重要ですね。ビジネスには生活がかかっているのでそこはお互い必死ですが、仕事関係抜きでも友達になれるくらいの相手じゃないと、長い付き合いはできないじゃないですか。
とくにバイヤーはかぎられた棚のスペースを考えながらモノを選ばなければならないので、つくり手の姿勢や人柄の面からも「これを売ってあげたい」「広めたい」と思えるものを優先的に選んで“えこひいき” するものなんです。
メーカー側も、良いバイヤーやディストリビューターを選ぶことが大事です。彼らが持っている販路も重要ですが、やはり自分たちの思いを大切にしてくれるところと付き合ったほうがいい。モノ=カネで、「これ儲かるの?」みたいな話しかしないバイヤーには、僕はすぐ「帰れ!」って言いたくなります(笑)。そんな相手と取引したって、モノの価値が下がるだけです。
いま、世界のビジネスシーンでは、よりフランクに本音を語り、フレンドリーな関係を築くことが重視されています。マーク・ザッカーバーグがいつもTシャツを着ているように、スーツ同士で向かい合うような堅苦しい商談は減ってくるのではないでしょうか。そして、どちらかがへりくだって取引するということ自体がもう古い。ともに歩み、成長するという視点が当たり前になってきています。

 

 

海外のバイヤーはストレート
躊躇せずに意見を聞こう


海外ではコミュニケーションが不安という人が多いのですが、僕はむしろ日本人バイヤーよりも海外のバイヤーのほうが付き合いやすいと思います。
日本人バイヤー“あるある” ですが、「検討します」という答えはだいたい「NO」ですよね? あれは日本人らしいな、と僕は思いますが、海外のバイヤーの場合、まずYESかNOかを曖昧にしませんし、NOであっても「ここが合わないから」と率直に教えてくれることが多いんです。買えない理由がわかれば、「どこを直せば売れるのか?」と考えるきっかけになりますし、値段や色、サイズ展開なども、相談すれば気軽にアドバイスをくれます。
さらにすごいなと思うのは、海外のバイヤーって、info用の代表アドレスにメールを送っても、けっこう返信してくれるんですよ。会ったことがなくても意見を求められれば返すという姿勢が、すごくフェアだと思います。商品をつくる側もめげずにやっていけるじゃないですか。
僕もそうですが、バイヤーは基本的に、情報や商品を売り込んでもらえることは嬉しいんです。だから、躊躇せずに連絡をとってみてください。ただ、その人がどういう仕事をしているのか、どういう商品を扱っているのかというようなことをきちんと調べずに送るメールや一斉送信メールは、迷惑メールに追加されるだけ。そこをさぼると、やっぱり信頼関係は築けないんですよね。

 

 

取り扱いアイテムが多いほうがバイヤーにとってはありがたい


バイヤーは効率を重視します。そのため、アイテムが1つしかないブースよりも、複数のアイテムをブランド化して打ち出しているブースのほうが圧倒的に魅力的です。
なぜなら、1店舗つくるのに300アイテムが必要な場合、1アイテムずつ300社と取引するより、30社に絞り込んで10アイテムずつ取引したほうが手間もコストも少なく、利益が出やすいからです。大きな企業では、効率化のために新規口座の開設そのものが厳しく制限されている場合さえあります。
ですから、どれほど良い商品を見つけても、1アイテムしかないとなるとバイヤーは躊躇します。それよりも1口座で100アイテム持っている人たちと取引したほうが現実的だし、複数の商品でロットがまとめやすく、同一アイテムをたくさん抱えなくてよいというメリットもあって助かるのです。

 

GOOD DESIGN STORE TOKYO by NOHARA
グッドデザイン賞受賞商品の専門店『GOOD DESIGN STORE TOKYO by NOHARA』の売場面積は約50坪。
約300アイテムを取り扱い、約200社から仕入れをしています。「これは効率が悪いほう。商品の特性上やむを得ないのですが、本来は取引先を厳選して効率的に魅力的な棚をつくっていくことで利益を上げていきます」(山田さん)

 

 

商品コンセプトを販売の現場まできちんと伝達するには


つくり手の思いを売場のお客さんにまで伝えるのはむずかしいもの。間にディストリビューターや販売員などたくさんの人たちが入るので、伝言ゲームでブレてしまわないように、コンセプトを伝えるカタログやパンフレットなどのツールが必要です。
ところが、これから海外に売りに行くのに「カタログ? 日本語版しかありません」という企業が多くて、思わず頭を抱えてしまうことがあります。英語版をつくるのは当然で、理想を言えば「英・仏・中・韓」の4ヵ国語表記が望ましいです。
コンセプトは、つくり手にしか発信できないもの。すぐには商品が売れなくても、思いを伝えることで興味を持つ人が現れます。自分たちのものづくりのよさや、背景となるストーリーが伝わるツールづくりにもっとこだわってください。

 

 

まず、「予算を立てろ!」海外はそれからの話だ


ここまでお話ししてきましたが、僕は正直、多くの中小企業は海外に出るよりも先に、国内の経営を見直したほうがいいのではないかと危惧しています。
これまで全国各地で仕事をしてきて驚愕したのは、自分たちの経営状況や現在のコンディションが把握できていない企業が多すぎるということです。
まず、「予算」という概念がありません。したがって売上目標も販売計画もないというのが、ものづくり系“あるある”なんです。
とくに地方では、けっこう有名な老舗企業でも予算を立ててなかったりします。それなのに「赤字なので海外で販路開拓を」と言われても、「無理!」と言うしかありません。経営のイロハもできていないのに、海外で利益を出すのは不可能です。もうほんとに、中小機構さんに『楽して儲ける! 予算を立てようぜハンドブック』みたいな冊子をつくって伝えてほしいくらいですよ。
まず、「赤字にならない数字はいくらか?」「損益分岐点はどこか?」「損益分岐点にたどり着くためには、毎月いくら売らなきゃいけないのか?」「そのためには毎日どのぐらい売らなきゃいけないのか?」をきちんと算出してください。そして導き出した日々の売上目標をクリアしていけば、必ず黒字に転換します。
これらは経営の基本中の基本で、本を読めば学べることです。まずはそこから見直し、足場を固めてから海外を目指すべきだと思います。
それから、これを言ってしまっては身も蓋もないかもしれませんが、本を読んで、それで海外展開がうまくいくんだったら、誰でもできるよって話ですよね? なにごとも、まずは経験してみるしかないんです。実際に行動してそこで得た学びは、本に書いてある知識よりも、よっぽど得がたい財産になるはずです。